「OUTSET AX」レビュー。縦方向に動かしやすいIE3.0クローン
本稿では、OUTSETのゲーミングマウス「OUTSET AX」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: VAXEE JAPAN
ファーストインプレッション
vaxeeの新作ゲーミングマウス「OUTSET AX」「OUTSET AX G」をチェック。基本的にはNP-01後発ロットの仕様(当サイトではNP-01 Gのレビューで紹介したような内容)と同等のものとなっていますが、いくつかの変更点も見られます。
興味深いのは、NP-01のブラックは艶のある独特なコーティングだったのに対し、AXのブラックは完全に艶のないマットコーティングになっていること。それぞれ異なるグリップ感ですが、多くの人にとって馴染みがあるのは後者だと思います。
形状の変化によってメインボタンのフィーリングが若干異なること、さらに厚さ0.6mmのマウスソールを標準で搭載することも変更点として挙げられます。新作が出る度にマイナーアップデートが見られます。
形状はZOWIE ECベースで、テールが約1cmの高さからバッサリとカットされているのが特徴的。これのおかげで約117mmの全長の短さをさほど感じず、標準的なサイズ感のマウスのように握り込むことができます。メーカーが謳う「縦方向に動かしやすい」という点も、ここに集約されていると筆者は感じました。
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製品仕様とスペック
カラー | ブラック / ホワイト | 表面処理 | マットブラック(AX) / グロスホワイト(AX G) |
---|---|---|---|
形状 | 左右非対称 | サイズ | 65.0 x 117.43 x 43.0mm |
本体重量 | 76g | ボタン数 | 5つ |
センサー | PixArt PMW3389 | 解像度 | 400 / 800 / 1600 / 3200DPI |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 450IPS |
レポートレート | 1000Hz | LoD | Low/Mid/Highから選択可 |
プロセッサ | – | オンボードメモリ | – |
接続方式 | 有線 | ケーブル | パラコード/2.0m |
スイッチ | Huano 60g | エンコーダー | – |
ライティング | 非搭載 | ソフトウェア | 不要 |
メーカー保証 | 1年間 |
パッケージと内容物
NP-01と同じパッケージ。内容物はAX本体のみ。
パフォーマンス
形状と大きさ
中型サイズの左右非対称ゲーミングマウス。寸法は65.0 x 117.43 x 43.0mm。
この手の形状にしては全長が短めですが、背は高く、実際に握るとそこまで小さく感じません。
さまざまな角度から見ると、ZOWIE ECがベースとなっていることが分かります。EC2のホイールの位置を基準に本体後部のみが削られたような形状で、さらにテールは1cmほど浮いたあたりでカットされています。
全長が短くて背の高いデザインではあるものの、この構造によって、手を覆い被せたときにテールより手前側が少し浮いた状態になるので、かぶせ持ちではやや全長が長く感じます。
ZOWIE EC2との比較をいくつか。サイドのシェイプにこれといった違いはなく、どちらも緩やかな傾斜が作られているのみ。これらはグリップ時に大まかなガイド線とはなるものの、指の配置を強制するようなものではありません。結果的に、フィットはするが干渉はしづらいエルゴノミクス形状となっています。
こういった角度で比較すると、AXの全長の短さと背の高さが一層際立ちます。
本体重量
公称値は76g(ケーブルを除く)、実測値は80.6g。
前作のNP-01が70gで、体積の増加を考えると妥当な数値。
グリップ性能
2種類のコーティング(マットブラックのOUTSET AX、グロスホワイトのOUTSET AX G)から選択可能です。ブラックモデルに関してはNP-01から仕様が変更されています。
マットブラック / OUTSET AX
完全に艶のないマットコーティングが採用されています。手が乾燥した状態だと滑りやすいですが、手汗をかくとグリップ性能が高まる傾向にあります。
AXはかぶせ持ち・つかみ持ちに適したIE3.0クローン形状。手が触れる面積が広くなるほど蒸れやすくなるので、理にかなった選択であると感じます。
