【実測値あり】Rapid triggerキーボード30種類の性能を比較
ラピッドトリガー機能に対応しているゲーミングキーボードの性能を比較してみました。
ラピッドトリガー対応キーボードの性能を比較
Rapid Triggerキーボードの性能を評価するにあたって、「入力遅延」と「ボトムデッドゾーン」を測定しました。
入力遅延
入力遅延とは、キーボードの操作を行ってからディスプレイに反映されるまでに生じるレイテンシーのことを指します。
どれくらいの入力遅延があるか知りたい場合、ポーリングレートがユーザーにとって分かりやすい指標になりますが、ポーリングレートが高いからといって必ずしもレイテンシーが低いとは限りません。搭載しているチップの種類や、実際にどのような制御が行われているかなど、ユーザーに明かされることがほとんどない要素によって大部分が決定されます。また、ユーザーの使用環境によっても多少変動します。
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ボトムデッドゾーン
ボトムデッドゾーンとは、キーストロークの最も底にある、キーがまったく反応しない区間のことを指します。
たとえばRapid Trigger 0.1mmを謳う機種に1mmのボトムデッドゾーンが存在する場合、Rapid Triggerを0.1mmに設定していたとしても、キーを最も深く押した状態から1mm戻さなければ入力がONからOFFに切り替わりません。Valorantでキーを離してストッピングするとき、一番底まで押し込んだ移動キー(WASD)を離してからキャラクターが止まるまでの速度は、ボトムデッドゾーンの短さによって変動します。
デッドゾーンの有無をメーカーが明かすことは少ないです。また、デッドゾーン0を謳う機種でも実際には存在することもあります。
※デッドゾーンはあくまで評価項目の一つで、そのキーボードの性能を決定付けるものではありません。
※機種によっては手動キャリブレーションの結果次第で最大0.015mmほどの誤差が生じることを確認しています。
Name | Bottom Deadzone | Bottom Deadzone(Max) | 検知方式 | キースイッチ | 販売サイト | レビュー |
---|---|---|---|---|---|---|
Wooting 80 HE | 0.229 | 0.263 | 磁気 | Lekker Switch v2 | Wooting | |
HM66 Aegis | 0.020 | 0.021 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade | Rabbit Ark | YouTube |
IQUNIX EZ60 | 0.051 0.1 | 0.053 0.13 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade Star Trail | ふもっふ | |
HM66 | 0.018 | 0.023 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade | Rabbit | YouTube |
ZIRNEX Herald68-M | 0.038 | 0.044 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade Gateron Dual-Rail White | KIBU | |
Keychron Q1 HE | 0.514 | 0.531 | 磁気 | YouTube | ||
Varmilo Muse65 | 0.098 0.296 | 0.108 0.313 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade Gateron Dual-Rail White | Amazon ふもっふ | DPQP YouTube |
Arbiter Studio Polar 65 Pro | 0.287 | 0.293 | 磁気 | ふもっふ | YouTube | |
Arbiter Studio Polar 75 Pro | 0.287 | 0.293 | 磁気 | ふもっふ | YouTube | |
VXE ATK RS7 Pro | 0.057 | 0.063 | 磁気 | Rabbit Ark | ||
Endgame Gear KB65HE | 0.39 0.942 | 0.403 0.967 | 磁気 | Gateron KS-37B | Amazon | YouTube |
Turtle Beach Vulcan II TKL Pro | 0.099 | 0.121 | 磁気 | Amazon | YouTube | |
MelGeek MADE68 | 0.017 0.322 | 0.022 0.343 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade Kailh Green Hornet | Rabbit Ark Amazon MelGeek | DPQP YouTube |
MelGeek Cyber01 | 0.016 0.33 | 0.02 0.338 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade Gateron KS-20 White | Rabbit MelGeek | YouTube |
Sikakeyb Castle CK75 | 0.019 | 0.023 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade | AliExpress MechKeys | YouTube |
