VXE ATK68 (G版 & L版) レビュー

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VXE ATK68 (G版 & L版) レビュー

この記事ではVXEのゲーミングキーボード VXE ATK68 (G版 & L版) をレビューします。

レビュー用サンプル提供: Rabbit

VXE (VGN)ATK68
販売価格:18,800円

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この製品について

コストパフォーマンスが高いと言われている製品は数多く存在しますが、安いだけでそう評されることも増えてきたように思います。低価格な商品を購入するとき、全てに満足できることはごく稀で、ほとんどの場合はあらゆる部分を妥協する必要が出てきます。

VGNは中国国内で非常に人気のあるメーカーですが、そのどれもが非常に低価格ながら、クオリティに対して妥協しない姿勢が高く評価されています。日本国内でもゲーミングマウス Dragonfly F1シリーズ (通称トンボマウス)の存在はそれなりに知られているのではないでしょうか。

そんなVGNはサブブランドのVXEを立ち上げ、磁気式キースイッチを搭載したキーボード ATK68 を発売しました。既存の磁気式キースイッチの軸揺れが改善されたGateron 2.0スイッチを搭載し、最短0.1ミリのRapid Triggerやアクチュエーションポイント調整に対応しています。

日本正規代理店Rabbitでの販売価格は¥18,800(税込)です。正規代理店からの購入では、日本国内から迅速に発送され、日本語でサポートが受けられます。銀行振込・ショッピングクレジット・クレジットカード・コンビニ支払いが利用できます。

海外ECサイト AliExpressではやや安価で入手することが可能ですが、決済手段が限られ、注文確定から到着までがやや遅いです。サポートが受けられない可能性もあるので注意が必要です。

バリエーション

VXE ATK68はG版とL版の2種類を展開しています

G版 L版
キースイッチ Gateron 2.0 RAESHA V2
押下圧 30g 28g
特長 柔らかいキータッチ
コトコトと低い打鍵音
キーの揺れが軽減
スムーズな打鍵感
やや高めの打鍵音
性能 PCB・チップの改良により、
入力切れや熱、LED点灯の問題が解消

G版は GATERON 2.0スイッチを搭載しています。ほとんどのRapid Triggerキーボードと比べ、柔らかい感触のキータッチ、コトコトという低めで上品な打鍵音が楽しめます。

L版は RAESHA V2スイッチを搭載したことで、わずかにキーの揺れが軽減されています。PCB・チップの改良を行い、入力切れやLED点灯の問題が解消されています。G版と比べると打鍵がスムーズで、打鍵音は高めになっています。

基本仕様

VXE ATK68は英語配列の65%キーボードです。コンパクトながら矢印キーと4つのファンクションキーを備えているため、ゲームプレイと普段使いの両方で使いやすい、バランスの取れたキー配列です。

本体はずっしりとしています。トップフレームにはアルミニウムフレームが使用されています。角は面取り加工がされていて、四隅は丸められています。

こうやって写真や動画に収めていると、触った部分に跡が残りやすいのが気になりますが、普通に使う分には見えないので気にならないと思います。

ボトムシェルはプラスチック製です。タイピング角度は調整できません。

後ろからつつくと中身が相当詰まっていることが分かります。打鍵感や打鍵音を向上させるため、キーボード内部に2層のシリコンフォームが内蔵されているからです。

USB Type-Cケーブルは背面の左側に差し込みます。一般的な配置なので、コイルケーブルなどで見た目をカスタマイズしやすいです。

キーキャップ

OEM ProfileのPBTキーキャップが標準搭載されています。厚さは約1.3ミリと薄いです。印字はLEDライティングを透過します。

表面はさらっとした手触りで、他のキーに指を運ぶときに引っ掛かりません。汗や皮脂による汚れにも強く、長時間使用していてもベタつきません。

Cherry MX互換なので、あらゆるキーキャップに交換可能です。

キースイッチ

キースイッチはG版にGateron 2.0、L版にはRAESHA V2が搭載されています。

G版のキースイッチは Gateron 2.0。これは初期のGateron磁気キースイッチの改善版という位置づけで、デュアルレール構造によりステムの揺れを抑えられています。

初期のGateron磁気キースイッチを採用するWooting 60 HEやArbiter Studio Polar 65などはキーがぐらぐらと揺れ、人によっては気になる部分となっていました。

それに対し、Gateron 2.0スイッチを搭載したVXE ATK68のキーはほとんど揺れません。ボックスステム仕様のRAESHA磁気スイッチを搭載するDrunkDeer A75やELECOM VK600Aと比べても、ほぼ同等か、ATK68の方が揺れないかといったところ。この改善は大きいです。

