Sprime PM1 レビュー
この記事では Sprime PM1 のレビューをお届けします。
レビュー用サンプル提供:Sprime Gaming Gear
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この製品について
突如Twitter上で投稿された「G403/G703 Shape」「43Grams」「8000Hz」という文字に心を踊らされた人も多いんじゃないでしょうか。Sprime Gaming Gearは2022年に設立されたメーカーで、このPM1が初の製品となります。技術、構造設計、材料研究、金型製作を深く理解した少数の人員で構成されていて、サードパーティーのサービスに頼ることなく1から自社開発を始めたそうです。
デザイン
早速本体を見ていきます。PM1はブラック・ホワイト・レッドの3色展開です。
シェルの素材には繊維複合材料 別名カーボンファイバーが使用されています。軽くて頑丈な素材です。
マウス表面は光沢が少なく、マットな質感になっています。もしかするとコーティングの影響でこうなっているだけかもしれませんが、一般的なABS樹脂のシェルとは少し違った雰囲気が出ています。全く艶のない真っ黒の物体みたいな感じです。
マウス本体の裏側にある電源スイッチや、ドングルのデザインなどを見ると、PM1が製造されているのはNinjutso Sora 4Kなどと同じ工場だと推測できます。
レビューサンプルには一般的なUSB Type-Cケーブル、黒い半透明のドングルが同梱されていました。将来的に販売を開始する予定の8Kドングルも同じデザインになるとのことでした。
本体重量
本体重量は公称値44グラム、実測値が45.1グラムでした。1.1グラムの誤差は許容範囲内と言えます。
ミディアムサイズの左右非対称マウスとしては非常に軽いです。この手の形状のマウスは背が高く、左右対称マウスと比べると体積が大きくなる傾向にあります。つまり、G PRO X SUPERLIGHT形状のマウスが45グラムになるのとは少し訳が違います。
重量バランスは良好です。重心はマウス本体の真ん中で、重さが偏ってる箇所はありません。
ビルドクオリティ
このサイズ感でここまで軽いと気になるのがシェルの剛性です。おそらくシェルは相当薄いのですが、一般的な樹脂製のマウスと比べて頑丈で、かなりの剛性を保てています。普通にグリップするくらいでは何ともなく、強めに側圧をかけてもたわみづらいです。
側圧をかけてもサイドボタンが押し込まれることもなければ、指先の感覚ではたわんでいると気付くことすら困難です。軋むような音が鳴ったり、本体を振るとカラカラと音が鳴ることもありません。到着から約50時間ほど使用した段階では、開封直後と同じような状態をキープしています。
シェルの成型精度は充分に高いです。トップシェルとボトムシェルの間に隙間はなく、しっかりと噛み合っています。トップシェルとサイドシェルの継ぎ目はほぼ見えず、段差になっている部分もありません。
それぞれのスイッチのフィーリングは良好で、適切な位置に取り付けられています。
コーティング
表面のコーティングはとても優秀です。グリップ力が強くて滑りづらく、指先や手のひらを一度決めた位置で保持しやすいです。Endgame Gear XM2weのコーティングに似ています。
こういう滑りづらいコーティングは、汗や皮脂による汚れが目立ちやすい傾向にあります。マウスの種類に関わらずブラックは特に汚れが目立ちやすいので、見た目が綺麗な状態をキープしたい人はホワイトを選択することをお勧めします。
形状と大きさ
左右非対称ゲーミングマウスは手を自然なフォームで覆い被せたときにフィットする形状になっているものが多いです。人間の手は5本の指があって複雑な形をしているので、それに沿わせるようなカーブがあったり、うまく角度がつけられていたりします。
Sprime Gaming Gear PM1の形状と大きさについて、簡単に言えばLogicool G403 / G703を若干小さくしたものです。G703は本体後部のコブが卵のように丸いのが特徴的なエルゴノミクスマウスです。そのシルエットはそのままに、わずかに全体的な背を低くして、全長もわずかに短くしたものがPM1です。
真ん中よりもわずかに後ろ側が最も背が高く、本体後部のコブは少し丸みを帯びています。
両サイドのカーブがかなり特徴的です。ほとんどのエルゴノミクスマウスでは、左側面の後部は幅が広がっていくものが多いですが、G703やPM1は逆に狭まっていきます。ここは薬指や小指の付け根を支える部分ですが、幅が狭まっているぶん、本体後部のコブに丸みを持たせて背を高くすることで補われています。
