「Cooler Master MM720」レビュー。独特なシェイプの小型軽量エルゴノミクスマウス
本稿では、Cooler Master(クーラーマスター)のゲーミングマウス「Cooler Master MM720」のレビューをお届けします。
ファーストインプレッション
ハイスペックながら低価格なことで話題を呼んだ前作「Cooler Master MM710」に続いて発表された、Spawn/Xornetの形状がベースとなった超軽量ゲーミングマウス「Cooler Master MM720」。存在自体は随分と前から明らかになっていた製品が、ようやく国内で入手可能となりました。
いくつかの見所を挙げるとすれば、替えがきかない唯一無二の形状、光学式のスイッチ・エンコーダー、水洗いが可能な撥水・防塵性能でしょうか。とても豪華な仕様に思えますが、実売価格は6,000円台と低価格なところがCooler Masterらしくて好印象。
ただし「求めやすいコスパ機」という位置づけではなく、かなり人を選ぶマウスであることは確か。この独特なシェイプと超軽量設計がもたらす軽快な操作性が合うか合わないか、見極める必要があります。
配信アーカイブ
製品仕様とスペック
カラー | ホワイト / ブラック | 表面処理 | マット / グロス |
---|---|---|---|
形状 | 左右対称 | サイズ | 76.52 x 105.42 x 37.35mm |
本体重量 | 49g | ボタン数 | 6つ |
センサー | PixArt PMW3389 | 解像度 | 最大16,000DPI |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 250IPS |
レポートレート | 1000Hz | LoD | 公称値2mm以下 |
プロセッサ | 32 bit ARM Cortex M0+ | オンボードメモリ | 512KB |
接続方式 | 有線 | ケーブル | パラコード/1.8m |
スイッチ | LK Optical Micro Switch (70M) | エンコーダー | LK Optical Encoder |
ライティング | RGB | ソフトウェア | 対応 |
メーカー保証 | 2年間 |
パッケージと内容物
簡素なパッケージ。マウス本体とケーブルの両方が納められるギリギリのサイズ。
内容物は MM720マウス本体、予備のソール1セット、取扱説明書。
パフォーマンス
形状と大きさ
小型サイズの左右対称ゲーミングマウス。寸法は76.52 x 105.42 x 37.35mm。
独特なシェイプは「Cooler Master Spawn」「Cooler Master Xornet」といった過去作がベース。
サイズはかなり小さめで、寸法はXornet IIと同じ。右サイドに備わったフィンガーレストによって、マウスの本体幅に合わせて指を折り込む必要はなく、自然なフォームのままグリップすることが可能。
角度を変えて少し上から撮影した様子がこちら。指を少し曲げた手で型を取ったような形状になっていることが、正面からのアングルから確認できるかと思います。
本体重量
公称値は49g(ケーブルを除く)、実測値は51.9g。
サイズが小さいこともあって非常に軽いです。独特なシェイプですが重量バランスに難はありません。
グリップ性能
表面には滑り止めコーティングが施されており、手触りはしっとりとしています。手が乾燥した状態だと滑りやすいですが、少し油分を含んだ状態では適度なグリップ感があります。
ハニカムシェルですが穴が小さいので、手のひらに感触が伝わりづらいです。
グリップテープは初期ロット30,000個限定で付属しており、以降はオプションとして9.99ドルで販売されるようです。Amazon.co.jpで購入した筆者のパッケージには付属していませんでした。
持ち方の相性
代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちとの相性は意外にも悪くなく、手の形に沿ってフィットします。右サイドのフィンガーレストによって、パーの状態に限りなく近い、自然なフォームで握り込むことが可能です。
ただし、MM720は全長が非常に短く、手のひらの手前側が完全に浮いた状態となります。またほとんどのマウスでは薬指・小指を折り込むことが一般的にもかかわらず、MM720は全ての指が伸び切った状態となるので、力が入りづらいです。よって、かぶせ持ちは手が小さい人向け。
つかみ持ち
本来は手のひらを軸に3本指で挟み込むようにしてグリップしますが、MM720は本体が軽くてサイドも逆ハの字になっているので、親指と小指を軽く引っ掛けただけの状態でも問題ありません。
また、一般的なマウスでは薬指と小指の2本が縦に並びますが、右サイドにフィンガーレストが備わったMM720では横並びになります。そのまま手を乗せたら馴染む、理想的なシェイプです。
つまみ持ち
つまみ持ちとも相性が良いです。つかみ持ちと同様、そのまま指でつまめば自然と馴染みます。
指の関節を使った細かなエイムと相性が良く、指先が器用な方に向いている印象。一般的なマウスよりも薬指と小指の細かな動きがマウスの動きに反映されやすいので、少なからず癖はあります。
スイッチ
メインボタン
7,000万回耐久の光学式マイクロスイッチ「LK Optical Micro Switch」を搭載しています。
光学式スイッチを搭載するメリットは、物理的接触が少ないという構造上、チャタリングが発生しづらく、それに伴ってデバウンスタイムを最小限に留められる(クリック応答が速くなる)こと。
クリック感については一癖あります。非常に軽い押し心地で、ストロークが短いです。また、遊びもほとんどないので、少し圧を掛けると一気に押し込まれます。光学式スイッチ特有の跳ね返りの弱さも。
少ない力で押し込める脱力状態でマウスを操作しないと誤クリックが目立つ印象。
サイドボタン
サイドボタンは小さめ。各ボタンともに中央部分が膨らんでおり、本体からしっかりと飛び出しています。ボタンの配置も適切で、どの持ち方でも両方のボタンに指が届きます。
押し心地はやや軽め。スイッチが反応する前後に若干の遊びがあり、誤爆防止の役割を果たしています。
ホイール
