「Logicool G Pro X Superlight」レビュー。シンプルな形状の最軽量ワイヤレスマウス
本稿では、Logicool(ロジクール)のゲーミングマウス「Logicool G Pro X Superlight」のレビューをお届けします。
ファーストインプレッション
プロシーンにおいて最も高い使用率を誇る「Logicool G Pro Wireless」の後継機として、「Logicool G Pro X Superlight」が登場しました。前機種から約20gの軽量化を果たしていますが、それと引き換えに右側のサイドボタンやDPI変更ボタン、LEDライティングが取り除かれています。発売当時のG Pro Wirelessと同じく、G Pro X Superlightは”発売時点で最軽量のワイヤレスマウス”です。
G Pro Wirelessが発売された2年前はライバル機種が市場に存在しなかったため、多くのユーザーが手に取るのは必然でした。ただし今ではワイヤレス機種の選択肢も出揃ってきているため、厳しい目で見る必要があると考えています。本稿にて詳しくチェックしていければと思います。
ちなみに、このG Pro X Superlightは環境に優しい素材を使用した、カーボンニュートラル(製品の製造過程におけるCO2の排出量と吸収量が±0)認定製品です。近年Appleをはじめとした大企業は環境保全に取り組んでおり、そこにゲーミング関連のトップ企業であるLogicoolが加わったのはハッピーなニュースです。
配信アーカイブ
製品仕様とスペック
形状 | 左右対称 | サイズ | 63.5×125×40mm |
---|---|---|---|
本体重量 | <63g | ボタン数 | 5つ |
センサー | HERO 25K | 解像度 | 100~25,400DPI |
最大加速度 | 40G | 最大速度 | 400IPS |
レポートレート | 1000Hz | LoD | 実測値0.7mm/調整不可 |
接続方式 | 2.4GHzワイヤレス | バッテリー | 最大70時間 |
ケーブル | ビニール/Micro-USB | ソール | PTFE/添加物無し |
パッケージと内容物
前機種であるG Pro Wirelessとほぼ変わらない、堅固なパッケージング。
内容物は G Pro X Superlight本体、USBドングル、延長アダプター、充電ケーブル(USB Type-A to Micro-USB)、本体底面の蓋(ソール付きと通常の2種類)、専用グリップテープ、取り扱い説明書。
パフォーマンス
形状と大きさ
中型サイズの左右対称ゲーミングマウス。寸法は63.5 x 125 x 40mm。
(G Pro Wirelessと全く同じ)とにかく癖がなく、あらゆる持ち方に対応する形状。
ただし”どの持ち方でも干渉しづらい”のであって、抜群のフィット感が得られるわけではないことには注意しておきたいところ。思い通りに握れたとしても好みが分かれる可能性はあります。
右サイドにわずかな凹凸が確認できますが、これは以前からあったものです(前機種ではサイドボタンが搭載されていて視認しづらかった)。指に引っ掛かるようなものでもなく、グリップ感にこれといった影響は及ぼさないので、特に気にする必要はありません。
本体重量
G Pro X Superlightの本体重量について、公称値は63g以下、実測値は61.1gでした。ハッキリと表記されていないことから、個体によって若干の差が見られる可能性があります。
右側のサイドボタンや本体底面のDPI切り替えボタン、LEDライティングが撤廃され、前機種 G Pro Wireless から約20gの軽量化を果たしています。目に見える変更点が多いですね。
重量バランスに難はなく、マウス本体の中央あたりに重心がくるよう設計されています。
注意しておきたいのは、前機種から引き続いてマウス表面が滑りやすいので、持ち方や操作方法によっては実際の本体重量よりも重たく感じる可能性があること。
コーティング
G Pro X Superlightの方が艶があることからも分かる通り、表面コーティングに若干の変化が見られます。具体的には、以前のようにABS樹脂が剥き出しの表面ではなく、コーティングが施されています。