ほとんどのエルゴノミクスマウスは後方から見たときに傾いていて、左から右にかけて背が低くなっていきます。このマウスはその傾きがなく、丸いドーム型になっているので、左右対称マウスに近い感覚で握り込むことができます。
メインボタンは指に沿うようなU字状の窪みがあり、指先の位置が定まりやすいです。
持ち方との相性
本体後部にある卵のように丸いコブは、かぶせ持ちしたときに手のひらの真ん中に食い込み、指先から手のひらの付け根まで全体に張り付くような感覚が得られます。他のエルゴノミクスマウスでは手のひらの真ん中には若干のスペースが空きます。
指の付け根で支える浅めのつかみ持ちをするときには、コブの浅い部分の出っ張りを起点にして支えることができます。この手のエルゴノミクスマウスのほとんどは真ん中から後部にかけて一気に背が低くなるので、同じ位置だと背が低くてうまく支えられません。
少数派の変わった持ち方にも対応します。例えば、指を伸ばした状態で浅めにグリップして、薬指と小指の付け根で支える持ち方では、マウスの形状に合わせて指を添えるだけで手が自然なフォームになるのでとても楽です。薬指と小指の置き場にゆとりがあるので深さも調整しやすいです。これを全体的に手前側にずらすとつまみ持ちになりますが、違和感なく操作できます。
あるいは、人差し指と中指の付け根で支えて、他の指の関節を曲げて添えるような持ち方もできます。本来は手を下に押さえつけるようにしないと固定できない持ち方ですが、PM1は充分な背の高さがあるので脱力した状態で固定できます。
本来エルゴノミクスマウスは特定の持ち方でフィットするよう設計されており、ある程度は持ち方を制限されてしまうものですが、この形状はどの深さでグリップしても違和感が出づらい素晴らしいものです。
Logicool G703hとの比較
Sprime PM1はやや小さめのG703hといった感じ。本体幅だけ据え置きで、背の高さと全長の長さを95%くらいに抑えたイメージです。
G703の1:1クローンを求めていた人にとっては残念かもしれませんが、このミディアムサイズは多くの人に馴染みやすい大きさで、あらゆる持ち方でフィット感を生む素晴らしい形状です。
メインボタン
メインボタンには最近流通し始めたオムロン製の光学式スイッチ Omron Optical Switch が搭載されています。光学式スイッチの強みは、二重入力を防ぐための遅延を必要とせず、クリック遅延が抑えられる点です。
クリックの固さは少し柔らかめで、意識して指先に力を入れなくても軽い力で押すことができ、跳ね返りも強いです。わずかなプリトラベルと、指先の力を逃がすための適度なポストトラベルがあります。押し心地と固さに対するストローク量が適切で、VALORANTではタップ撃ちとスプレー撃ちを思い通りに撃ち分けられました。
明瞭なクリック感があり、はっきりとした感触が指先に返ってきます。いつ押したか・いつ離したかのリズムを掴みやすいです。感覚的な話なので違いを体感することは難しいですが、メインボタンのはっきりとした感触は、キーボードとマウスの操作を連動させるのに貢献しているのではないかと思います。
ゲーム操作のしやすさの観点では非常に優れていると思います。押し心地やフィーリングの観点で言えば、光学式スイッチ特有のカチッと音が鳴るタイミングで粘り気がある感じは、一般的なマウススイッチの歯切れの良いフィーリングを好む人にとっては少し違和感があるかもしれません。
Sprime Gaming Gear PM1は光学式スイッチを採用するマウスとしてはNinjutso Sora 4Kに並ぶほどの歯切れの良さを感じられ、気になりづらい部類ではあると思います。(そもそも実際にゲームをプレイしている最中は耳が塞がるので気になりづらい。こういった細かい部分が気になるのはプレイ外での感触にこだわりすぎているのかもしれない。)
サイドボタン
サイドボタンの形状はG703よりも小さいですが、ほぼ同じような位置に搭載されています。深めのかぶせ持ちやつかみ持ちで両方のボタンに指が届き、浅めにつまみ持ちすると奥側のボタンに指が届きません。
クリックの固さは並みで、誤入力しづらいです。プリトラベルとポストトラベルは短く、指をずらすとカチッとすぐに反応します。重要なキーを割り当ててもうまく機能しました。
ホイール
ホイールはG703よりも若干奥に搭載されており、リングの外径は一回り小さいです。横から見ると高さはあまり変わらないように見えますが、持ち比べてみるとG703のほうが飛び出ているように感じます。
ホイールの回し心地はやや固めで、適度なノッチ感があります。1スクロールごとにしっかりと分離します。
ホイールクリックの固さは並みで、これといって変わった感触でもなく、無難に押しやすいです。メインボタンとの固さのギャップもあまり気になりません。
製品版では新しい金型を使用してホイールが作られ、現在のものより0.4グラム軽くなるそうです。もしかすると、この変更によって回すときの固さや感触にも変化があるかもしれません。
