「NINJA RATMAT 菱 -BISHI- (試作品)」レビュー。メタルマウスソールは新たな選択肢となり得る

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「NINJA RATMAT 菱 -BISHI- (試作品)」レビュー。メタルマウスソールは新たな選択肢となり得る

本稿では、NINJA RATMATの金属製マウスソールNINJA RATMAT 菱 -BISHI-」試作品のレビューをお届けします。

レビューサンプル提供: NINJA RATMAT

メタルマウスソールについて

NINJA RATMATという日本製の金属製マウスパッドを販売するメーカーが、新たに開発しているのがメタルマウスソール「菱 -BISHI-」です。その特徴は以下の通り。

  • 鉄の6倍の強度を誇る 熱処理済み合金工具鋼 を使用
  • 高い耐久性・耐摩耗性
  • 特殊形状加工による滑り・ブレーキング効果
  • 板厚のばらつきが0.01mm以下

主流である 100%PTFE、PTFE、超高分子ポリエチレン、ナイロン66のようなマウスソールとの大きな違いは、とにかく摩耗しづらく耐久性に優れていること。もしこれが気に入るならば、長期間にわたって1セットを使い続けることも可能です。

当然ながらマウスソールには耐久性だけでなく優れた操作性も求められるため、本稿ではそのあたりについて詳しく掘り下げていけたらと思います。

サイズ展開

今回いただいた試作品は7×7×0.75mmですが、製品版に関してはサイズ・板厚のバリエーションを検討中とのこと。以下ツイートを参照。

パフォーマンス検証

今回、有難いことにメタルマウスソール「菱 -BISHI-」のサンプリングスタッフに選ばれ、いち早く使用感をチェックさせていただけることになっています。

本稿にてフィーリング・使用感を共有させていただきます。なお試作品とのことです。

検証環境

主にプレイしたタイトルは『VALORANT』『Counter-Strike: Global Offensive』『Apex Legends』『League of Legends』で、以下の2パターンで検証。後者が圧倒的に多め。

「BenQ ZOWIE ZA13」を楕円形ソールに貼り替え、その上からメタルマウスソールを重ね貼り
「Logicool G Pro Wireless」底面の出っ張りを”はがせて良カッター”で削ぎ、四隅にメタルマウスソールを貼り付け

基本性能は”コントロール寄り”

  • 初動:非常に軽い
  • 滑走:やや遅い
  • ストッピング性能:高い

※マウスパッドのスポンジ硬度や、どれほど沈み込ませるかによる

マウスソールの滑走面に使用されている主な素材は、フッ素樹脂(PTFE)、超高分子ポリエチレン、ナイロンなど。滑りやすさは以下の順となります。

100%PTFE > PTFE > 超高分子ポリエチレン > ナイロン66

メタルマウスソールは「マウスパッドの滑走面の影響を受けづらく、スポンジ硬度の影響を受けやすい」のが特徴で、そもそもPTFEや超高分子ポリエチレンとは性質が異なるため、上のどこかに配置するのが少し難しいです…。

ただ 初動が軽く、滑走はやや遅いことは確かに感じ取れます。超平面メタルマウスパッドのイメージが強いNINJA RATMATだからこそ「メタルマウスソールは滑りやすいものだ」と思ってしまいますが、実際にはコントロール寄りのマウスソールとなります。

メタルマウスソールの変わった特性

「メタルマウスソールは滑りやすいのか?」という話は一旦置いておいて、先にメタルマウスソールの特性について解説します。以下の3項目が挙げられます。

  • (PTFE製と比べて)滑走面の影響を受けづらい
  • (PTFE製と比べて)スポンジ硬度の影響を受けやすい
  • 滑らせる方向によって操作感が変わる

つまりメタルマウスソールは、これまで使い慣れていたマウスパッドの印象をガラッと変えてしまう可能性があると言えます。以下でもう少し詳しく掘り下げていきます。

1 滑走面の影響を受けづらい

メタルマウスソールは平面ではなく、点接触かつ十字型に出っ張っています。つまり、マウスパッドとの接地面積が少ないため、滑走面の影響を受けづらいです。

これは点接触ソールではよく言われる話ですが、メタルマウスソールではこの傾向がより強く感じられます。従来のマウスソールでは滑りが遅いと言われている、いわゆるコントロール系のマウスパッドも、メタルマウスソールとの組み合わせでは評価が違ってくる可能性があります。

