「HyperX Pulsefire Raid」レビュー。手にフィットしやすいエルゴノミクス形状の多ボタンゲーミングマウス
本稿では、HyperX(ハイパーエックス)のゲーミングマウス「HyperX Pulsefire Raid」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: HyperX Japan
製品仕様と外観
ボタンを多く備えるゲーミングマウスは数多くありますが、高いスペックを要求する場合は選択肢が限られます。そんな多ボタンマウスのプールに、HyperXから「HyperX Pulsefire Raid」という新しい仲間が登場しました。
スイッチや重量面などには目新しい要素が見当たらないオーソドックスな製品ですが、手にフィットしそうな茄子型の形状、他であまり見ないボタン配置は注目すべきポイントかなと思います。早速詳しく見ていきます。
Pulsefire Raidは計11ボタンを備える左右非対称ゲーミングマウスです。左右に倒せるチルトホイール、左側サイドには独特な配置の5ボタンを備えています。
寸法は幅71.0 長さ127.8 高さ41.5mmで、分類するならば中型の中でもやや大きめといったところでしょうか。
本体カラーはブラックのみ。表面は滑りづらいマットコーティングで、やや指の跡がつきやすいのがネック。両サイドにはラバーグリップが貼り付けられており、手汗をかいた状態で指先のみでグリップするとやや滑りやすいです。
形状を4方向からチェック。中央よりもやや後ろにコブの位置があることと、両サイドのシェイプが特色かなと思います。
本体重量は公称値95g(ケーブルを除く)、実測値が97.9gでした。
センサーはPixArt PMW3389が搭載されています。スペックは 最大16,000DPI(50刻みで調整可能)、速度450IPS、加速度50G。ポーリングレートは125/250/500/1000Hzの4段階切り替えに対応。
その他、HyperX製デバイスの統合ソフトウェア「HyperX NGenuity」に対応しています。製品仕様をざっとお伝えしたところで、パフォーマンスの検証に移ります。
スペック&ギャラリー
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HyperX Pulsefire Raid 製品仕様 形状 左右非対称型 表面素材 マット (ブラック) サイズ 幅71.0 長さ127.8 高さ41.5mm 重量 95g ボタン数 11 センサー PixArt PMW3389 初期DPI 最大16,000DPI (50刻み) 速度 450IPS 加速度 50G ポーリングレート 125/250/500/1000Hz LoD 1.0mm~ (実測値) スイッチ オムロン製 (2,000万回耐久) ケーブル 編組ケーブル ソフトウェア 対応 (HyperX NGenuity) 価格 6,980円 (Amazon.co.jp、本稿執筆時点) - 製品イメージをチェックする (開閉できます)
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パフォーマンス
持ち方の相性・操作感
Pulsefire Raidの形状について簡単に言い表すと、手を被せたときにフィットするよう設計されたエルゴノミクス形状です。左サイドの後部(親指の腹・第一関節の辺りが触れる部分)の膨らみ、薬指・小指に沿うような右サイドの窪みによってフィット感を実現しており、いわゆるIE3.0クローンに馴染みがある方ならば違和感なく握り込めるでしょう。
とはいえ、細かな形状の違いによって握ったときの印象は異なります。Pulsefire Raidの場合、中心よりもやや後ろにコブがあることや、各所の窪みが際立っていることから、握った瞬間から指の配置が決められているかのような感覚です。
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
かぶせ持ち
筆者の手の大きさの場合、かぶせ持ちはジャストフィットします。ただし、サイドに備わった最も奥のボタンに親指が届くように深く握ると、左サイド後部の出っ張りが親指の付け根に干渉します。ちょうどよく握れるポイントを探ると、最も奥のサイドボタンに指が届きません。そこだけが曖昧です。
その他については秀逸と言っていいでしょう。右サイドは薬指と小指を無理に折り込むことなくフィットしますし、中心よりやや手前側のコブ(最も高い点)によって手のひらまでグリップできます。
つかみ持ち
Pulsefire Raidは本体後部の幅が広く、つかみ持ちも難なくグリップできます。両サイドの窪みも干渉せず、3本指を配置するために良いポイントが見つかります (筆者の場合、親指が真ん中のサイドボタン直下、薬指が先端から1cmあたり)。
左右クリックがセパレートタイプとなっており、押し込む場所によるクリック感の変化があまり見られないため、細かなグリップスタイルの違いがあっても操作感に支障は出なさそうです。
つまみ持ち
Pulsefire Raidは左サイドが奥側に向かって傾斜しているため、浅めにつまんだときに親指が滑りやすいです。となると、相当深めにつまむことになりますが、マウスの角度が調整しづらいうえに操作の安定感に欠けます。つまみ持ちは相性が悪いです。
ボタン配置・クリック感
メインスイッチはオムロン製で、2,000万回クリックの耐久性。セパレートタイプとなっており、押す位置によるクリック感の変化が少ないですが、ガワ構造の関係からか右クリックの付け根の辺りは固いです。
クリック感は固くもなく軽くもなく、ストロークの長さも並み。可もなく不可もなく。体感では跳ね返りが弱いように感じますが、連打には支障が出ない程度です。好みは分かれづらそうです。