ちなみに前作のNP-01では、若干艶のある独特なコーティングが採用されており、手が乾燥した状態では滑りづらく、手汗に弱い傾向にありました。
グロッシーホワイト / OUTSET AX G
グロッシーホワイトは前作のNP-01 Gと同じ艶のあるタイプで、メインボタンのみ梨地加工が施されたブラックカラーと同じ材質が採用されています。
手が少しだけ湿った状態では張り付くような感触が得られますが、今回AXが同条件でさらにグリップ感に優れるマットコーティングを採用しているため、好み次第で選択するオプション的な立ち位置となりそう。
ちなみにグロッシーモデルの本体カラーがホワイトになっているのは、指紋が目立たなくするため。光量の強いライトを当てない限り、長時間プレイしたあとでも見た目に変化は見られません。
持ち方の相性
代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちとは非常に相性が良いです。AXのシェイプはどの指にも干渉せず、自然なフォームで握り込むことができます。
ZOWIE EC2を縦に凝縮したような形状で、それぞれの指のガイドとなるような細かな窪みなどは存在しないため、人を選びづらい安全な形状とも言えます。
この手の形状としては全長が短いものの、テールが約1cm浮いたところで切られているため、実際に握ったときに少しだけ長く感じます。手首を接地させないグリップスタイルにも対応します。
また、vaxee曰くAX / AX Gは”縦方向に動かしやすい形状”とのこと。より直接的な表現に直すと「手首が接地しないぶん縦に動かすときに干渉しづらい」になるのかなと思います。
当然ですが、マウスパッドと手首が一切触れていない状態では、マウスを自由に動かすことができます。テールが1cm浮いたあたりでカットされているAXは、マウスパッドに手首が接地しないグリップスタイルを助長します。
つかみ持ち
つかみ持ちとも相性が良いです。背が高いので指の配置にも困らず、違和感なくグリップできますが、細かく傾斜や窪みがつけられたマウスと比べるとフィット感に欠けます。
その理由の一つとして、テールが1cm浮いたあたりでカットされているので、本来よりも手のひらを据える位置が上に寄ってしまうことが挙げられます。かぶせ持ちとは違ってAXの全長の短さが際立つので、持ち方が違うだけで大きく異なる印象を受けます。
つまみ持ち
つまみ持ちは相性が悪いです。かぶせ持ちに最適化されたシェイプや、全体的な背の高さが制限を生みます。大きく膨らんだ本体後部の左側が手のひらと干渉しやすく、指の関節を使った操作に支障をきたします。
スイッチ
メインボタン
Huano 60Gマイクロスイッチ。非常に軽い押し心地で、無駄な遊びもありません。多少押し込む場所や条件が異なっても一定の圧で押し込むことができ、極めて安定したクリック感と言えます。
NP-01と比べてクリック感が若干軽め。おそらく形状の変化によるものでしょう。手持ちのvaxee製品でクリック感が軽い順に並べると、 AX = AX-G > 後期ロットNP-01 G > 初期ロットNP-01 といったところ。
NP-01で感じられた歯切れの良さはやや薄れてしまったものの、より少ない力で操作できるようになり、かぶせ持ち・つかみ持ちのどちらでも操作性に難は感じません。
本体底面のスイッチから、デバウンスタイムを2/4/8msの3段階に調整可能です。FPSでフリックしたときに意図したタイミングでクリックが反応するかなど、実際にプレイして確かめながらセッティングしましょう。
サイドボタン
サイドボタンはNP-01と同じ形状で、本体からしっかりと飛び出しています。ボタン配置も適切ですが、つかみ持ちはの場合はやや浅めにグリップしないと手前側のボタンに指が届きづらいと感じる可能性があります。
歯切れの良い押し心地で、固すぎず柔らかすぎず、誤爆しづらい調整。
ホイール
光学式24ノッチホイール。これに関してはNP-01 Gに限りなく近い操作感で、NP-01の初期ロットと比べて抵抗感とノッチが弱くなり、動作音もやや小さくなっています。
細かな操作にも適していますし、連続でスクロールしたときもハッキリとした分離感が得られるため、操作性には優れています。しかし一般的なホイールと比べて動作音が大きく、タクタイル感も強い部分は好みが分かれるポイントであると言えます。
ホイールクリックはやや固めで誤爆しづらいです。
センサー