グリップ感が少し向上していますが、手汗をかくと防滑性能が低下します。以前よりもマシではありますがこれより優れたコーティングのマウスはいくつも存在します。完全ではありません。
両サイドとメインボタンの形状に対応したグリップテープが付属しています。凹凸のあるラバー素材と比べるとグリップ性能に欠けますが、補強するには十分です。
このグリップテープは薄めに作られているため、マウス本体に貼り付けても厚みが出ず、握り心地に変化が生じづらいという点で優れています。
持ち方の相性
代表的な持ち方とされる かぶせ持ち/つかみ持ち/つまみ持ち との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちとの相性は悪くないです。適切な本体幅と背の高さが確保されているため、筆者の手の大きさだと窮屈とは感じません。フィット感には欠けますが、干渉することなくしっかりと握り込めます。
わずかに本体後部の幅が広がったシェイプで、親指の付け根から先端までを沿わせることができます。両サイドは中央から先端にかけて逆ハの字となっているので、持ち上げ動作が容易です。
つかみ持ち
つかみ持ちは相性が良いです。本体後部はギリギリまで高さが残っているため、手のひらの自然な配置が見つかりやすいです。
両サイドは中央から先端にかけて逆ハの字となっているため、持ち上げ動作が容易です。
つまみ持ち
つまみ持ちは相性が良いです。両サイドの中央から先端にかけては逆ハの字になっており、本体重量が軽いことも相まって持ち上げ動作が容易です。また、サイドボタン下部あたりはわずかに窪んでいるため、しっかりと指先の動きがマウス本体に伝わります。
ただし、指の関節を使った細かな操作をする場合はあまり適していません。マウス本体の全長が125mmとやや長く、指の関節を曲げたときに手のひらと本体後部がぶつかってしまいます。全長が短いマウスと比べて可動域が少し狭いです。
スイッチ
それぞれのスイッチ調整は優れており、前機種 G Pro Wireless(リニューアル前)とは大きく異なります。(特にメインボタンについては)詳細なレポートをお届けしているため、引っ掛かる部分もあるとは思いますが、全体的にポジティブな変化だと捉えていいでしょう。
メインボタン
G Pro X Superlightはメインボタンに Omron D2FC-F-7N (20M) を搭載しています。よく見られる5,000万回耐久のOmron D2FC-F-K (50M)よりも一貫性のあるスイッチとして評価されています。
押し心地は固く、全体のストロークも長めです。リニューアル前のG Pro Wirelessとは全く異なり、重たいと感じる可能性は高いですが、誤爆しづらいうえにしっかりとしたフィードバックを得られる、優れたクリック感に仕上がっているかと思います。
ただし、水平方向に若干の遊びがあります (意図したものかは不明)。ボタンのちょうど真ん中あたりを押すと一切問題ありませんが、ホイール付近など内側に指を置いて押し込んだとき、シェルが外側に少しだけズレるので、クリック感に若干の影響を及ぼします。筆者の場合は一切問題なく、快適なクリック感であると感じています。
チャタリング問題について
Omron D2FC-F-K (50M) が搭載されていた前機種 G Pro Wirelessではチャタリング発生の報告が多く、その改善策として昨年8月のリニューアル版からは Omron D2FC-F-7N (20M) へとスイッチが変更され、このG Pro X Superlightにも同じものが採用されています。
筆者が1年半以上使用しているG Pro Wireless、そして今回のレビュー機であるG Pro X Superlightのどちらもチャタリングは発生していないので、これが問題の解決に繋がっているかの証明はできませんが、少なくともそれらのスイッチを見比べたときにD2FC-F-7Nの方が信頼性が高いです。
既にいくつかのメーカーはチャタリングや入力遅延の少ない、光学式で作動するスイッチを開発しています。それらはメカニカルのクリック感を完全に再現できないなどの問題は抱えつつも、チャタリングを防止するという点においてはしっかりと機能しています。
