Razer Viper Mini Signature Edition レビュー
この記事ではRazerのゲーミングマウス Razer Viper Mini Signature Edition をレビューします。
現状、Razer Viper Mini Signature Editionは定期的に数量限定で販売されています。執筆時点での価格は41,500円と非常に高価なゲーミングマウスです。
このレビューを動画で見る
開封
段ボールを開けるとシボ加工された合皮のケースが。まるで高級な時計が入った箱みたいです。中身はゲーミングマウスのはずなんですが、総重量はなんと約870グラム。
箱を開けるとまずViper Mini Signature Edition本体が登場します。
中段にはアクセサリーボックスが、最下段にはケーブルが収納されています。とても豪華な演出に、約4万円の高い買い物をしたんだという実感がわきます(借り物ですが)。開封体験はとても良いものでした。
ポーリングレート
他のマウスに無い強みを挙げておくと、Razer Viper Mini Signature Editionは執筆時点で唯一のポーリングレート8,000Hz対応ゲーミングマウスです。ポーリングレートを高く設定すると入力遅延が抑えられ、8,000Hzでは入力遅延が極めて少ない状態でプレイできます。
しかし、PC(主にCPU)に掛かる負荷は大きくなります。つまり、ゲームの動作FPSがモニターのリフレッシュレートを下回らないようなPCスペックに余裕のある環境で真価を発揮します。PCスペックが充分じゃない場合、ハイポーリングレートの恩恵は受けられないといっても過言ではありません。
Razer Viper Mini Signature Editionは現状トップの性能を有しており、最近多いポーリングレート4,000Hz対応のワイヤレスマウスよりも高速です。とにかく入力遅延を最小限に抑えたいと考えている場合、まず選択肢として挙がってくるといった感じです。
デザイン
シェルはマグネシウム合金でできています。軽量かつ耐久性に優れる素材で、Finalmouse Starlight-12やPwnage StormBreakerなど採用例がいくつかあります。本体重量はわずか49グラムです。
強度が心配になるくらい肉抜きされていますが、レビューしている個体は強めにグリップしたり側圧をかけてもシェルがたわんだり軋み音が鳴ることはなく、本体を激しく振っても音は鳴りません。
シェルの成形精度や組み立て精度は高いです。シェルの間の継ぎ目はほぼ見えず、段差になっている部分もありません。
それぞれのスイッチのフィーリングもうまく調整されているように思います。
コーティング
表面のグリップ性能は低いです。決まった位置で指先を保持するのが難しく、つまみ持ちや浅めのつかみ持ちではグリップテープ等による対策が必須となります。深めのつかみ持ちなど手のひらのような柔らかい部分を載せる持ち方では、穴に手のひらが食い込んで滑りづらくなるように感じました。汗や皮脂による汚れは比較的目立ちづらく、綺麗な状態を保つことができます。
形状と大きさ
Razer Viper Mini Signature Editionの寸法は62.0 x 119.0 x 39.0mmです。それなりに小さいです。筆者のような平均的な手の大きさでは、手のひらで支えるような深めのつかみ持ちだと少し窮屈で、つまみ持ちか浅めのつかみ持ちでジャストフィットします。
製品名の通りRazer Viper Miniの形状をそのまま受け継いでいます。Razer Viperを縦に凝縮したような形状で、小さいながらも意外と背が高いのが特長です。この背が高い部分に指の付け根をあててつかみ持ちすると持ちやすいです。
両サイドはそれなりに深くくびれています。右サイドはわずかに逆ハの字になっています。この角度が薬指を縦に寝かせるように配置したときに快適で、自然なフォームを保ったまま固定できます。
メインボタンはU字状に窪んでおり、人差し指と中指の指先の位置が定まりやすいです。
Razerから発売されているCobraシリーズが同じ形状ですが、多くの機能を実装しておりeスポーツ向けの仕様ではありません。Viper Miniクローン形状のゲーミングマウスはいくつかあり、Glorious Series One Pro Wirelessなどがそれにあたりますが、筆者が高く評価しているものは現状ありません。
類似形状のゲーミングマウスにはG-Wolves HTX 4Kが挙げられます。Viper Miniよりも平べったいですが両サイドの形状は少し似ています。
今後登場するLamzu Mayaも似た形状なのではないかと噂されています。
メインボタン
左右クリックはインゲームでのパフォーマンスは担保されていますが、押したときの心地よさはありません。
メインボタンにはRazerが独自に開発した光学式スイッチ Razer Optical Mouse Switch Gen3 を搭載しています。アップデートが重ねられており、現在はこの第3世代が最新のものになります。
クリックはやや固めで、跳ね返りも強いです。プリトラベルとポストトラベルが若干ありますが全く気にならない程度です。少し力を加えると大きなクリック音とともにシェルが一気に下まで降りていき、少し力を抜くと一気に跳ね上がる感じです。オンオフがはっきりとしたFPS向けの調整だと感じます。
Razer Viper Mini Signature Editionは光学式スイッチとマグネシウム合金製シェルが採用されており、Finalmouse Starlight-12やPwnage Stormbreakerのような金属シェルらしい鋭いクリック音と、Razer Viper V2 ProやRazer DeathAdder V3 Proの擦れ感の強さと大きなクリック音が合わさったような押し心地です。バチバチと大きな音が鳴ります。クリックすると音が大きく響く分、指に伝わるフィードバックも大きいのは利点と言えますが、好みが分かれそうです。