エンコーダーにも光学式の「LK Optical Encoder」が採用されています。
ホイールスクロールの抵抗は少なく、ノッチ感も非常に弱いです。少ない力でカラカラと回ります。柔らかいので連続したスクロールには適していますが、分離感がほぼ得られないので精度を欠きます。
ホイールはメインボタンから大きく飛び出しており、アクセスしやすいです。半透明のゴムリングは表面に細かな凹凸が刻まれており、指に適度に引っ掛かります。
ホイールクリックは一貫した押し心地ではあるものの固いです。その他のスイッチやホイールスクロールはすべて脱力した状態でも押し込めるので、かなりの違和感を感じます。
センサー
MM720のセンサーは「PixArt PMW3389」。採用例の多いPixArt社のハイエンドセンサー。もう見慣れてきました。主なスペックは 最大16,000DPI、最大加速度50G、最大速度400IPS。初期DPIは 400, 800, 1200, 1600, 3200, 6400, 16000 の7段階で、本体底面のスイッチで切り替えられます。
センサー配置はややフロント寄り。そこまで大きな差はありません。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
xCountsで多少の乱れが見られるもののxSumでの波形の破綻は見られません。『Apex Legends』と『League of Legends』で長時間使用しましたが、センサー挙動は良好です。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
「PureTrak Talent」上で計測した結果、MM720のリフトオフディスタンスは0.8mmでした。
マウスソール
白いPTFEソールが上下2か所に配置されています。これに関してはMM710から改善は見られず、布製マウスパッド上でわずかに圧を掛けるだけで引っ掛かりを感じます。
筆者の個体では、下側はエッジが処理されたソールだったのに対し、上側は全くの未処理でした。開封配信で視聴者からいただいた報告も参考にすると、個体によってぶれがあると考えてよさそうです。
パッケージに予備が1セット付属しています。
ケーブル
「Ultraweaveケーブル」 いわゆるパラコードケーブル。180cmと一般的な長さ。
標準で備わっているパラコードケーブルとしてはとても優秀で、柔らかさも軽さも目立ちます。それでも「Endgame Gear XM1」のケーブルの柔らかさにはわずかに敵わない印象。
根本は水平に備え付けられていますが、底面から数ミリ離れているので擦れることはありません。ただしケーブルとマウスパッドが接触するのを防ぐためにマウスバンジーは用意したいところ。
ビルドクオリティ
MM720はIP58が認められたゲーミングマウス。
- 防水性能:継続的に水没しても内部に浸水しない。8/8(最高)。
- 防塵性能:有害な影響が発生するほどの粉塵が内部に侵入しない。5/6。
最高等級の防水性能が認められており水洗いもOKです。これは回路基板へのコーティングと、通電しない光学式スイッチを採用することによって実現されています。
また、本体を強く握ってもたわみや軋みは確認できず、内部でしっかりと補強されていることを確認済みです。メインボタンは水平方向には一切動かず、ストローク時も同様です。
結論として、MM720のビルドクオリティは問題ありません。
ソフトウェア
MM720は、Cooler Master製デバイスの統合ソフトウェア「MasterPlus+」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
MasterPlus+:https://masterplus.coolermaster.com/
設定項目は キー・マクロ割り当て、200~16,000(100刻み)のDPI調整、2段階のリフトオフディスタンス調整、LEDライティングに関する設定、マクロの記録・保存など。
プロファイルは本体に5つまで保存できます。マウスボタンに割り当てて切り替えることも可能です。
「マウスコンボ」はオフ推奨
MM720は、ボタン数を超える最大9種類のキー割り当てを可能にする「マウスコンボ」に対応しています。コンボのオンオフ切り替えは右クリック+ホイールクリックを同時押しすることで行えます。
これは出荷時デフォルトで有効化となっていますが、「右クリックをホールドした状態でホイールクリックする」という動作が行えなくなります。一部ゲームタイトルで操作を妨げてしまうので注意。
実質、ソフトウェアのインストール必須なマウスということになります。
結論とターゲット
「Cooler Master MM720」について詳しく見てきました。どの持ち方でも手を乗せるだけで馴染み、指を折り込んだりする必要もなく自然なフォームを維持できます。とにかくサイズが小さく、かぶせ持ちではやや窮屈に感じますが、これはエルゴノミクスマウスの一つの完成形と言えます。
正直握り心地に関しては気に入っていないのですが、実際に戦績は向上しています。「手首から指先までに余計な角度がつかないぶん、他のマウスよりも素直に動かせているのではないか」というのが筆者の考察。
光学式スイッチの跳ね返りの弱さは許容範囲ですが、ホイールクリックの固さは難点であると言えます。他のボタンはどれも軽い力で押し込めるので、多少の力を要するのはホイールクリックのみ。脱力した状態を維持できないので、ホイールクリックを押し込む前後は操作の安定性に欠けます。
いくつかの難点はあるものの、ハマる人にはハマる唯一無二の形状を評価して★4.0。決して万人向けではなく一癖あることは間違いありませんが、少し気になる方はぜひ試してみてほしいです。
総合評価4.0 out of 5.0 stars
素晴らしいエルゴノミクス形状
超軽量デザイン
優れたビルドクオリティ
徹底された撥水・防塵性能
柔らかくて軽いケーブル
価格が安い
エッジ処理が甘いソール
緩いホイールスクロール
メインボタンの跳ね返りが弱い
ホイールクリックが固い
以上、Cooler Master(クーラーマスター)のゲーミングマウス「Cooler Master MM720」のレビューでした。
自分の個体はメインボタンが左右に動いてしまいますね
個体差でかいマウスかも