Backspace Oasis 75 | 0.041 | 0.048 | 磁気 | Gateron Black Jade | KIBU | DPQP YouTube |
ELECOM GAMING VK720A | 0.511 | 0.555 | 磁気 | RAESHA Silent | ELECOM | DPQP YouTube |
Arbiter Studio Polar 65 Neo Tokyo | 0.485 | 0.521 | 磁気 | Gateron KS-37B | ふもっふ | YouTube |
Wooting 60 HE+ | 0.236 | 0.25 | 磁気 | Lekker Switch | Wooting | |
Redragon FIDD | 0.36 | 0.678 | 磁気 | AliExpress | ||
IROK ND75 | 0.489 | 0.519 | 磁気 | Amazon MechKeys | ||
HM Loong66 PCB Kit (HM Xu PCB Kit) | 0.018 | 0.028 | 磁気 | Gateron KS-20T Jade | Amazon | YouTube |
VXE ATK75 (L版) | 0.45 | 0.471 | 磁気 | RAESHA V2 | Rabbit | YouTube |
Keydous NJ80-CP HE | 0.503 | 0.531 | 磁気 | Kailh Magnetic | Keydous | YouTube |
WAIZOWL Lightning60 | 0.596 | 0.637 | 磁気 | RAESHA White | Ark | DPQP YouTube |
VXE ATK68 (L版) | 0.31 | 0.368 | 磁気 | RAESHA V2 | Rabbit | DPQP |
VXE ATK75 (G版) | 0.422 | 0.439 | 磁気 | Gateron 2.0 | Rabbit | DPQP |
LAMZU Atlantis PRO KEYBOARD | 0.86 | 0.879 | 磁気 | RAESHA White | HID-Labs | DPQP YouTube |
Varmilo Victory | 0.188 | 0.202 | 磁気 | Varmilo x Gateron Magnetic Switch | ふもっふ | DPQP YouTube |
Meletrix Boog75 | 0.462 | 0.47 | 磁気 | GATERON KS-37B | Amazon 遊舎工房 | DPQP |
Wooting 60 HE (ARM) | 0.249 | 0.286 | 磁気 | Lekker Switch | 終売 | |
Keydous NJ98-CP | 0.583 | 0.591 | 磁気 | Kailh Magnetic | Keydous | YouTube |
DrunkDeer G60 | 0.604 | 0.626 | 磁気 | RAESHA White | Amazon DrunkDeer | |
VXE ATK68 (G版) | 0.422 | 0.439 | 磁気 | Gateron 2.0 | Amazon AliExpress | DPQP YouTube |
DrunkDeer G65 | 0.587 | 0.61 | 磁気 | RAESHA White | Amazon DrunkDeer | DPQP YouTube |
SteelSeries Apex Pro (2023) TKL US | 0.347 | 0.39 | 磁気 | OmniPoint 2.0 | Amazon | YouTube |
Razer Huntsman V3 Pro Tenkeyless | 0.349 | 0.37 | 光学 | Razer Analog Optical Switch | Amazon Razer GRAPHT | DPQP YouTube |
Akko MOD007PC 7th Anniversary | 0.356 | 0.399 | 磁気 | MechKeys | ||
ELECOM GAMING VK600A | 0.464 | 0.601 | 磁気 | RAESHA White | Amazon | |
Yuki Aim Polar 65 Katana Edition | 0.955 | 1.027 | 磁気 | ふもっふ | ||
Arbiter Studio Polar 65 | 1.394 | 1.416 | 磁気 | Fuji | Arbiter Studio ふもっふ | YouTube |
ZENAIM Keyboard | 0.238 | 0.245 | 磁気 | ZENAIM KEY SWITCH | Amazon | DPQP YouTube |
Corsair K70 MAX | 0.398 | 0.413 | 磁気 | Corsair MGX | Amazon | DPQP YouTube |
DrunkDeer A75 | 0.851 | 0.883 | 磁気 | RAESHA White | Amazon DrunkDeer | DPQP YouTube |
REALFORCE GX1 (30g) | 1.177 | 1.221 | 静電容量 | 東プレ 静電容量無接点スイッチ | Amazon | DPQP YouTube |
REALFORCE GX1 (45g) | 1.192 | 1.356 | 静電容量 | 東プレ 静電容量無接点スイッチ | Amazon | DPQP YouTube |
動画で見る
ラピッドトリガー対応キーボード30種類ほどのボトムデッドゾーンの測定値を動画にまとめました。
Q&A よくある質問
- Q. ボトムデッドゾーンって何?