ボタンを押す場所によるクリック感の変化は少ないです。深めのつかみ持ちで奥側を押し込んでも、つまみ持ちや浅めのつかみ持ちで手前側を押し込んでもフィーリングはほぼ変わりません。
サイドボタン
サイドボタンはやや小さめで、本体から程よく飛び出ています。浅めのつかみ持ちでは両方のボタンに指が届きます。
プリトラベルとポストトラベルがほぼ無く、少し指に力を加えるとすぐに反応します。固さは並み~やや固めで誤入力しづらいです。うまく調整されていて非常に押しやすいです。
ホイール
ホイールはメインボタンから程よく飛び出ています。ホイールリングが金属製なのはとてもユニークです。
回し心地はやや重たくてノッチ感は弱め。なんとも上品な回し心地なんですが、回すときの抵抗にノッチが負けていて分離感があまり感じられません。回し心地が軽いものや分離感が強いものを好む方には合わなそうです。
ホイールクリックの固さは並みで、反応点までの遊びがないので少し指に力を加えるだけで押し込めます。どの方向から力を加えても押下され、とても安定性が高いように思います。
センサー
センサーはトップクラスの性能を誇り、同社製フラッグシップマウスに採用される Razer Focus Pro 30K です。独自の検証を行った結果、センサー挙動は正常でDPI偏差もありませんでした。
Razerのフラッグシップ機はリフトオフディスタンスを非常に細かく調整できるのが強みです。スマートトラッキングで「低い」に設定した状態ではBenQ ZOWIE G-SR-SE Gris上で実測値0.6mmと非常に短くなり、マウスを浮かせて位置を元に戻すときなどにカーソルの無駄な動きを抑えることができます。
「非対称カットオフの有効化」にチェックを入れると26段階の調整が可能です。基本的に長くする必要は無いのですが、最近は特殊な表面のマウスパッドが多く存在します。マウスパッドの表面をセンサーが正常に読み取らないとき、リフトオフディスタンスを長く設定することで解決する場合があるので、26段階の調整に対応しているのは安心できる要素とも言えます。
マウスソール
楕円形のマウスソールが四隅に貼り付けられています。デフォルトのソールにしては滑り出しが軽く、滑走速度も速いです。中央から端にかけて角度がつけられているので、エッジが引っ掛かることなくスムーズに滑走します。
Razerのフラッグシップ機はどれも前方のソールを小さめに、2枚に分離していることが多いように思いますが、何か意図はあるのでしょうか。LogicoolやVAXEEは上部ソールに面積が大きいものを採用する傾向にあります。
標準ソールがそこまで厚くないのと、ボトムシェルにソールガイドのような外枠が無くソールを貼る部分を窪ませている構造なこともあって、ボトムシェルからソールがあまり飛び出ていません。中間層(スポンジ部分)の柔らかいマウスパッドと組み合わせると、沈み込んだときにボトムシェルが擦れてしまうので注意が必要です。
上記はサードパーティー製の分厚いソールに貼りかえることで対策可能です。CorepadのCorepad Skatez PROシリーズにこのマウスの専用形状のものが販売されています。
ソフトウェア
Razer製デバイスの統合ソフトウェア Razer Synapse よりカスタマイズが可能です。基本的な設定に加え、他社製マウスよりも詳細にリフトオフディスタンスの調整が行えます。モードの切り替えやMotion Syncのオンオフなどの制御は行えず、最新マウスとしては簡素なようにも思えます。
結論とターゲット
Razer Viper Mini Signature Editionは定価¥40,000オーバーの非常に高価なゲーミングマウスです。開封体験はとても良いものでしたし、全体的によくできていると思います。しかし結論、大半の人にとってマウス単体で見た時に価格相応の価値は無いと感じられるでしょう。
ワイヤレス接続でポーリングレート8,000Hz対応というのが最大の強みです。これは執筆時点だと他のゲーミングマウスでは実現されていません。しかし今後必ずといっていいほど出てくる可能性は高いです。
マグネシウム合金製のシェルもあくまで軽量化する手段の一つであり、それ自体に価値がある訳ではありません。Razerが独自に開発した最新のセンサーやスイッチが採用されていますが、それはViper V2 ProやDeathAdder V3 Proにも搭載されているものです。
一部の層から絶大な支持を得ているViper Miniの形状に価値を感じていても、この価格には納得できません。今ではViper Miniのクローンや似た形状のマウスもいくつか出てきているうえ、そもそもRazer Viper Mini Signature Editionは本家の原型を留めているか怪しいほど派手に肉抜きされていて持ち心地が劣ります。
上記のように価格に見合ったものであるかはさておき、性能面については間違いありません。とにかく低遅延です。予算を気にせず、1ms単位やそれ以下の入力遅延も抑えたい、とにかく応答速度が速いゲーミングマウスを探しているという人にお勧めです。最近は1万円後半から2万円台で十分に性能の高いゲーミングマウスが入手できるので、少しでも価格面で引っ掛かるならこの機種を選ぶ意味は薄いです。コレクション的な要素を多めに含んだ製品だと感じました。
以上、Razerのゲーミングマウス Razer Viper Mini Signature Edition のレビューでした。