キースイッチ名称 特性 押下圧 作動範囲 ストローク
Gateron 2.0 Linear 30±10gf 0.1~4.0mm (0.1mm単位) 4.1±0.2mm
RAESHA V2 Linear 28±10gf 0.1~4.0mm (0.1mm単位) 4.0±0.3mm

押下圧は30±10gfとのことですが、この数値よりは少し重たく感じます。体感としてはLekker Switchより若干軽いくらい。

一方で、L版にはRAESHA V2が搭載されています。キーの押し始めがGateron 2.0よりも明らかに軽いです。こちらもボックスステム機構によって軸揺れがG版と同程度抑えられています。

打鍵感

キーボードの基本的な構造はどちらのバージョンも同じですが、スイッチの違いで打鍵感にかなりの差が出ています。

G版とL版のどちらも筐体や内部構造がしっかりとしているため、反響音は充分に抑えられています。スイッチやスタビライザーが不快な音を発することもありません。

G版のキータッチはしっとりと柔らかく、コトコトと低めの打鍵音が鳴ります。

不快な音が鳴りがちなSpaceバーもコトコト。Backspaceが少しカシャカシャと鳴ります。このあたりは潤滑剤の量なども関係しそうなので個体差の範囲だと言えそうです。

以前、打鍵感に優れたRapid Triggerキーボードとして紹介したArbiter Studio Polar 65 / YukiAim Polar 65にしっかりとルブをしたらこんな感じになると思います。

キースイッチを分解してみると、潤滑剤が大量に塗られていることが確認できました。こういう製造時に潤滑油が塗布されているものをファクトリールブと言いますが、本来は薄く塗られているものがほとんどで、ここまで多くの量が塗られているものは珍しいです。

この潤滑剤、粘性がとても低いのか、キースイッチに留まらずに基板に垂れてしまっている部分があります。構造上、使っていくうちにどんどん垂れてくるかもしれないです。壊れるまではいかないと思いますが、打鍵感は徐々に変化していきそうです。

ちなみに、箱から出した直後はキーの戻りが若干遅いように感じました。ルブが大量に塗られている影響です。キーを押すたびに馴染んでいって気にならなくなりました。もう変化が始まっているのかも。

「打鍵感や打鍵音にこだわりたいけどカスタマイズは面倒」という人に強くお勧めできます。最も時間が掛かるルブ作業を必要としないのは良いところです。タイピングしていて心地よく、音も静かで上品なので、文字を打っているだけで楽しいです。

L版は軽快なキータッチとスムーズな打鍵感を特長としています。

G版とは正反対の少し高い打鍵音が鳴ります。そこまで不快な音ではありません。

しっかりと底打ち音が鳴る磁気式キーボードは少ないので、こういう音が好みな人はタイピングしていて心地いいと思います。

それなりに音が大きいので、静音性を求める人はG版のほうが合うと思います。ガスケットマウント構造によって格段に静音性が増している ATK75 もチェックしてみてください。

アクチュエーションポイント

アクチュエーションポイントは0.1~4.0mmの範囲を0.1mm単位で調整できます。

最小値である0.1mmに設定してみたところ、キーに少し触れるだけで反応しました。最大値の4.0mmに設定するとキーを底打ちした時点でようやく反応します。設定した数値通りに動いているように思います。

Rapid Trigger

Rapid Triggerも0.1~4.0mmの範囲を0.1mm単位で調整できます。

Rapid Triggerとは、キーをどこまで押し込んでいても、設定した数値(mm)だけキーを戻すと入力がオフになり、再び設定した数値(mm)だけキーを押すと入力がオンになる機能です。

例えばRapid Triggerを0.1mmに設定すると、キーを押した深さに関わらず、0.1mmでもキーが戻ると入力がオフになり、再び0.1mmでも押されると入力がオンになります。

キーの押し込み状況にかかわらず、離した瞬間にオフ、押した瞬間にオンになるので、VALORANTでキーから指を離してストッピングするのが速くなります。

一般的なキースイッチでは、キーのオンオフが判定される深さが決まっています。例えばCherry MX 銀軸なら、キーを3.4mmも押し込めるのに、オンオフを判定している深さは1.2mmの部分にあります。

キーを押すときに1.2mmの地点を通過した時点でオンになって、キーを戻すときも1.2mmの地点を通過した時点でオフになります。つまり、キーを一番底まで押した状態から入力がオフになるまで2.2mmもの距離を戻さないといけません。VXE ATK68なら、これを最短0.1mmでオフにできます。