-
Rapid triggerキーボードは、磁気式や光学式などの方式の違いはあれど、どれも信号のやり取りによって入力を検知する仕組みになっています。
Rapid triggerキーボードのスペック表を見てみると、「0.1mm」などの数値が記載されています。性能がどれほどなのかを示すためですね。
大体のキースイッチは約4mmくらい押せるようになっています。
そのうち最初と最後の0.1~1mmくらいは信号が弱いので、スペック通りに動かず、キーがまったく反応しない微妙な隙間ができてしまうことがあります。これをデッドゾーンと呼んでいます。
- トップデッドゾーン:最初のほう。ストロークの頂点にあるデッドゾーン。キーを押し始めたとき、入力がオンになる速度に影響する。
- ボトムデッドゾーン:最後のほう。ストロークの底にあるデッドゾーン。キーを一番深くまで押した状態から戻したとき、入力オフになる速度に影響する。
このページで公開している表に載っている通り、ほとんどのRapid triggerキーボードにはデッドゾーンがあります。その長さは機種によって異なります。
驚異的なのが、Rapid Trigger 0.1mmを謳っている機種でも、1mmを超えるボトムデッドゾーンが存在し、キーを一番底から1mm以上戻さないと入力がONからOFFに切り替わらないことがあります。
Valorantのキャラクター移動時に、WASDキーを底まで押していることを前提に話すと、
- ボトムデッドゾーンが0なら、キーを離したらすぐに入力が終わり、ストッピングが掛かる
- ボトムデッドゾーンが1mmあると、キーを離してから1mm戻った時点で入力が終わり、ようやくストッピングが掛かり始める
- ちなみに… 少し前まで主流だったCherry MX Silver (銀軸)は、キーを底打ちから約2mm戻すとようやく入力が終わり、ストッピングが掛かり始める
といった具合です。「Rapid triggerキーボードを使ってValorantのストッピングを高速化したい!」と考えている場合は、デッドゾーンの短さを重視してみてもいいと思います。
とはいえ、人それぞれ自分に合った設定があります。また、人によっては1mm未満の差を体感できないといったこともあるかもしれません。デッドゾーン短いのが正義とは言い切れません。
ただ、デッドゾーンが短いということは、それだけ設定の幅が増えることと同義なので、Rapid triggerキーボードを選ぶうえである程度は考慮しておきたい部分ではあります。
- Q. ボトムデッドゾーンの測定方法は?
-
①マイクロメーターでキーを一番底まで押し込んでONに
②マイクロメーターのゼロリセット機能で表示を0に
③マイクロメーターのツマミでゆっくりとキーを戻していき、入力がOFFに切り替わった瞬間の値を記録
上記①~③をランダムな10キーで行い、最大値と最小値をリストに記載測定機材は、Mitsutoyoのマイクロメーターを自作のスタンドに固定したものです。マイクロメーターは25-50mmの範囲を0.001mm刻みでアナログ測定できるスペックを有しています。0.001mm刻みで計測できるとはいっても、キーボードの筐体の歪みやゴム脚の沈み込みなど、様々な要因によって多少の誤差は生じるかと思いますので、測定データはあくまで参考値として扱ってください。
さいごに
「入力遅延」と「ボトムデッドゾーン」という2つの要素でラピッドトリガー対応キーボードの性能を比較してみました。
今回は性能面に焦点を当ててみましたが、キーボードを選ぶうえで重視するポイントは人それぞれ異なると思います。以下の記事では、異なる条件ごとにおすすめできるラピッドトリガー対応ゲーミングキーボードを紹介しています。
いつも拝見しております。ちょうどデッドゾーンについて気になっていたところなので、今回の検証大変ありがたいです。当方、デッドゾーンについてあまり明るくなく恐縮なのですが、デッドゾーンは入力した深さによって変わることはないのでしょうか。検証では環境を統一するために底打ち状態から計測されていますが、最大まで押下しない状態からキーを戻した場合に入力が解除されるまでの長さも知りたいです(例えば、最大ストロークが4mmのキーボードで、1mmまで入力した状態からキーボードを戻した場合)。表現が分かりにくくて申し訳ありません。教えていただけると幸いです。
あくまでデッドゾーンというのは、”ストロークの頂点と底にある”キーが反応しない区間のことを指します。ストロークの途中からキーを移動させた場合、基本的には設定値通りに動作します。(Rapid trigger 0.1mmの設定であれば、約0.1mm移動するたびに入力がON/OFFと切り替わりますし、0.02mmの設定であれば約0.02mm移動するたびON/OFFとなります)ここに機種間での大きな差はありませんでした。
Wraith W75の検証もお願いしたいですm(__)m