「ZYGEN NP-01S」レビュー。完全なオリジナル形状の小型エルゴノミクスマウス
本稿では、vaxeeとZYGENのゲーミングマウス「ZYGEN NP-01S」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: VAXEE JAPAN
ファーストインプレッション
単純にNP-01を小型化した訳ではなく、全長はそのままに本体幅と背の高さが調整されたモデル。かぶせ持ちやつかみ持ち向けだった前作とは異なり、つかみ持ちやつまみ持ちに適したサイズ感となっています。絶妙なサイズ感で、
基本的には前作であるNP-01やOUTSET AXの仕様を受け継いでいます。NP-01の独自コーティングは撤廃、AXで展開されていたマットコーティングがNP-01Sにも採用され、より高いグリップ性能と手汗への耐性を得られるようになりました。
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製品仕様とスペック
カラー | ブラック、ホワイト | 表面処理 | マット、グロス |
---|---|---|---|
形状 | 左右非対称 | サイズ | 約 120.0 × 62.0 × 36.0mm |
本体重量 | 71g (ケーブルを除く) | ボタン数 | 5つ |
センサー | PixArt PMW3389 | 解像度 | 16,000DPI |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 400IPS |
レポートレート | 最大1,000Hz | LoD | 1.1/1.6/1.9mm (実測値) |
接続方式 | USB2.0有線 | ケーブル | パラコードケーブル |
スイッチ | Huano 60g | サイドボタン | – |
エンコーダー | – | プロセッサ | – |
ライティング | 非搭載 | ソフトウェア | 不要 |
メーカー保証 | 購入日より1年間 |
パッケージと内容物
NP-01やAXと同じパッケージ。内容物はNP-01Sマウス本体のみ。
パフォーマンス
ビルドクオリティ
vaxeeの前作であるNP-01やAXと同様、ビルドクオリティは非常に高いです。
かなり堅固な造りになっていてシェルを強く握っても軋みません。また各部に無駄な遊びがなく、本体を激しく振っても音は一切鳴りません。組み立て精度も良好です。
形状と大きさ
NP-01Sは小サイズの左右非対称ゲーミングマウス。寸法は120.0 x 62.0 x 36.0mm。
ZOWIE S2をベースに両サイドを調整した「ZYGEN NP-01」の小型モデルという位置づけ。NP-01はかぶせ持ち・つかみ持ちに適したシェイプだったのに対し、NP-01Sは本体幅が狭くて全体的に背も低くなったつかみ持ち・つかみ持ち向けの形状。
NP-01は本体後部がちょうど手のひらに密着するほど幅が広い一方で、NP-01Sは本体幅が狭いぶん手のひらのどの部分を接地するか微調整しやすくなっています。また背が低いので指先とマウスパッドとの距離が近づき、細かな制御が行いやすい印象を受けます。
類似マウスとの比較
ZYGEN NP-01との比較。全長は変わらず、本体幅と高さが調整されています。
名称 | 幅 | 全長 | 高さ |
ZYGEN NP-01S | 62.0 | 120.0 | 36.0 |
ZYGEN NP-01 | 66.0 | 120.0 | 39.0 |
BenQ ZOWIE ZA13との比較。ZA13ほど本体後部の傾きが急ではありませんが、サイズ感は最も近いです。
名称 | 幅 | 全長 | 高さ |
ZYGEN NP-01S | 62.0 | 120.0 | 36.0 |
BenQ ZOWIE ZA13 | 62.0 | 120.0 | 38.0 |
BenQ ZOWIE S2との比較。
名称 | 幅 | 全長 | 高さ |
ZYGEN NP-01S | 62.0 | 120.0 | 36.0 |
BenQ ZOWIE S2 | 64.0 | 122.0 | 38.0 |
BenQ ZOWIE FK2との比較。
名称 | 幅 | 全長 | 高さ |
ZYGEN NP-01S | 62.0 | 120.0 | 36.0 |
BenQ ZOWIE FK2 | 64.0 | 124.0 | 36.0 |
本体重量
本体重量は公称値71g(ケーブルを除く)で、実測値はgほど。
ビルドクオリティを高く保ちつつ、バランスの良い本体重量に調整されているのは好印象です。直近でリリースされている小型マウスは極端に軽いものが多いので、あらゆる重量のマウスを試したい人にとっては選択の幅が広がって良いのかなと。
グリップ性能
NP-01Sはマットブラックとグロスホワイトの2種類をラインナップしています。