2 スポンジ硬度の影響を受けやすい

スポンジが硬いほど滑りが速くなり、柔らかいほど滑りが遅くなる… これ自体は布製マウスパッドの特性として知られています。参考として、スポンジ硬度をMid, Soft, Xsoftの3種類から選べる国産マウスパッドメーカーArtisanが公開しているデータを以下に共有しておきます。

  • Mid – 滑走速度5, 移動安定性5, 止めやすさ3
  • Soft – 滑走速度4, 移動安定性4, 止めやすさ4
  • Xsoft – 滑走速度3, 移動安定性3, 止めやすさ5

ですが点接触のメタルマウスソールは少ない圧でもマウスパッドに沈むため、従来のソールと比べてスポンジ硬度の違いによる滑りの差が遥かに大きいです。さらに十字型に出っ張っているので、沈み込ませたときに強い抵抗感が生まれ、遅い滑りと引き換えに高いストッピング性能を得られます。

もちろん同じ点接触ソールである「エアーパッドソール AS-46」とも大きく異なります。あちらは全体的に丸みを帯びているため、スポンジに沈み込ませた状態でもある程度の滑りの速さを保ち、メタルマウスソールほどのストッピング性能は得られません。

3 滑らせる方向によって操作感が変わる

メタルマウスソールは十字状に浮き出ており、交わった中央が最高点となっている、四角錐に近い形です。点接触かつ面積が小さいので、布製マウスパッドの上で滑らせると少しの圧で沈み込みます。

沈み込んだ状態で滑らせたとき、平面になっている部分よりも浮き出た部分の方が強い抵抗を与えます。つまり意図的に、縦横に滑らせたときと斜めに滑らせたときでは滑りやすさが異なるように設計されているということですね。

NINJA RATMATはこの特性を活かして「ブレーキタイプ」「スピードタイプ」という2種類の貼り付け方法を謳っています。確かにこの2タイプ間では、滑らせたときの抵抗感が大きく異なります。

これは、ソールを貼る向きによって十字状に浮き出た部分の角度を調整することで、一定方向に滑らせたときの抵抗感を変えるという仕組みになっています。つまり、ブレーキタイプでも斜めに滑らせればスピードタイプと同等の条件となります。

正直なところ、縦横無尽なマウス操作を求められる『League of Legends』では違和感が生じます。また、LoLで一度この違和感を感じてからというものの、『VALORANT』のようなFPSをプレイしていても気になり始めました。そりゃあ滑りやすさが方向によって変わる訳ですから。

ただ、上記の『League of Legends』『VALORANT』やその他のタイトルを含めて数百戦にわたってテストした中では、この違和感が戦績に影響することはなく、メタルマウスソールを使用しても普段通りのパフォーマンスが発揮できています。あくまで感覚的な話で留まっています。

メタルマウスソールの最終評価

メタルマウスソール菱 -BISHI-を使用し始めて約3週間、感じたことを記しておきます。

率直な感想

  • 素直に使い続けたいと感じている。
  • 既存ソールとは特性が大きく異なるため、最初は少し困惑した。
  • しかし感覚的には「マウスパッドを変えた」くらいの変化で、すぐに慣れた。
  • 初動の軽さには驚かされたし、中間層が柔らかいマウスパッドと組み合わせたときの止め性能は髄一。
  • マウスを動かす方向による滑りの変化は3週間経った今も気になる。下方向に圧が掛かれば掛かるほど強く再現される。
  • 『VALORANT』のようなゲームと相性が良く、当面はLogicool G Pro Wireless、BenQ ZOWIE G-SRとの組み合わせで使い続ける予定。

長所

  • 圧倒的といっていい初動の軽さで、引っ掛かりを一切感じない
  • (マウスパッドのスポンジ硬度に強く依存するが) 滑走速度は少し遅めで、コントロール性に長けたマウスソールといえる
  • スポンジ硬度が柔らかいマウスパッドと組み合わせると強いストッピング性能を得られる (先細りしているのでわずかな圧でも沈み込みやすい)
  • 逆に、スポンジの硬いマウスパッドとの組み合わせでは非常に滑りやすい

懸念点

  • マウス底面のガイドの狭さによっては好みの角度で貼り付けられない ※底面研磨で解決できるが手間が掛かる
  • 沈み込みやすいゆえ、マウスに直接貼るとガイドがマウスパッドと接地する可能性がある (テスター向けの案内では”ソールの上に貼る”ことが推奨されていた)
  • ソール裏面の粘着性を保てるかが心配 (検証中に4,5回は貼り直しているが平気だった。両面テープを別途用意すれば解決可能)
  • 滑らせる方向によって滑りやすさが少し異なる ※特に斜め方向
  • 使用しているうちに先端の周囲が黒く汚れるため、布で拭き取るなど定期的な手入れが必要
  • 樹脂製ソールとは操作感が異なるため、あなたにとっての”ベストなゲーミングマウスパッド”自体を再考する必要がある

