「Pulsar Xlite」レビュー。本体重量わずか48gの最軽量ECクローンマウス
本稿では、Pulsar Gaming Gearのゲーミングマウス「Pulsar Xlite」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: Pulsar Japan
ファーストインプレッション
新興メーカー Pulsar Gaming Gearの第1作。ありふれた軽量ゲーミングマウスかと思いきや、良い意味で価格設定と内容が見合っておらず、非常に好印象です。
ZOWIE EC2のサイズ感で48gと最軽量クラスながら、ビルドクオリティに難は見られませんし、クリック感やセンサーなどの調整も良好です。全体的にハイクオリティで、気になる点はその他大勢のマウスが抱えているようないくつかの懸念点のみ。どれも価格を考えれば納得できます。
レビューを動画で見る
製品仕様とスペック
カラー | ブラック | 素材 | ポリカーボネート |
---|---|---|---|
形状 | 左右非対称 | サイズ | 66.17 × 122 × 42mm |
本体重量 | 48.85g | ボタン数 | 5つ |
センサー | PixArt PAW3370 | 解像度 | 最大20,000DPI |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 400IPS |
レポートレート | 1,000Hz | LoD | 実測値0.9mm |
プロセッサ | – | オンボードメモリ | – |
接続方式 | 有線 | ケーブル | パラコードケーブル |
スイッチ | オムロン製 20M | エンコーダー | – |
ライティング | 非搭載 | ソフトウェア | 対応 |
メーカー保証 | – |
パッケージと内容物
内容物は Xliteゲーミングマウス本体、グリップテープ1セット、予備のPTFEマウスソール1セット、モニターに取り付けるコンパクトなマウスバンジー「マイクロバンジー」、ステッカー、取扱説明書。
パフォーマンス
ビルドクオリティ
ZOWIE EC2とほぼ同じサイズ感でわずか48gのXliteですが、ビルドクオリティは良好です。派手に肉抜きされたボトムシェルを見て「このマウスは脆いだろう」と確信していたので、個人的にかなり驚いた部分です。
ボタンやホイールの軋みやカタつきはなく、本体を激しく振っても音は鳴りません。詳しくは後ほど記載しますが、各スイッチに関しても適切に取り付けられています。
アメリカ国防総省が制定したMIL規格(MIL-STD-810G)に準拠したテストをクリアしており、耐衝撃性に優れていることを示しています。シェル内部には補強されている部分も見られ、耐久性も考慮した構造になっています。
形状と大きさ
中型サイズの左右非対称ゲーミングマウス。寸法は66.17 × 122.66 × 42mm。
少し前からよく見かけるZOWIE ECのクローン形状です。サイズ感は全長がわずかに短いZOWIE EC2といったところで、日本人の平均サイズに近い筆者の手の大きさ(18.5 x 9.5cm)ではジャストフィットします。
ZOWIE ECクローンの特徴は、手の形に合わせてざっくりと造形されていること。細かな膨らみや窪みがある訳ではなく、サイズ感さえ合えば誰でも一定のフィット感を得るのが強み。IE3.0クローンの傑作と言っていいでしょう。
ECクローンマウスはかなり増えてきているので、今さら形状に関してとやかく言うのもなーといったところ。
BenQ ZOWIE EC2との比較
本体重量
公称値は48.85g、実測値は52.9gでした。小型の左右対称マウスでは40g台のものもいくつかありますが、このサイズ感のエルゴノミクスマウスとしては信じられないほど軽いです。
グリップ性能
ポリカーボネート樹脂という耐衝撃性に優れたプラスチックの一種。表面にコーティングは施されておらず、全体的にサラッとした手触り。そこまで酷いものではありませんが、少しだけ指紋がつきます。
質感は良好ですが、グリップ性能に関してはやや低め。マウス全体に独特な形状の穴が開いているデザインなので、感触が手や指先に伝わってきます。あらかじめXlite専用形状にカットされたグリップテープが付属しているので、気になる人はテープを貼り付けて対策しましょう。
持ち方の相性
