「Razer Viper」レビュー
本稿では、Razerのゲーミングマウス「Razer Viper」のレビューをお届けします。 [no_toc]
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製品仕様と外観
「Razer Viper」は、本体重量69gと軽量設計で、フレキシブルなケーブルを標準で備える Razerの意欲作。計8ボタンを備えた左右対称型ゲーミングマウスで、両側にサイドボタンを搭載しており、右利き左利きどちらでも使用可能。なお8ボタンのうち1ボタンは、底面に備わったDPI変更ボタンなので、ゲームプレイで使用できるのは7ボタンとなります。
本体サイズは幅66.2 全長126.73 高さ37.81mmで、ざっくりと言うならばZowie FK1 (=Glorious Model O)のような形状です。厳密には全長が約2mmほど短いですが、ファーストインプレッションとしては殆ど違いが無いように思います。全体的に平べったく、両サイドやメインスイッチなどの要所が窪んでいます。
このViper、決して”軽量”であることがメインではなく、メインスイッチに光学式「Razer Optical Mouse Switch」を採用していることが最大の特徴と言えるでしょう。クリック時に赤外線を通じて信号を送り、光の速さでアクチュエーションが行われるといったもの。最高速0.2msのクリック応答速度を謳うほか、パーツ同士の物理的な接触がない構造によって7,000万回の高耐久性を実現しています。
センサーには最大16,000DPIに対応する Razer 5Gオプティカルセンサーを搭載しており、ポーリングレートは最大1,000Hzに対応しています。ハイエンドセンサーPixart PMW3389をRazer向けにカスタムしたものですが、個人的に安定性に欠ける印象が払拭できていません。センサー挙動に関しては後述しています。ケーブルにはRazer独自設計の柔らかくて軽い「Razer Speedflex Cable」を採用。当サイトでは疑似パラコードと呼称しているものです。
本体重量は公称値69g(ケーブル除く)、実測値71.2g(ケーブル含む)。これまでに発表された60g台の超軽量ゲーミングマウスと言えば、ハニカム状の穴が開いたものが一般的でした。Viperは穴を開けない従来のデザインのまま、ここまでの軽量化を果たしています。
製品仕様
形状 | 左右対称型 |
サイズ | 全長126.73 幅66.2 高さ37.81mm |
重量 | 69g (ケーブル除く) |
ボタン数 | 8 |
センサー | Razer 5G Optical |
DPI | 100~16000 (50刻み) |
LOD | 0.6mm~ (実測値) |
スイッチ | Razer Optical Mouse Switch (7000万回耐久) |
ケーブル | Razer Speedflex Cable (疑似パラコード) |
ソフトウェア | 対応 |
ギャラリー
パフォーマンス
持ち方の相性・操作感
「Razer Viper」は製品仕様の項目でもお伝えした通り、Zowie FK1の要所に凹凸を加えたような、あるいはGlorious Model Oを数ミリ単位で調整したような形状です。サイズは中型で、そこまで高さもなく全体的に平べったいもの。
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
かぶせ持ちは、メインスイッチの窪みが人差し指・中指のガイドとなっているうえ、親指・薬指・小指も違和感なく配置できます。筆者の手の大きさでは、深めに握り込むには全長が126mmでは少し足りないので、気持ち浅めに手を覆いかぶせることでフィットしました。
一方で、つかみ持ちは筆者の手の大きさでは難しかったです。Viperは、前述のFK1やModel Oよりも全長が数ミリ短く、後部で削られています。手のひらを配置するスペースが無く、無理やり確保しようと深めに掴むと操作の安定性に欠けてしまいます。FK2のサイズ感がピッタリな手が小さめの方であれば適合しそうです。
つまみ持ちでは、サイドの窪みが親指・薬指・小指の配置ガイドとなり、自然と握り込むことができます。重量69gと軽量なことも相まって、手首AIMでも少ない力で快適に操作可能。また、サイドボタンの配置が手前に寄っているので、つまみ持ちでも親指が奥側に届きやすいです。
結論としては、かぶせ持ち・つまみ持ちの相性が良かったように感じました。筆者の手の大きさではつかみ持ちは厳しいですが、手が小さめの方ならば十分に適合するかと思います。FK1やModel Oがベースの形状ではありますが、たった数ミリの差異によって違和感が発生したことに驚きました。
ボタン配置・クリック感
製品仕様の項目でお伝えした通り、Viperのメインスイッチには光学式「Razer Optical Mouse Switch」が搭載されています。クリックの反応速度を高め、7,000万回の高耐久性を謳うものです。クリック感は軽めで、ストロークも短くて押しやすいのですが、跳ね返りが弱いのが気になります。
従来のメカニカルスイッチはカチッと押し込んだ後、意識して指の力を抜かなくても、強い抵抗感とともに自然と跳ね上がってきます。しかしRazer Optical Mouse Switchは、押し込んだ後に少し力を抜いただけでは押下されたままです。”性能面では優れたスイッチ”ではありますが、クリック感の好みは分かれそうです。少なくとも、従来のメカニカルスイッチとは別物と考えるのが良さそうです。
サイドボタンは本体からほぼ飛び出していないので、親指の腹の端ではやや押しづらく感じます。やや手前側に配置されているので、持ち方を問わず指が届きやすいです。クリック感は軽く、ストロークは短め。押し心地はタイトな印象を受けます。また、逆側のサイドボタン(右利きならば左側、左利きならば右側)は誤爆しづらい配置となっています。