総評

「NINJA RATMAT 菱 -BISHI-」について詳しく見てきました。

優れた特性を一つピックアップするならば、マウスパッドの中間層の沈み込みによるストッピング性能が簡単に得られること。たとえ下方向への圧が掛かりづらいつまみ持ち(Fingertip Grip) でも、マウスパッドとの組み合わせ次第でしっかりとストッピング性能が付与されます。

通常、”ソールが沈んで摩擦感が増した”という感覚を得るには、それなりに力を込めてマウスを下に押さえつける必要があります。しかしメタルマウスソールは”点接触”で先細りしていることもあり、少ない圧でも簡単に沈み込んでいくという訳です。

しかしレビュアーにとってはこれが難しく「マウス操作時にどれだけ下方向に力を加えるか(どれほどソールがマウスパッドに沈み込むか)」が人によって大きく異なるため、操作感がプレイスタイルによって左右されすぎるのです…。

そして価格設定は”頑張れば学生ゲーマーでも購入出来る金額”、具体的には1万円以上とのこと。この価格に関しては個人的に納得しており、むしろ耐久性が高いため、長期的に見ればコストパフォーマンスは良いのではないかと思います。

間違いなく気軽に試せる金額ではないですし、特定マウスパッドとの組み合わせでの操作感が想像しづらい特殊なマウスソールとなると、購入する動機が高まりづらいのは確かですが、NINJA RATMAT 菱 -BISHI-は間違いなく新しい選択肢となり得ます

メタルマウスソール  菱 -BISHI-に関するQ&A

  • 基本的な仕様
  • Q. 素材は?
    鉄の6倍の強度を誇る 熱処理済み合金工具鋼 を使用。
  • Q.サイズ・厚さは?
    試作品は7×7×0.75mm。マウス底面のガイドが狭い場合、好みの角度で貼り付けられない可能性有り。
    製品版では0.65mm厚や、より小さいサイズも検討中とのこと。
  • Q.形状は?
    平らになっている一般的なマウスソールとは異なり、十字型に出っ張った四角睡のような形状。マウスパッドとは点で接触する。
  • Q.貼り付け方法は?
    マウスソールの上から貼り付けるか、底面研磨orソールのガイド線を「はがせて良カッター」などで削いでから貼り付け。
  • 使用感
  • Q.耐久性は?
    約3週間前の到着から毎日欠かさず12時間前後は使用していますが、ソールの摩耗は一切確認できません。
  • Q.手入れは必要?
    布製マウスパッドに付着した汚れが溜まっていき、ソール先端の周囲が黒くなってきます。特に滑りの変化は感じませんでしたが、念のため定期的に布で軽く拭き取っています。
  • Q.マウスパッドへのダメージは?
    一切確認できません。
  • Q. PTFEより滑る?
    マウスパッド中間層の硬度によるが、ほとんどの場合はPTFEよりも初動が速く、滑走速度は遅い
  • Q. どんなゲームに適している?
    どのようなジャンルもOK。ただし動かす方向によって滑りやすさが少し異なるため、繊細な人ならば『Apex Legends』『Overwatch』などマウスを縦横に激しく動かす必要のあるゲームで違和感が生じるかもしれない。
    ただ縦横で滑りが異なるマウスパッドもあるくらいなので、筆者個人としては大した問題とは思っていない。
  • Q. どんな人に向いている?
    メタルマウスソールの先細りした形状はマウスパッドの中間層に沈み込みやすく、マウス操作時にどれだけ下方向の圧を掛けるかによって操作感が大きく変わってくる。一概には言えないが、脱力したつまみ持ちでもストッピング性能を得られるのでお勧め。
  • よくある質問
  • Q.ベストな組み合わせは?
    コントロール性に長けたマウスパッドが好みな筆者としては、BenQ ZOWIE G-SRとの組み合わせが至高。G-SRはとにかく遅い滑りの滑走面で知られるマウスパッドですが、実は中間層も柔らかいので沈み込みによる止めやすさをより強く感じられます。
  • Q.価格は?
    1万円以上だが、”学生でも頑張れば購入できる値段”とのこと

以上、NINJA RATMATの金属製マウスソールNINJA RATMAT 菱 -BISHI-」試作品のレビューでした。

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この記事を書いた人

ミオニ
eスポーツ向け ゲーミング周辺機器のレビュアー
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