現時点でLogitechから光学式スイッチのアナウンスはありませんが、既存の製品が抱えている問題を考えれば今後出てくる可能性は高いと言えるでしょう。
サイドボタン
G Pro X Superlightは両サイドの面積が広く、ボタン自体も小さいため、持ち方によっては配置が気になる可能性があります。マウスの下部に親指を置くとボタンへアクセスしづらいです。より快適なマウスが存在しているのは事実ですが、そこまで大した問題ではありません。
クリック感は軽すぎず重たすぎず、誤爆しづらいよう調整されていますが、ボタンを押し込む位置によって押し心地にムラがあります。端の方を押し込んだときに遊びが多く、スイッチが作動する前後のストロークが長くなる傾向にあります。これは操作を妨げるほどのものではないですが、浅めにグリップしたときには少し煩わしさを感じます。
ホイール
ホイールはホワイトカラーのものに変更されています。ゴムリングは従来と同じ、水平方向に細かなテクスチャ加工が施されたもの。適度な指への引っ掛かりがあって馴染みやすいです。
回し心地は従来よりも抵抗感があって重たく、しっかりとしたノッチ感があります。しっかりとした触覚フィードバックが得られ、高速でスクロールしても分離感が残ります。以前のような軽い操作感とは大きく異なりますが、誤爆しづらいうえに優れた操作感となっています。
ホイールクリックは「コトコト」と静かに降りていき、歪みも一切なく安定しています。ちょうどいい固さで感触が良く、短いスパンで押し込む必要のあるシーンでも快適に操作できます。
センサー
G Pro X Superlightのセンサーは「HERO 25K」。主なスペックは 最大25,400DPI、最大加速度40G、最大速度400IPS。前機種と変わらず、マウス本体の中央あたりに搭載されています。
マウス本体からDPIを変更することはできず、「オンボードメモリマネージャー」または「Logicool G HUB」上で設定する必要があります。※ソフトウェア上での初期DPIは400 / 800 / 1600 / 3200 / 6400の5段階でした。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
2.4GHzワイヤレス接続でも極めて安定しており、センサー挙動は良好です。USBドングルとマウス本体との距離をなるべく近づけて使用することを推奨します。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
「PureTrak Talent」上で計測した結果、G Pro X Superlightのリフトオフディスタンスは0.7mmでした。ソフトウェア上でLoDを設定することはできないものの、リフトオフディスタンスは極めて短いので、精密な操作を妨げることはありません。
マウスソール
従来のLogicool製マウスに標準で備わっていたソールから大幅にアップグレードされました。充填材が添加されていない純PTFE。滑走速度に優れる一方で、耐摩耗性は低いです。
標準ソールとしては滑りやすいものですが、エッジの処理がやや甘く、サードパーティー製の純PTFEソールと比べて少しだけ滑走速度が遅いです。中間層の柔らかいマウスパッドと組み合わせるとエッジと滑走面が擦れる音が目立ちます。
ソールの形状も大幅に変更されています。上部はマウス本体の1/3を占める大きさに、下部はあらかじめ2種類のカバーが付属しており、大きさを変更できるようになりました。
自身の操作しやすいと感じるほうを選びましょう。参考として、ソールとマウスパッドとの接地面積が広いほど滑走速度が速く、マウスを下に押さえ付けたときの滑りの変化が少なくなります。
接続とバッテリー
付属のUSBドングルによる2.4GHzワイヤレス接続に対応しています。今回のレビューにあたって長時間使用していますが、通信の途切れによる動作不良は見られず、極めて安定しています。
バッテリー持続時間は最大70時間と十分な長さです。同じクラスの無線ゲーミングマウスはほとんど同じバッテリー容量を搭載していますが、G Pro X Superlightはそれらと比べて群を抜いて軽いことを考えれば、優れていると言わざるを得ません。