AXのセンサーは「PixArt PMW3389」。主なスペックは 最大16,000DPI、最大加速度50G、最大速度400IPS。初期DPIは 400, 800, 1600, 3200の4段階で、本体底面のスイッチで切り替えられます。
センサー配置は本体の中央あたり。ごく一般的な配置です。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
xCounts/xSumの両方で安定した結果を示しており、センサー挙動は良好です。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
AXは、特定のスイッチを同時に押しながら接続することで、リフトオフディスタンスを低/中/高の3段階で調整できます。「PureTrak Talent」上で計測した結果、AXのリフトオフディスタンスは 低:1.1mm、中:1.5mm、高:1.9mm でした。
マウスソール
NP-01など以前のvaxee製品は厚さ0.45mmが標準ソールとして採用されていましたが、AXは厚さ0.6mmのソールを標準で搭載しています。従来通り、0.45mm/0.6mmのソールが販売されています。
大型マウスソールが上下2枚の配置。材質はPTFEで、滑りやすさと長期安定性を両立したタイプ。エッジはしっかりと処理されており、マウスパッドとの引っ掛かりは感じません。
ケーブル
編組ケーブルやビニールケーブルと比べて柔らかく、取り回しやすいパラコードケーブル。NP-01やNP-01 Gと比べて外側の布の余りが少なくなり、少しだけ細くなっています。
ケーブルの根本は平行に取り付けられていますが、底面から十分に距離が離されているため、マウスバンジーで適切に浮かせることでマウスパッドとケーブルが擦れるのを防げます。
ビルドクオリティ
AXのビルドクオリティは非常に高いです。本体を強く握ってもシェルの軋みは確認できませんでした。また、メインボタンやホイールのカタつきは見られず、本体を強く振っても音は一切鳴りません。
コントロール
AXはソフトウェア不要のプラグアンドプレイ設計で、本体底面に搭載されたボタンから以下の設定が行なえます。設定状況はLEDインジケーターによって確認できます。
- DPI調整:400 / 800 / 1600 / 3200
- ポーリングレート調整:125 / 500 / 1000Hz
- デバウンスタイム:2 / 4 / 8ms
その他、リフトオフディスタンスを低/中/高の3段階で調整できます。設定方法については前述の【センサー – リフトオフディスタンス(LoD)】の項を参照。
プラグアンドプレイにしては設定幅が広く、デバウンスタイムとリフトオフディスタンスが調整できるあたり、ゲームプレイでのパフォーマンスを重視した設計であることが分かり、高く評価できます。
結論とターゲット
「OUTSET AX」について詳しく見てきました。かぶせ持ち・つかみ持ちに適したZOWIE ECベースの形状で、ZOWIE EC2よりも全長こそ短いものの背が高いので、ほぼ同等のサイズに感じられます。
本体後部が約1cm浮いたところでカットされているため、自然と握り込んだときに手首とマウスパッドが接地しづらく、縦方向への操作がスムーズに行えるという設計上の意図が見て取れます。
仕様面に関してはNP-01 G(後期ロット)で見られたようなものに近く、主な変更点といえば、ブラックモデルがマットコーティングになったこと、クリック感が軽くなったこと、厚さ0.6mmのマウスソールが標準で搭載されていることの三点が挙げられます。
本来は細かな調整が行えないことが多いプラグアンドプレイ設計ですが、デバウンスタイムやリフトオフディスタンスの調整が可能。ゲームのパフォーマンスに直接影響する項目を押さえているのは好印象です。
vaxee公式サイトの直販限定とはなるものの、価格は税込6,990円と、このクオリティにしては低価格なこともポイント。IE3.0クローンやEC系統の形状が好みなら、一度試してみて損はない製品だと言えます。
総合評価4.5 out of 5.0 stars
ソリッドシェル+軽量設計
2種類のコーティング
優れたビルドクオリティ
パフォーマンス重視の設定
優れたクリック感
挙動が安定したセンサー
十分な厚さのソール
充実した設定項目
価格が安い
形状は干渉しづらいが背が高い
動作音の大きい光学式ホイール
ケーブルの柔軟性は完全ではない
以上、OUTSETのゲーミングマウス「OUTSET AX」のレビューでした。