「Corsair Sabre Pro」レビュー。軽量かつ無難なエルゴノミクス形状の大型ゲーミングマウス

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「Corsair Sabre Pro」レビュー。軽量かつ無難なエルゴノミクス形状の大型ゲーミングマウス

本稿では、Corsair(コルセア)のゲーミングマウス「Corsair Sabre Pro」のレビューをお届けします。

Corsair Sabre Pro
価格:7,920円(執筆時点)   Amazon  楽天市場

ファーストインプレッション

後方から見たときに左右で角度がほとんど付けられておらず、左右対称に限りなく近いシェイプ。実際にグリップするとIE3.0クローンをさらに無難にしたという印象で、個人的には評価し難いです。

ソリッドシェルかつ一定のビルドクオリティを保ちながら69gの軽量設計を実現していることについては印象が良いですが、その他の部分に懸念点が多く、これでなければいけない理由が見つからないのが正直なところ。現状、候補には挙がりづらいかと思います。

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製品仕様とスペック

カラー Black 表面処理 マット
形状 左右非対称 サイズ 約 129.0 × 70.0 × 43.0mm
本体重量 69g (RGB搭載モデルは74g) ボタン数 5つ
センサー PixArt PMW3392 解像度 18,000DPI
最大加速度 最大速度
レポートレート 最大8,000Hz LoD 実測値1.0mm
接続方式 USB2.0有線 ケーブル パラコードケーブル
スイッチ Omron (50M) サイドボタン
エンコーダー プロセッサ
ライティング ソフトウェア 対応
メーカー保証 購入日より1年間

パッケージと内容物

内容物は Sable Proマウス本体、取扱説明書。

パフォーマンス

ビルドクオリティ

Sable Proのビルドクオリティは完全ではありませんが、通常使用に影響を及ぼすことはありません。

シェルの親指側のサイドシェルが薄いのか、力を込めると少し沈みます。メインボタンに垂直方向の遊びがありますが、これは設計上意図されたものです。その影響でマウス本体を振ると音が鳴りますが問題はありません。

形状と大きさ

Sabre Proは大サイズの左右非対称ゲーミングマウス。寸法は70.0 x 129.0 x 43.0mm。

自然な手のフォームに合わせて設計された、かぶせ持ち・つかみ持ち向けの形状。

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左右非対称マウスとしては珍しく、後方から見たときに左右でそこまで角度がついておらず、手のひらに接地する部分はほぼ左右対称となっているのが特徴。細かく見るとわずかな傾斜がつけられているものの、各部の膨らみや窪みはかなり控えめ。

最も背が高いのは本体中央あたりで、傾斜の作り方にもこれといった特徴はありません。また全長も129mmと長めで、しっかりとマウスに手を預けるようなグリップスタイルに適しています。

本体重量

本体重量は公称値69g(ケーブルを除く)で、実測値は67.9gほど。 ※国内流通のRGB搭載モデル「Sabre Pro RGB」は公称値74g

かなり体積が大きめなマウスですが、ソリッドシェル採用かつビルドクオリティを保ちながらここまで軽量化されているのは印象が良いです。

グリップ性能

Sabre Proは艶消しのマットな質感となっており、マイクロテクスチャによる微小なザラつき感があります。これといってコーティングは施されておらず、グリップ性能は皆無です。手が乾いていても湿っていても滑りやすいので、何かしらの対策が必要かと思います。

グリップ時の接地面積の広狭にかかわらず、グリップテープ等で補強するのが好ましいです。

持ち方の相性

代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。

筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。

かぶせ持ち

マウスに手を覆いかぶせたときの自然なフォームに合わせて設計されており、かぶせ持ちとは非常に相性が良いです。各部の膨らみや窪みは控えめで、それなりにフィット感を得ることができます。

最も背が高いのは本体の真ん中あたりで、グリップしたときに人差し指や中指の第一関節あたりにくるので、これといった癖は感じません。最高点あたりから左右メインボタン先端にかけて僅かな窪みがあり、人差し指・中指のガイド線となっています。