サイドボタンは計5つで、独特な配置となっています。どれもストロークが短くタイトな押し心地で「カチッ」と高い音が鳴るあたり、ややチープさを感じますが、個人的には押しやすいと感じます。
前述の通り、かぶせ持ちで最も奥のボタンを押すためには多少フィット感を犠牲にする必要有り。2列に並んだ他の4ボタンは、親指の先端・第二関節で問題無く押し分けることができます。
Pulsefire Raidは、左右に傾けることが可能なチルトホイールを搭載しています。ノッチ感が少なく、軽い力でゴロゴロと回ります。
ホイールクリックはそこまで固くなく、明瞭なクリック感。一方で左右チルトは、ストロークが若干長いうえに軽い力で傾いてしまうため、斜めに力が掛かると誤爆しやすいです。2Dホイールに慣れた筆者の場合、ゲームプレイ中に気を付ける必要がありました。
センサー挙動・リフトオフディスタンス
Pulsefire Raidの搭載センサーはPixArt PMW3389で、ソフトウェアから最大16,000DPI(50刻み)の調整が可能です。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサーの正確性を検証。DPIは400/800で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
- MouseTesterの見方について
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基本的には、波形に点が綺麗に沿っていれば、マウスのセンサーが正確なトラッキングを行えている、という認識で構いません。マウスを動かす速度が速いほど、波形が縦方向に長く生成されます。つまり、波形の折り返し地点は、マウスが最高速度に達したことを表します。
- 横軸 Time(ms):経過時間を表す、1000分の1秒
- 縦軸 xCounts:マウスの左右への移動量。右に動かすと波形が上方向に、左に動かすと波形が下方向に生成される。マウスを動かす速度が速くなるほど、縦方向に大きな波形が生成される。
例えば、「中間地点の波形に点が綺麗に沿っているが、折り返し地点でブレが生じている」という場合、基本的には正確にトラッキングできているが、マウスを動かす速度が速いと反応がブレる、といった見方となります。 しかし、折り返し地点のブレが毎回同じような傾向だった場合、「マウスを早く動かすとカーソルが毎回その動きをする」ということですので、カーソルの動きは安定しているということになります。そのような場合、マウスを早く動かすとカーソルの動きに癖が出るものの正常、といった認識で構いません。
xCounts
xSum
MouseTesterの結果から見るに、どのDPIでも波形から大きく逸れた点は無く、センサー挙動は良好であると言っていいでしょう。実際のゲームプレイ (400DPI/1000Hzで主にLeague of Legends, Counter-Strike: Global Offensiveで使用) でもトラッキングに違和感はありませんでした。
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
マウスパッド「PureTrak Talent」上で計測した結果、Pulsefire Raidのリフトオフディスタンスは1.0mmでした。十分に短い数値です。
マウスソール
大型のマウスソールが上下に2枚。滑り・止めの観点から、コミュニティからの評価が高い配置です。しっかりめに角が丸められており、マウスパッドへの引っ掛かりは一切ありません。
円形や楕円形の汎用マウスソールも問題無く乗っかります。好みに応じてどうぞ。
ケーブル
昔ながらの(?)編組ケーブルです。取り回しへの配慮はされていないようで、他社製マウスの編組ケーブルと比較しても硬い部類に入ると思います。意外と操作性に影響しますし、最近では柔らかくて軽いケーブルを標準で備える流れもあるので気になります。
ケーブルの太さは実測値3.25mmと一般的で、あらゆるマウスバンジーに適合します。
ソフトウェア
Pulsefire Raidは、HyperX製デバイスの統合ソフトウェア「HyperX NGenuity」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
HyperX NGenuity:https://www.hyperxgaming.com/jp/ngenuity
設定項目は、LEDライティングの色・パターン・輝度変更、計11ボタンへのキー・マクロ割り当て、50~16,000のDPI調整(50刻み)、4段階のポーリングレート切り替えとなります。
NGenuityには、ゲーム起動時にデバイスの設定が自動で切り替わる Gamelink 機能が搭載されています。特殊なキーバインドでゲームをプレイする方、またはゲームに合わせたLEDライティングを楽しみたい方は要チェック。
結論とターゲット
「HyperX Pulsefire Raid」について詳しく見てきました。”多ボタンマウス”という位置付けですが、最も評価したいのは形状です。IE3.0クローンのユーザーにとって馴染みやすくもありつつ、握ったときにかなり異なる印象を与えます。
しかし筆者の手の大きさの場合、かぶせ持ちで全てのサイドボタンを活用しようと思うと、ジャストフィットするポイントから少しだけ深めに握り込む必要があるのが難点。エルゴノミクスマウスとしては評価したいですが、多ボタンを活かす前提ならば不完全と言えるでしょう。
スペックを考えれば比較的安価で、上記を除けばケーブルの硬さ以外にはこれといった難点は無し。形状には過度に期待せずに多ボタンを活かした運用を考えるか、もしくはその逆か。これらを切り分けて考えられる場合、十分に選択肢に挙げられるゲーミングマウスです。
以上、HyperX(ハイパーエックス)のゲーミングマウス「HyperX Pulsefire Raid」のレビューでした。