ユーザーからのフィードバックを受け、NP-01のコーティングは撤廃され、OUTSET AXで採用されていたマットブラックに変更されました。以前のNP-01と比べて感触が良いです。手汗をかいてもグリップ性能が維持されるようになり、かなり快適に使用できます。
マットコーティング特有のベタつきやテカりへの耐性の無さは気になりますが、これは類似コーティングを施した大半のマウスが抱えている問題なので仕方ない部分ではあるのかなと。
グロスホワイト (NP-01S G)は、前作のNP-01 GやAX Gと同じ艶のあるタイプ。メインボタンには梨地加工が施された、マットブラックモデルと同じ材質が採用されています。
手が少しだけ湿った状態ではマウス本体に手が張り付くような感触が得られますが、ほとんどの場合は滑りやすく、好みが分かれる質感であると言えます。かぶせ持ちなど接地面積が広いと気になりづらいですが、指先でのグリップにはあまり適さないように思います。
光沢モデルの本体カラーのみホワイトになっているのは、指紋を目立たなくするためとのこと。明るいライトでも当てない限り、長時間使用した後でも見た目に変化はありません。
マットブラックの方がグリップ性能に優れていると感じる可能性が高いです。
持ち方の相性
代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちは、よほど手が小さくない限りは窮屈に感じます。120.0 x 62.0 x 36.0mmと本体幅が狭くて背もかなり低いので、平均的な手の大きさやそれ以上だと小指や親指がマウスパッドと擦れてしまいます。
左側は手前が膨らんでいて親指の付け根から指先までフィットしやすく、右側には薬指と小指を配置できるカーブがあるなど、NP-01Sのシェイプ自体はかぶせ持ちと適性があります。サイズ感さえ合うならば、他にはない唯一無二の選択となります。
つかみ持ち
つかみ持ちとは相性が良いです。両サイドにはそれぞれの指を自然に配置できるような窪みや膨らみがあり、後部には手のひらを固定するのに十分な本体幅があります。
後方から見たときに上部がフラットになっているのはそのままに、NP-01よりも本体幅が狭くなったぶん、手のひらのどの部分とマウスを接地させるか選択の余地が生まれ、またその角度に融通が利くようになっています。
また、全長は120mmと手が加えられていないので、NP-01と同じ深さでグリップすることが可能です。
平均的な手の大きさと仮定すると、接地面積を広めにとってしっかりとグリップしたいならNP-01を、それぞれの指にゆとりを持たせた状態でグリップしたいならNP-01Sを選択すると良いでしょう。
つまみ持ち
つまみ持ちとも相性が良いです。NP-01よりも本体幅が狭くなったことで、フォームにゆとりが生まれ、指先の力がマウスに伝わりやすくなっています。また、背が低くなったぶん手のひらとマウスとの間に広いスペースが確保されるようになり、縦方向への可動域が広がっています。
左右非対称マウスの大半は、本体後部左側の膨らみによって親指が奥に追いやられてしまって深めにつまむことを強制されてしまいがちですが、NP-01Sは浅めに親指を配置しても問題無くグリップすることができます。
ただし、かなり浅めにグリップするのには適しません。左右クリックを押し込む位置がセパレートになった根本部分、ホイールの後部よりも1cmほど手前側になると、詰まったような押し心地になり、ボタンが跳ね上がるときの感触にも違和感が出ます。
スイッチ
メインボタン
NP-01やAXと同様、Huano製のマイクロスイッチを採用しています。押し心地は軽すぎず重たすぎず、適切な跳ね返り感があり、歯切れの良さも感じられます。指に確かなフィードバックが返ってきます。
無駄な遊びはなくストロークも一定で、FPSにおけるタップ撃ちと連打の両方をこなしやすいです。クリック箇所による押し心地のムラも少ないですが、ホイール後方よりも1㎝ほど手前側で押すと詰まったような押し心地になり、ボタンが跳ね上がってくる際にも違和感が生じます。
押し心地を軽い順に並べると、AX > NP-01(後期ロット) = NP-01S > NP-01(初期ロット)となります。(シェイプが違えば内部設計も大きく変わってくるので、AXとNP-01/NP-01Sの間で押し心地に差が生まれるのは当然の話)
サイドボタン
NP-01Sのサイドボタンは水平に配置されており、指を立ててグリップするつかみ持ちやつまみ持ちに最適化されています。これは、NP-01Sが単にNP-01を小型化したモデルではないことを示しています。NP-01では、かぶせ持ちしたときに親指の上側に沿うよう、ボタンが斜めに取り付けられていました。