親指の付け根から指先にかけて密着するようなシェイプは十分なフィット感が得られ、逆サイドの薬指と小指の配置スペースもしっかりと確保されています。

筆者の手の大きさではちょうど良いサイズ感で、グリップする深さを微調整することで手首を接地するかしないかを選択できます。

つかみ持ち

つかみ持ちとも相性が良いです。似たようなサイズ感の左右非対称マウスで主流となっているIE3.0クローンとは異なり、本体後部の膨らみが左右対称に限りなく近く、それでいてIE3.0クローンと並ぶほど背は高いので、意外と他にない形状であると言えます。

左右で角度がついていないぶん、グリップする深さや角度を制限されづらく、あらゆるグリップスタイルで違和感が出づらいです。

つまみ持ち

つまみ持ちは指先には干渉しませんが、マウスの全長が長くて背も高いので、手のひらとマウスの間に十分なスペースが確保されません。これによって、指の関節を曲げてマウスを縦に動かす際に、マウスの本体後部が手のひらと干渉してしまい、可動域が狭くなってしまいます。

指先を固定する方なら問題無く操作できますが、他により良い選択肢があります。

スイッチ

メインボタン

5,000万回耐久のオムロン製スイッチを採用した左右ボタン。シェルとマイクロスイッチとの隙間を無くすことで、物理的に高速な入力を可能とする設計「クリックストライクボタン」を特色としています。ファームウェア側でディレイを削る訳ではないので、直接的にチャタリングを起こす原因とはなり得ません。

極めて短いストロークと軽い押し心地で、上記の構造の影響か詰まったような押し心地となっており、好みが大きく分かれそうです。

また、左右非対称マウスのほとんどは、左右クリックのフィーリングに体感できるほどの差があります。このSabre Proの場合は右クリックがかなり浅く、跳ね返り感が物足りません。イヤホンやヘッドフォンで耳を覆った状態では、ほぼ指にフィードバックが得られず、軽く指をずらしただけで押下されます。

セパレートタイプとなっており、クリック箇所による押し心地の変化は少ないです。もともとクリック感が非常に軽いこともあり、かなり手前側に指を据えても少ない力で押し込むことができます。

サイドボタン

サイドボタンはやや奥側に配置されており、これといって特徴のない形状。かぶせ持ちやつかみ持ちでちょうど親指の真上にくるので、両方に指が届きます。

ストロークが短く、押し心地は軽すぎず重すぎず。「パチッ」とやや籠った音が鳴ります。これを押しづらいと感じるユーザーは少ないのではないでしょうか。

ホイール

ホイールの回し心地は軽めで、緩めのノッチ感があります。質感や回し心地はチープですが、操作時にカタつくことはありません。

ホイールクリックは非常に固いので、左右クリックの軽さとのギャップに苦しみます。しっかりと人差し指に力を込める必要があるので、視点移動を挟むようなタイミングではかなり押しづらいように感じます。

センサー

Sabre Proのセンサーは「PixArt PAW3392」。以前よりCorsair製マウスに採用されているPixArt社製の高性能センサーです。主なスペックは 最大18,000DPI、加速度や最大速度は未公開。初期DPIは 400, 800, 1200, 1600, 3200の4段階で、底面のスイッチを短く押すと切り替えられます。

センサーの配置はやや前寄りで、いわゆる”フロントセンサー”のマウスであると言えます。手首を軸にしてマウスを動かすときにカーソルの可動域が広がるため、コミュニティの間では良しとされています。

例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。

MouseTester: xCounts (1000Hz)

MouseTester: xSum (1000Hz)

xCounts, xSumともに綺麗な波形を示しています。インゲームでのセンサー挙動も良好です。

リフトオフディスタンス (LoD)

マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。

リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。

ソフトウェアでキャリブレーションを済ませてから「PureTrak Talent」上で計測した結果、Sabre Proのリフトオフディスタンスは実測値0.7mmでした。非常に短くて優秀です。

ポーリングレート

詳しくは「Razer Viper 8KHz」レビューの”ポーリングレート”の項を参照。

マウスソール

独自の形状をしたPTFE100%ソールが四隅に4枚貼り付けられています。

本来、PTFE100%のソールは滑りが速くて摩耗しやすいという特性がありますが、これはエッジの処理が甘いので擦れ感が強く、滑走速度にやや劣ります。表面が粗かったりスポンジが柔らかいマウスパッドと組み合わせると多少引っ掛かりを感じます。

