ELECOM VK720A レビュー
ELECOM GAMINGのゲーミングキーボード ELECOM VK720A をレビューします。
レビュー用サンプル提供:エレコム
この製品について
ELECOM GAMINGより新たなRapid triggerキーボード VK720A が登場しました。
打鍵感
最大の特徴は、静音キースイッチを搭載していることです。
既存のスイッチと比べて音が静かで、まるで静音赤軸、あるいはタクタイル感を無くしたREALFORCEのような感じです。おそらく磁気キーボードの静音スイッチは初?
キースイッチはRAESHAのものでした。分解して中身を見てみると、ステムの先端に薄いシリコンのようなフォームが貼られていました。これで底打ちしたときの音を抑えているようです。
このキーボード、筐体はとても薄いです。トップフレームがアルミニウム、底面はプラスチックでできています。正直言って、あまり吸音構造に力を入れているとは思えないです。
試しに、通常のスイッチ RAESHA V1 に付け替えてみると、音が大きくなりました。
キーは押し始めがとても軽いです。体感では他のRAESHAスイッチと同じくらいでした。Wootingの初期装備など少し重ためのスイッチを使っている場合、慣れるまで誤入力しやすいかもしれません。
キーキャップ
キーキャップはELECOM GAMINGではお馴染みの、キートップが特殊な形をしているものです。親指周辺のキーには左側に、他の指で押すキーには上側に、指先に沿うような出っ張りがあります。
あくまで一般的なキーキャップの形がベースとなっているからか、久々に使っても邪魔には感じませんでした。よくできていると思います。ただ、個人的にはいつもと同じようなものを使いたい。
表面はさらっとした質感で、長時間使ってもベタつきません。使用感はとても良かったです。
Rapid trigger
このキーボードの設定はとても単純です。「キーON感度」と「キーOFF感度」の欄に0.1~3.8mmの範囲で数値を入力すると、キーをどれくらい押せばON/OFFされるかが決まります。
これはWooting 60 HEをはじめとする他のRapid triggerキーボードとは少し違った仕様です。
他の多くの機種では、
最初にキーがONになる深さ(アクチュエーションポイント)と、
その後キーを完全に離すまでON/OFFされる深さ(Rapid trigger)を決められる
このキーボードでは、
キーがONになる深さ(キーON感度)と、
キーがOFFになる深さ(キーOFF感度)を決められる
全ての設定値を0.1mmにした場合はどちらも同じように動作しますが、アクチュエーションポイントだけを長めに設定したときの動作はまったく違ったものになります。
多くの機種ではアクチュエーションポイント1mmとRapid trigger 0.1mmに設定すると、最初の1回だけは1mm押すとONに、その後、完全にキーを離すまで0.1mm動かすたびにON/OFFされます。
しかし、この機種でキーON感度を1mmに設定すると、一度キーを1mm押してONになった後、完全にキーを離す前でも、毎回1mm押すまではONにならない状態になってしまいます。
アクチュエーションポイントとRapid Triggerの両方を短めに設定する場合は問題無いです。しかし、設定にこだわりがあったり、誤入力を防ぐ目的で、アクチュエーションポイントだけを長めに設定したいと思っている場合、この機種は選ぶべきではないと思います。
デッドゾーン
このキーボードには誤作動防止という機能が搭載されています。これは、キーの押し始めと終わりに入力のON/OFFを認識しない区間(デッドゾーン)を追加することで、動作を安定させるモードです。
キーを一番深く押した状態から何mm離すと入力がオフになるか測定してみたところ、誤作動防止OFFでは0.24mm、誤作動防止ONでは0.51mmでした。この結果を見ると、VK720Aは平均的な性能を備えていると評価できます。
誤作動防止OFFの0.24mmという結果は上位に入りますが、キーの多重入力が頻繁に起きたり、わずかなキーの揺れでオンオフ判定が行われたりと、文章入力がまともにできなくなります。こう見えてFPSの操作には全く支障が出ないので、ゲームと普段使いとでプロファイルを入れ替えるなどの工夫次第で使うことはできます。しかし、毎回プロファイルの変更を強いられるのは正直とても不便でした。
誤作動防止をONにすると安定して動作しますし、この0.51mmという結果も決して悪くないです。トップ層と比べると数値上は見劣りしますが、この程度のデッドゾーンであればインゲーム上で違いを体感できる場面は少なく、十分にRapid Triggerの恩恵を得られることを証明する結果といえます。
基本仕様
人気の75%レイアウトを採用しつつ、キー配列は日本語配列と英語配列、色はブラックとホワイトから選択可能です。
こだわりが感じられる右下辺りのキー配列、右上にはボリュームローラーが搭載されていたりと、スペースが許す限りキーが詰め込まれているような印象を受けます。
背面の左側にはケーブル差し込み口が、右側にはUSBポートが搭載されています。
写真や動画を撮ったあとにSDカードリーダーをPCに繋ぐことが多いので、手元にすぐ使えるUSBポートがあるのは便利だと思いました。
ちなみに、高ポーリングレートのマウスも動作しました。ちゃんと4000hz出てくれるし、ジッターも多少増えるくらいです。レイテンシーガチ勢じゃない限りは普通に使えます。
実質、分割スペース?
スペースバー周りのキーを「スペースバーのみ」か「無変換+スペースバー」から選べます。日本語配列で長いスペースバー、もしくは英語配列で無変換キーがあるのはとても珍しいです。
この追加のキーは親指で押しやすい位置にあり、ソフトウェアからキー割り当てを変更できるので、実質、分割スペースのように使えます。FPSだとWASDやShiftで親指以外が埋まってしまうので、親指で押しやすいキーが増えるのはとてもありがたいことです。
また、カスタマイズの方法についても、本来はキーボード本体を分解してスタビライザーを取り付け直して…といった工程が必要になりますが、ネジ4本回すだけなのも手軽で良かったです。
結論
ELECOM VK720Aは静音性を求める人に最適なRapid Triggerキーボードです。静音重視のキーボードは重たいものが多いですが、このキーボードは軽いので、デスク上で頻繁に位置を動かす人にも向いています。
スペースバー周辺をカスタマイズできるのも特徴で、スペースバーが長い日本語配列、無変換キーがある英語配列のような、本来はあまりないキー配列も実現できるのは長所だと思いました。普段、英語配列を使っている身としては、実質、分割スペースのように使えるので気に入っています。
平均的な性能を備えており、デッドゾーンはインゲームで体感しづらい程度。Rapid Triggerの恩恵を十分に得られます。ただし、設定項目の都合上、アクチュエーションポイントを長めに設定したい場合、この機種は避けたほうがいいです。
最も衝撃的だったのはスイッチの静かさと、スペースバー周辺のカスタマイズ機構で、この2つがVK720Aを選ぶ主な理由になるかと思います。
ELECOM GAMINGのゲーミングキーボード ELECOM VK720A のレビューでした。
誤差防止ON/OFFについて
グラフと文章を見て文章側のONとOFFが反対だと思います。