センサー
PixArtのフラッグシップセンサー PixArt PAW 3395 が搭載されています。Sprime Gaming Gear曰く、PixArtチームと密接に協力して、箱から出したままの調整されていない3395センサーを使用したマウスよりも高速にトラッキングできるよう調整したとのことです。
さらにセンサー遅延を抑える競技用モードも搭載されています。これは消費電力を高めてパフォーマンスを向上させる、VAXEEマウスなどに搭載されている機能と同じものと考えてよさそうです。
今のところリフトオフディスタンス(LoD)に関する設定項目はなく、万が一トラッキング不良が発生した際にユーザー側で対処する方法がありません。念のため、一部の特殊な滑走面の布製マウスパッド(Artisan Shidenkai V2)やガラスマウスパッド複数枚でテストしたところ、トラッキング不良は発生しませんでした。
センサーの位置はマウス本体のほぼ真ん中、G703と比べてわずかに後ろ側です。
ポーリングレート
ポーリングレートについて、パッケージに同梱されているのはポーリングレート1000Hz対応のドングルで、後日発売される別売りのドングルで最大8000Hzの高ポーリングレートもサポートされます。8kHz Dongleは見た目はそのままで内部の電子機器が変わるとのことです。
8Kドングルを入手後、高ポーリングレート設定時の動作検証を行います。
バッテリー
ポーリングレート1000Hz動作時のバッテリー寿命は約80時間とのことです。競技用モードを有効にすると性能が向上する代わりに消費電力が高まり、バッテリー寿命は約半分の約40時間になります。
フル充電で競技用モードをオンにした状態でVALORANTを3時間プレイして、30分おきにバッテリー残量を確かめてみたところ、約36時間は連続動作できる計算となりました。ほぼ公称値通りです。
マウスソール
* 標準ソールを写真を撮る前に剥がしてしまったので、詳しく知りたい方は動画をご覧ください。
ミディアムサイズのマウスソールが四隅に貼り付けられています。初動が軽くて滑走も速いタイプです。ソール自体に十分な厚さがあり、角度がつけられているので、柔らかいマウスパッドと組み合わせたときにエッジが引っ掛かったりボトムシェルが擦れたりしません。
公式から交換用マウスソールが販売されているケースは意外と少ないですが、Sprime Gaming Gearの公式サイトには既に横長タイプのマウスソールの製品ページが存在しています。価格はJPY表記で¥1,600でした。
ソフトウェア
Sprime Gaming Gear PM1はプラグアンドプレイ設計で、DPI、ポーリングレート、Motion Sync、競技用モードのオンオフといった詳細な設定がマウス本体の操作のみで行えます。
また、ブラウザ上で動作するWebベースのソフトウェアも利用可能です。Sprime Gaming Gear公式サイトのヘッダーにある Memory Manager からアクセスできます。
設定項目が綺麗にまとまっていてとても分かりやすいです。基本的にはマウス本体で設定が完結しますが、キー割り当てとマクロ記録・保存だけはソフトウェアからしか設定が行なえないので、必要に応じて使う場面が出てきそうです。
結論とターゲット
Sprime Gaming Gear PM1について詳しく見てきました。G703は本体後部のコブが卵のように丸いのが特徴的なエルゴノミクスマウスですが、PM1は全体的にわずかに背が低くなり全長も短くなったものです。G703が100%ならPM1は95%くらいのサイズ。ただ本体幅はそのまま据え置きです。G703の1:1クローンを求めていた人にとっては残念かもしれませんが、このようなミディアムサイズはより多くの人に馴染みやすい大きさです。
多くのエルゴノミクスマウスでは幅が広くなっている右側面の後部が狭まっていくのは、G703やそれをベースとしたPM1のもう一つの特徴です。両サイドの膨らみやへこみが少ないので持ち方を制限されづらく、既存エルゴマウスでは違和感が出やすい様々なグリップスタイルに対応します。
ミディアムサイズのエルゴノミクスマウスでは最も軽量といえる44グラムの軽さは魅力的です。おそらくシェルも相当薄いのですが、素材の選択により充分な剛性を保てています。クリック感にも優れており、超軽量マウスによくある安っぽさを感じさせない造りに仕上がっています。
8Kドングルは後日発売されるようなので、8000Hzなど高ポーリングレートでの動作検証はお預けですが、早期サンプルを受け取って充分に試した現段階では、2023年のベストリリースに選ぶ可能性が非常に高いです。
以上、Sprime PM1 のレビューでした。