代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちは相性が良いです。EC2に限りなく近いシェイプとサイズ感で、平均的な手の大きさであればジャストフィットするのではないかと思います。
つかみ持ち
つかみ持ちとも相性が良いです。サイズ感に関してはかぶせ持ちと印象変わらずジャストフィットで、本体幅が広すぎないため自然なフォームのままグリップできます。
つまみ持ち
つまみ持ちとは相性が悪いです。サイド左が中央より奥側で窪んだ形状なので、親指が奥側に追いやられ、深めにつまむことを強いられます。指の関節を使ったエイムが行えず、本体後部が干渉して可動域も狭くなります。
スイッチ
メインボタン
2,000万回耐久のオムロン製マイクロスイッチ。ハイエンドなゲーミングマウスに用いられる定番のスイッチです。
オムロン20M特有の歯切れの良い押し心地で、とても優れています。やや固めで誤爆しづらく、同時に跳ね返り感も強いので、輪郭がハッキリとしたクリック感です。連打とタップ撃ちの両方をこなしやすいです。
セパレートタイプではありませんが、ホイールのやや手前あたりまでは押し心地がほぼ変わらず、かぶせ持ちやつかみ持ちでは困ることは一切ないかと思います。また、ボタンの両端のほうでも問題なく押し込めます。マイクロスイッチが適切に取り付けられていることが分かります。
これは左右非対称マウス全般に言えることではありますが、左右ボタンでの押し心地の差は大きいです。筆者の個体では重たさ自体にそこまで差はないものの、左クリックのほうがテンションがやや弱く、右クリックはややストロークが長く、バチバチと跳ね返ってきます。
サイドボタン
サイドボタンはやや小さめ。かぶせ持ちやつかみ持ちでグリップしたときにボタンと親指が一切被らない、ECクローンならではの配置。
どの角度で押し込んでも押し下げ圧はほぼ一定で、マイクロスイッチは適切に取り付けられていることが分かります。押し心地は固すぎず柔らかすぎず、明瞭なフィードバックが返ってきます。ストロークはとても短く、「コトッ」と低くて鈍い音が鳴ります。
ホイール
水平方向に細かく刻まれたゴムリングは、十分なグリップ感が得られます。
ノッチ感はやや弱いものの粒が大きく、スクロール時には常に弱めの抵抗感があります。これらの絶妙なバランスによって、連続したスクロール時にも行き過ぎることなく操作の安定感が増している印象。ただし分離感が物足りず、1ノッチ単位の細かな動きには不向きであると感じます。
ホイールクリックは軽めで、指に力を込める必要はありません。押下時にはハッキリとした感触があり、大きめのクリック音が鳴ります。
センサー
Xliteのセンサーは「PixArt PAW3370」。PixArt社の新型ハイエンドセンサーで、有線無線問わず採用例が増えてきています。初手で3370を採用しているあたり、ワイヤレスマウスの展開にも期待できそう。
センサーの配置は若干フロント寄り。可動域が広くなるので、上に寄っているほど好ましいです。とはいえZOWIE Eなど類似形状のマウスと比べて僅かな差です。
主なスペックは最大20,000DPI、最大加速度50G、最大速度400IPS。注意点として、初期DPIが800, 1200 ~ と続くので、DPI400で使用するにはソフトウェアのインストールが必須となります。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
xCounts, xSumともに問題なく、実際のセンサー挙動も安定しています。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
Xliteは、ソフトウェアからLoDをHigh/Lowの2段階で調整することができます。「PureTrak Talent」上で計測した結果、XliteのリフトオフディスタンスはLow設定時で0.9mmでした。とても短くて優秀です。
マウスソール
100%PTFEマウスソール。採用例が増えてきたとはいえ、この価格帯のマウスならば本来は期待できない部分。あらかじめ備わっているのが0.6mmで、予備として付属しているマウスソールが0.8mm。ユーザーの好みに合わせてソール厚を選択できます。
PTFEの純度が高いほど滑走速度が速くて滑らかに滑る反面、耐摩耗性に劣る傾向にあります。エッジはそれなりに深く処理されており、中間層が柔らかくて沈み込みの深いマウスパッドと組み合わせない限りは引っ掛かりが発生しません。標準マウスソールとしては優秀です。