各社が公表している数値が正確なのかはさておき、VALORANTの射撃場でWASDを小刻みに押したり離したりするテストを行うと、ごくわずかに違いを体感できます。

これまで検証した中では ZENAIM KEYBOARD と Razer Huntsman V3 Pro がツートップでしたが、次点でVXE ATK68やWooting 60 HE、ELECOM VK600A辺りはほとんど差が無いように感じます。ここまでで名前が挙がっていないもの、例えばDrunkDeer A75やArbiter Studio Polar 65などはこれよりも劣ります。

実際にVALORANTでキャラクターを動かす際には、このテストのようにキーを小刻みに連打することはなく、キーを底打ちした状態から離すという素早いキー操作が中心になります。このテストでは判別できる細かな精度の差も、インゲームではなかなか体感しづらいので、よほど突き詰めたい人でない限りはVXE ATK68くらいの精度があれば充分です。

これまで検証してきた14種類のRapid Triggerキーボードの中でも、VXE ATK68のRapid Triggerの精度は上位です。日本国内での知名度の低さや競合製品との価格差などを考えると信じがたいかもしれませんが、検証した結果、とても優れていることが分かりました。

各種機能

アクチュエーションポイント調整やRapid Trigger以外にも、DKS (Dynamic Key Stroke) や MT (Mod Tap)、 TGL (Toggle Shift) といった便利な機能が揃っています。

SMART SPEED X

入力遅延を抑えるモード(Wootingでいうタキオンモード)が使えます。

MT (Mod Tap)

キーを短く押したときと長く押したときで異なる機能を割り当てられます。たとえば1キーを短く押すと数字の1キーとして、長く押すとF1キーとして使用する、みたいなことができます。

長押し判定になる時間を10ms ~ 1000msの範囲で指定できるので、色々な使い方ができそうです。

DKS (Dynamic Keystroke)

1つのキーに最大4つの機能を割り当てられます。

  • キーを押してアクチュエーションポイントを通過したとき
  • キーを押して3.6mmの地点を通過したとき
  • キーを離して3.6mmの地点を通過したとき
  • キーを離してリセットポイントを通過したとき

上記の4回のタイミングで判定があり、それぞれ異なる機能を割り当てることができます。

TGL (Toggle Switch)

TGLを割り当てたキーを押すと、指定したキーやコマンドを入力し続けます。

たとえばMMORPGの会話を進めるキーがRだったとして、PgDnあたりにTGLを突っ込んでおくと、1度押すだけで会話が勝手に進んで便利かも。もう1度押すと切れます。

結論とターゲット

VXE ATK68について詳しく見てきました。結論から言うと、コストパフォーマンスの高さを求める人はもちろん、ハイエンド志向な人もこれで満足できてしまう可能性が高いです。

G版は軸揺れが改善されたGateron 2.0を採用しておりキーがグラつきません。フォームが敷き詰められたキーボード本体、ファクトリールブが施されたキースイッチとスタビライザーにより、まるでフルカスタマイズしたかのような打鍵感と打鍵音の心地よさをもたらします。

L版はスムーズな打鍵とやや高めの打鍵音、キーの押し始めの軽さを特長としています。細かな仕様変更によって動作の安定性が向上しているので、パフォーマンス重視ならL版を選択しましょう

アクチュエーションポイントとRapid Triggerは最短0.1mmに設定できます。Rapid Triggerの精度はWooting 60 HEやELECOM VK600Aに並びます。より性能を突き詰めたい場合はRazer Huntsman V3 ProやZENAIM KEYBOARDのどちらかが選択肢となりますが、費用対効果を考えるとATK68はとても素晴らしい選択肢となります。

ソフトウェアの出来も良く、アクチュエーションポイントやRapid Triggerの調整だけでなく、キーリマップやMod Tap、DKSといった便利な機能も揃っています。英語配列の65%キーボードという点さえ気に入るなら、本当に隙のない製品だと思います。

そろそろ日本国内でもRapid Triggerキーボードの価格競争が始まるフェイズかと思っていましたが、いきなりラスボスが出てきた感じ。中国国内で絶大な人気を誇るVGN、ゲーミングマウスも凄かったですが、キーボードに関してもコスパがずば抜けています。

VXE (VGN)ATK68
販売価格:18,800円

以上、VXEのゲーミングキーボード VXE ATK68 (G版 & L版) のレビューでした。

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この記事を書いた人

ミオニ
eスポーツ向け ゲーミング周辺機器のレビュアー
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