押し心地は軽すぎず重たすぎず。とても歯切れが良く、誤爆しづらいです。ボタンを押し込む箇所による押し心地のムラも少なく、どのような持ち方でもフィーリングが変わりづらいです。
ホイール
他のvaxeeマウスにも採用されている光学式24ノッチホイール。細かな操作と連続したスクロールの両方でハッキリとした分離感が得られるので、高い精度を求められるゲームの操作に適しています。
しかし、一般的なホイールよりも粒の大きな引っ掛かり感があるのと、連続でスクロールしたときの動作音がかなり大きいので、好みが分かれやすい部分でもあります。
ホイールに関してはNP-01からNP-01 Gリリースの過程で改善されており、NP-01の初期ロットと比較すると回し心地が滑らかになって動作音もやや控えめになっています。
ホイールはやや固めで誤爆しづらいです。若干指に力を込める必要がありますが、適切な跳ね返り感があるので押しづらいとは感じません。
センサー
NP-01Sのセンサーは「PixArt PMW3389」。あらゆる高性能ゲーミングマウスに用いられるPixArt社製のハイエンドセンサーです。主なスペックは 最大16,000DPI、最大加速度50G、最大速度400IPS。初期DPIは 400, 800, 1600, 3200の4段階で、底面のDPIボタンから切り替えられます。
センサーの配置はNP-01から変更なし。マウス本体のほぼ中央に搭載されています。念のため再度お伝えしておくと、NP-01とNP-01Sは全長が全く同じ(120mm)です。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts (1000Hz)
MouseTester: xSum (1000Hz)
xCounts, xSumともに綺麗な波形を示しています。インゲームでのセンサー挙動も極めて良好です。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
NP-01Sは、特定のボタンを同時押ししながら接続することで、リフトオフディスタンスを低/中/高の3段階に切り替えられます。「PureTrak Talent」上で計測した結果、NP-01Sのリフトオフディスタンスは低:1.1mm、中:1.5mm、高:1.9mmでした。柔軟に対応できます。
マウスソール
横長のソールが上下に2枚貼り付けられています。材質はPTFEで厚さは0.6mm。
エッジは適切に処理されていて引っ掛かりづらいですが、厚さがそこまで無いので、スポンジが柔らかいマウスパッドとの組み合わせではソールが沈み込んだときに擦れ感が生じます。
ケーブル
パラコードケーブルはNP-01やAXから変更無し。芯が残っていて多少取り回しづらい、耐久性を考慮したタイプです。
ケーブルの根本は底面からある程度の距離が取られているので、マウスバンジーで適切に浮かせるとケーブルとマウスパッドの接触を防ぐことができます。
各種設定
NP-01Sはソフトウェア不要のプラグアンドプレイ設計で、本体のみで設定を完結できます。
本体底面のボタンからは、DPIとポーリングレート切り替え、2/4/8msのデバウンスタイム調整が行えます。また特定のボタンを長押ししながら接続することでリフトオフディスタンスを低/中/高の3段階で調整できます。
結論とターゲット
「ZYGEN NP-01S」について詳しく見てきました。前作と同様に高いビルドクオリティを備えており、クリック感やセンサー、ソール、ケーブル、各種設定などの基本的な仕様はそのままで、好みが分かれそうな光学式24ノッチホイール、やや固めのパラコードケーブルも据え置きです。
変更点として、AXで採用されていたマットコーティングが追加され、手汗への耐性やグリップ性能が向上していることが挙げられます。
NP-01Sは単にNP-01を小型化したものではなく、全長はそのまま本体幅と背の高さだけが調整されています。浅めにグリップすれば手のひらとマウスとの間に広いスペースが確保できるので縦に動かしやすいうえ、NP-01と同じ深さでグリップすることもできる、とても万能な形状です。
ZA13やFK2のような小さなサイズに慣れ親しんだユーザーにとって馴染みやすいものでありながら、サイドのみ非対称にすることで今までになかったグリップ感を実現しています。筆者はこの形状を高く評価します。
総合評価4.5 out of 5.0 stars
ソリッドシェルで軽量設計
他に無い優れた形状
手汗に強いマットブラックが追加
優れたビルドクオリティ
優れたクリック感
安定したセンサー
十分な厚さのソール
充実した設定項目
価格が安い
動作音の大きい光学式ホイール
やや芯が残ったケーブル
かなり浅めにグリップすると左右クリックに違和感が生じる
以上、vaxeeとZYGENのゲーミングマウス「ZYGEN NP-01S」のレビューでした。