ただし前機種と変わらず、充電ケーブルがMicro-USB端子を搭載していることは残念に思います。最近ではUSB Type-C端子を採用する機器が増えてきているため、ケーブルを統一したいユーザーは多いと思います。また、マウスはPCを操作している間欠かさず使用することになるので、Type-Cによる急速充電にも対応していれば嬉しいのですが…。
また、ケーブル材質はビニールのままなので、充電中に使用する場合はケーブルの重たさや抵抗感が気になります。POWERPLAY対応デバイスを置くだけで充電できるマウスパッド「Logicool G G-PMP-001」との併用でグッと快適にはなりますが、オプションとしては高価です。
ビルドクオリティ
前機種 G Pro Wireless は激しく振るとホイール周辺がカタカタ鳴っていましたが、G Pro X Superlightではほとんど音が鳴りません。また本体を握ったときに軋むことはなく、工作精度は高いです。
ただし一部の軽量マウスでも見られるように、サイドボタン下部のシェルをそれなりの力で押し込むと数mm凹んだりと、シェルの剛性にはやや不安が残ります。大きな問題ではありませんが、メインボタンの水平方向の遊びについても把握しておくべき。
一般的な製品としての基準は満たしており、通常使用での故障のリスクは極めて少ないとは思いますが、接触や落下などで強い衝撃が加わらないように気を付けてください。
ソフトウェア
G Pro X Superlightは、Logicool製デバイスの統合ソフトウェア「Logicool G HUB」に対応しています。またDPIやポーリングレート、Bluetoothペアリング状況などを「オンボードメモリマネージャー」で管理することも可能です。以下のURLよりダウンロード可能です。
- Logicool G HUB:https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/innovation/g-hub.html
- オンボードメモリマネージャー:https://support.logi.com/hc/ja/articles/360059428653-Download-Stub-PRO-X-SUPERLIGHT-Wireless-Gaming-Mouse
前機種のソフトウェアから変更はなく、キー・マクロ割り当て、DPI、ポーリングレートといった基本的な設定が行えます。LoDやデバウンスタイムの調整には対応していないので注意。
ソフトウェア上にバッテリー残量の数値が1%刻みで表示されます。
結論とターゲット
「Logicool G Pro X Superlight」について詳しく見てきました。筆者が過度に期待していたこともあり、開封時にはそこまで良い反応を示せなかったのですが、全体的に見るとポジティブな変更が多かったです。
右側のサイドボタンやDPI切り替えボタン、LEDライティングと引き換えに本体重量を63gまで削ぎ落とし、細かな部分に変化が加えられたモデル。パフォーマンスに直結する部分に焦点が当てられており、良い意味でも悪い意味でもG Pro Wirelessのバランスの良さは失われたように思います。
表面にはやや変化が加えられており、以前のようにツルツルと滑る印象は無くなりました。ただ手汗によって滑るので、まだ完全とは言えません。付属のグリップテープは薄めに設計されているため、サイズ感の変化を最小限に抑えられます。
発売当時のG Pro Wirelessは”唯一の軽量ワイヤレスマウス”でしたが、今では状況が全く異なることもあり、手放しで褒められるものではありません。残念に思う部分も少なからず存在します。とはいえゲームプレイに悪影響を及ぼすような欠点はなく、ワイヤレスとしては最軽量かつシンプルな形状のゲーミングマウスは多くの人にとって有力候補であることは間違いありません。
総合評価4.0 out of 5.0 stars
パフォーマンスに特化した設計
シンプルな形状、63gの軽量設計
改善されたクリック感
非常に薄いグリップテープ
品質が向上したPTFEソール
メインボタンの水平方向の遊び
表面コーティングは完全ではない
革新的なアップデートが無い
ビニール製かつMicro-USB端子のケーブル
以上、Logicool(ロジクール)のゲーミングマウス「Logicool G Pro X Superlight」のレビューでした。