ホイールは硬めでノッチ感も強く、何度回したかが把握しやすいタイプです。滑り止めラバーもしっかりと役割を果たしています。ホイールクリックは軽めで、ゲームプレイ中に瞬時に押しやすいです。一通り触っているうちにガタつきなどは感じられず、ホイール周りの機構の耐久性も問題無さそうです。
センサー挙動とリフトオフディスタンス
- MouseTesterの見方について
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基本的には、波形に点が綺麗に沿っていれば、マウスのセンサーが正確なトラッキングを行えている、という認識で構いません。マウスを動かす速度が速いほど、波形が縦方向に長く生成されます。つまり、波形の折り返し地点は、マウスが最高速度に達したことを表します。
- 横軸 Time(ms):経過時間を表す、1000分の1秒
- 縦軸 xCounts:マウスの左右への移動量。右に動かすと波形が上方向に、左に動かすと波形が下方向に生成される。マウスを動かす速度が速くなるほど、縦方向に大きな波形が生成される。
例えば、「中間地点の波形に点が綺麗に沿っているが、折り返し地点でブレが生じている」という場合、基本的には正確にトラッキングできているが、マウスを動かす速度が速いと反応がブレる、といった見方となります。
しかし、折り返し地点のブレが毎回同じような傾向だった場合、「マウスを早く動かすとカーソルが毎回その動きをする」ということですので、カーソルの動きは安定しているということになります。そのような場合、マウスを早く動かすとカーソルの動きに癖が出るものの正常、といった認識で構いません。
「Razer Viper」の搭載センサーは Razer 5G で、ハイエンドセンサーPixart PMW3389をRazer向けにカスタムしたもの(Pixart PMW3389DM)です。最大16,000DPIを50刻みで調整できるほか、最大5つまでDPI数値を保存しておき、底面のDPI変更ボタンで切り替えることが可能です。どのDPIに設定されているかはLEDインジゲーターの色で確認できます。ソフトウェアからは、マウスパッドとの最適化を図る キャリブレーション機能 を利用できるほか、リフトオフディスタンスの調整も可能となっています。
Mouse Testerでセンサーの正確性を検証しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。DPIはそれぞれ400, 800, 1600, 3200で、ポーリングレートは1000, 500Hzの2パターン、マウスパッド「Razer Gigantus」上でテストを実施しました。結果から残るのは、ポーリングレート1,000Hzでマウスが最高速度に達したときの安定性に欠けるという印象。所々でカウントの飛びが見られます。なお、このような乱れは500Hzでは発生しません。
マウスを浮かせてからセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。ソフトウェアから最も短い設定にしたうえで計測した結果、リフトオフディスタンスは0.6mm前後となりました。こちらは優秀。これ以上の値に設定することも可能です。
マウスソール
マウスソールは上下に横長のものが2枚、中心にセンサーを覆うようにO型のものが1枚です。そこそこ滑りやすく止めやすい、標準ソールとしては妥当なものです。エッジ(端)は加工されておらず、操作時にマウスパッドと擦れて「スーッ」と音が鳴ります。
3枚ともに製品固有の形状ですが、底面の切り込みの形状を考えると、汎用マウスソールに貼り替えることも可能です。交換用ソールの候補として上がるのは丸型や楕円型のものでしょう。リフトオフディスタンス調整機能が備わっているので、ソールの厚さは好みに応じて選択可能です。
ケーブル
ケーブルには柔らかくて軽い「Razer Speedflex Cable」が標準で備わっています。いわゆる疑似パラコードで、換装したパラコードと比較するとやや芯が残っているものの、無線に近い操作感が実現できていると感じます。根本から十分に柔らかく、有線ゲーミングマウス特有の抵抗感を感じづらいです。
太さも疑似パラコードとしては一般的で、手持ちのマウスバンジー4種に適合しました。折れ癖がつきづらい質感なので、マウスバンジー裏側のケーブルを固定しておく機構から外れることもなく、かなり取り回しやすい部類だと思います。
ソフトウェア
Viperはソフトウェア「Razer Synapse 3」に対応しています。設定項目としては、DPI調整(100~16,000DPIを50刻み)、ポーリングレート切り替え(125,250,500,1000Hz)、リフトオフディスタンス調整(実測値0.6mm~)、キャリブレーション、各ボタンへのキー・マクロ割り当て、LEDライティング設定となります。
前述の通り、リフトオフディスタンスは最短設定で0.6mm前後と非常に短めで、ユーザーの好みに応じて調整可能です。また、使用しているマウスパッドに合わせてセンサーを最適化する キャリブレーション は必ず実施しておくこと。Razer製のマウスパッドであれば、あらかじめ用意されたプリセットによって即時に最適化できます。
ソフトウェアは日本語に対応しているうえ、シンプルで分かりやすいUIとなっています。使い心地には特に不満はありません。
結論とターゲット
「Razer Viper」の最大の魅力は、クリック応答速度に優れた光学式スイッチを採用した点でしょう。押し心地こそ弱めの跳ね返りに癖を感じたものの、ここを許容できるのであれば十分な強みになると言えます。FK1やModel Oを数ミリ単位で調整したような形状で、中型サイズながら重量69gまで軽量化を果たしている点も見逃せません。
ただし、Pixart 3389派生のセンサーとしてはポーリングレート1,000Hzでのセンサー挙動がやや不安定で、前述の通りクリック感にやや癖があるなど、懸念点もいくつか挙げられます。このあたりを踏まえても、総合的に見ると面白い製品ではあります。平べったい左右対称型ゲーミングマウスが好みな方ならば十分に検討する価値アリ。
以上、Razerのゲーミングマウス「Razer Viper」のレビューでした。