センサー周りのO型リングが備わっているのも好印象。
ケーブル
ビニールや編組ケーブルと比べて非常に軽いパラコードケーブル。最近では標準ケーブルでもしなやかで柔らかいものも増えてきていますが、これは芯が残っていて固い部類です。
ブッシングが斜め上を向けて取り付けられているので、マウスバンジーで適切に浮かせてあげるとマウスパッドとの接触を完全に防ぐことができます。
ケーブルが柔らかすぎるとマウスを大きく振ったときに踏ん付けてしまうことがあるので、マウスバンジーを使っていないなどセッティング次第ではある程度固いものの方が取り回しやすいこともあります。
マウスバンジー ※付属品
Xliteには、モニターの縁に取り付けて使用する簡易的なマウスバンジー「マイクロバンジー」が標準で付属しています。台座を3M製の粘着テープでモニターに取り付け、ケーブルにゴムブッシングをはめ込んだ後、台座に差し込めばセッティング完了。
この3M製の粘着テープは一度剥がすと粘着力が弱まって再利用しづらいですが、海外ユーザーから同様のフィードバックが多かったからか、替えの両面テープが1つ付属するようになっています。
モニターの配置によってはケーブルを上から降ろす形となるので、ケーブルの抵抗や重たさを感じづらく、一般的なマウスバンジーを使用するよりも取り回しやすいかもしれません。
ただしモニターを目と近付けてプレイしていたり、モニターの位置を下げて角度をつけている場合など、セッティング次第ではケーブルが干渉してしまって快適に使用できない可能性もあります。
あくまでオマケとして付属しているものなので、合えばラッキーって感覚で良いのかなと。ゴムブッシングは比較的細めのビニール製ケーブルでもしっかりと固定してくれるので、筆者は重宝しています。
ソフトウェア
Xliteは専用ソフトウェアに対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
Xlite Wired Gaming Mouse Sofrware: https://www.pulsar.gg/pages/download-xlite
設定項目はキー割り当て、DPI調整、リフトオフディスタンス切り替え(High/Low)、デバウンスタイム調整(2~20ms)、マクロの記録/保存など。ライティングは非搭載です。
リフトオフディスタンスやデバウンスタイムの調整といった、プレイパフォーマンスに直結する部分に手が加えられるのはかなり好印象です。
ただしXliteは光学式スイッチではなく物理的接触を伴うマイクロスイッチを搭載したゲーミングマウスなので、デバウンスタイムを短く設定しすぎるとダブルクリックの問題が発生する可能性があるため、注意すること。
結論とターゲット
「Pulsar Xlite」について詳しく見てきました。直近でリリースされたECクローンの中では最も内容が良く、かぶせ持ち・つかみ持ち向けの超軽量ゲーミングマウスを探している方にお勧め。良い意味で価格と内容が見合っていません。
形状に関しては、既に市場にありふれたECクローンなので評価しづらいですが、サイズ感はEC2に限りなく近いので、日本人の手に合いやすいかと思います。このサイズ感で48gという驚くべき軽さではあるものの、限界まで削ぎ落とされている訳ではなく、しっかりと剛性が保たれています。
各スイッチやホイール、センサーの調整に難はなく、唯一の懸念点はケーブルが少し固いことでしょうか。グリップテープ、予備の100%PTFEマウスソール、マイクロバンジーと付属品も充実しています。
新興メーカーの第1作ながらこれといってズレた部分が見当たらず、しっかりと要点を抑えている印象です。他の製品も見てみたいところ。Pulsarは今後もチェック推奨です。
総合評価4.5 out of 5.0 stars
中型のIE3.0クローンでは最軽量クラス
優れたビルドクオリティ
優れたクリック感
安定したセンサー
滑りやすい100%PTFEソール
とても充実した付属品
LoD/デバウンスタイムの調整
価格が安い
ありふれたECクローン形状
ケーブルがやや固い
左右でクリック感の差が大きい (この手の左右非対称マウス全般に言える)
以上、Pulsar Gaming Gearのゲーミングマウス「Pulsar Xlite」のレビューでした。