ケーブル

パラコードケーブルはやや芯が残っていて、折れ癖が目立ちやすく多少取り回しづらいです。ケーブル長は2.1mとやや長め。

ブッシングは底面からある程度の距離が取られており、マウスバンジーで適切に浮かせるとケーブルとマウスパッドが干渉しません。十分快適に使用できます。

ソフトウェア

Sabre ProはCorsair製品の統合ソフトウェア「iCUE」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。

Corsair iCUE:https://www.corsair.com/ja/ja/icue

設定項目は、100~18,000dpiの解像度調整、ポーリングレート切り替え、ボタンへのキー・マクロ割り当て、表面キャリブレーションなど。最低限の機能は揃っていますが、リフトオフディスタンスやデバウンスタイムなどの調整は行えません。

※ソフトウェア初回起動時の注意

注意点として、Sabre Pro接続 → iCUEインストール → 初回起動時に、自動的にWindows側のマウスポインター速度が最大になってマウス加速もオンになる不具合があります。普段通りのセッティングで使用するためには、これらを修正する必要があります。

Windows10の場合、左下の検索欄に「マウス設定」と入力して設定画面に移動します。その後、右側にある「その他のマウスオプション」をクリック。

「ポインターオプション」タブを選択すると設定画面に辿り着けます。「ポインターの速度を選択する」をちょうど真ん中に合わせ、「ポインターの精度を高める」のチェックを外せば修正完了。

これに関しては、ある程度の知識が無ければ問題解決まで辿り着きづらい厄介な不具合だと言えます。Windows側のマウス感度が強制的に変更されてしまうので、他社製のマウスを繋いで比較するなどの方法では違いに気付けません。eスポーツ向けを謳う大手メーカー製のマウスでこの仕様はよろしくない…。

結論とターゲット

「Corsair Sabre Pro」について詳しく見てきました。形状に関して、左右でそこまで角度がついていない左右非対称マウスという点は他にあまり見られない特徴と言えますが、各部の膨らみや窪みは控えめで、かなり無難なものという印象。

他社製マウスを例に挙げて表現するならば、DeathAdderの各部の高低差を少なくしてマイルドな形状に仕上げたのが本機といったところ。この手の形状は既に飽和しつつあるので、強いフィット感が得られるような工夫が見られない限りは評価し難いです。

ただしソリッドシェルで69g(国内で流通しているRGB搭載モデルは74g)と、体積の大きなマウスにしては軽量設計となっている点、またビルドクオリティも良好という点は印象が良いです。

シェルとスイッチとの隙間を無くしてクリック応答速度を高める「クリックストライクボタン」について、おそらくこれの影響で右クリックが極めて浅くなっており、跳ね返りもほとんど感じられません。また、イヤホンやヘッドセットで耳を塞いだ状態では、ほとんどフィードバックが得られません。

左右非対称マウスにおける左右のクリック感の違いは避けられない部分ではありますが、パフォーマンスに影響を及ぼすほどなのでマイナス評価としています。

ポーリングレート8,000Hzに関しては、数ミリ単位での高速応答を求めるユーザーにとっては魅力的な機能です。しかし現時点では恩恵を受けられるユーザーは限られていますし、8,000Hzで問題無く動作するゲームタイトルは少ないので、ここを重視する必要性は薄いです。その他の懸念点も目立つため、選択肢には挙がりづらいゲーミングマウスであると言えます。

また、既に本機を使用している方は、Windows側の設定が強制的に変更されていないかを確認しましょう。変更されていた場合、元に戻しておくことを強くお勧めします。

総合評価3.0 out of 5.0 stars

ソリッドシェルで軽量設計
ビルドクオリティは良好
クリック感は極めて軽い
センサーは安定している
高ポーリングレートに対応
それなりにフィット感する無難なシェイプ
端の処理が甘いPTFE100%ソール
やや芯が残ったケーブル
ホイールクリックが固く、左右クリックとのギャップが大きい
ノンコーティングでグリップ性能に欠ける
高ポーリングレートの恩恵を受けるには144Hz以上のディスプレイが必要
左右クリックの差が大きく、右の押し心地には違和感
ソフトウェア初回起動時にWindows設定が変更される

Corsair Sabre Pro
価格: 7,920円 (本稿執筆時点)

以上、Corsair(コルセア)のゲーミングマウス「Corsair Sabre Pro Champion Series」のレビューでした。

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この記事を書いた人

ミオニ
eスポーツ向け ゲーミング周辺機器のレビュアー
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