「Trust Gaming GXT 144」レビュー。腕や手首への負担軽減を謳う”縦型”ゲーミングマウスの操作性はいかに
本稿では、Trust Gaming(トラストゲーミング)のゲーミングマウス「Trust Gaming GXT 144」のレビューをお届けします。[toc heading_levels=”2,3,4,5″]
Trust Gaming GXT 144 レビュー
本稿では、オランダのゲーミングデバイスメーカーTrust Gaming(トラストゲーミング)のゲーミングマウス「Trust Gaming GXT 144 Rexx」のレビューをお届けします。本製品は、エルゴノミクスデザインを採用した”縦型ゲーミングマウス”。
パソコン周辺機器には、人間工学に基づいて疲れづらい設計を採用したエルゴノミクスデザインの製品が多く存在し、GXT 144はその一種となります。また、ゲーミングデバイスメーカーからリリースされたこと意味として、”ゲームプレイに耐えうる性能”を備えていることは必須条件と言えます。
外箱に記載された製品特徴によると、最大10,000dpiに対応するオプティカルセンサー、腕と手首の疲れを最大限に抑えるエルゴノミクスデザイン、幅広い設定が可能なソフトウェアに対応しているとのこと。
エルゴノミクスデザインによる疲労を軽減する効果は感じられるのか、また持ち方や操作への違和感は出ないのか。またセンサーの精度やソフトウェアの設定はしっかりとゲーマーの求める基準を満たしているのか、本稿にて詳しくチェックしていきたいと思います。
形状、重量
GXT 144の本体重量は公称値101g、実測値98.3gでした。ゲーミングマウスではエルゴノミクスの縦型形状の前例がないため、他製品と比較することはできませんが、通常のゲーミングマウスと比べるならばごく一般的な数値です。重すぎず軽すぎない、どんなユーザーでも扱いやすい重量と言えるでしょう。
やはり特筆すべきは独特な形状で、初見の筆者からすればどの角度から見ても不思議と言わざるを得ません。これは手を縦にして持つための設計で、本体を握ったときに自然なフィット感を得られることから、腕や手首への負担を軽減する効果が期待できます。
さまざまな角度から形状を確認して分かるのは、サイド部分の窪みは親指・薬指・小指を配置するためのガイドとなっていること。一般的な形状のマウスと比べて本体が大きい分しっかりと握り込めるので、持ち方を選ばないと言えるでしょう。
各ボタンについても、無理なく届く範囲に配置されている印象を受けます。メインスイッチやホイール部分は一般的なマウスと同様にまとまっており、サイドボタンは親指が当たる部分のそばに配置されています。
裏面には、小さめのテフロン製のマウスソールが四隅の形状に合わせて4つ張り付けられています。マウスパッド上での滑り心地については特に違和感が無く、一般的な滑りやすさのものであると考えていいでしょう。
ファーストインプレッションとして、重量に関してはごく一般的な数値でした。注目したいのは人間工学に基づいて設計されたというこの独特なエルゴノミクス形状。果たしてゲームプレイでの操作性はいかほどのものなのか、また腕や手首への負担軽減はどれほどの効果をもたらすのかが気になるところ。
パフォーマンス
持ち方の相性
前置きとして、エルゴノミクスデザインの縦型ゲーミングマウスに関しては触れた経験が無いため、読者の方には”初めて触った感想・気になる点”を素直にお伝えできるかと思います。
縦型ゲーミングマウスのGXT 144は手の形状に合わせて深く握り込むための設計となっているので、持ち方はユーザーによって変化しづらいと言えるでしょう。一般的なゲーミングマウスでは、かぶせ持ち、つかみ持ち、つまみ持ちとユーザーそれぞれに適した形状を選ぶ必要がありますが、GXT 144はほとんどのユーザーが同じ持ち方で違和感なく握れる形状に仕上がっています。
左サイド部分は親指をゆったりと配置でき、右サイド部分には薬指と小指を配置するためのガイドとなる窪みがあるので、自然な手の形を維持したままマウスを操作することができます。GXT 144のフィーリングとしては、ゲームのコントローラーを握る感覚に近いと感じました。
早速GXT 144を使用してゲームをプレイしたところ、意外にも自然にマウスを操作することが可能でした。MOBAというジャンルの特性上、操作量の多い『リーグ・オブ・レジェンド』は難なく操作できましたが、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』や『Battlefield V』といったFPS/TPSはやや操作にてこずりました。大多数のユーザーが一般的なマウスに慣れていると思うので、やはり精密なAIMを実現するには時間を掛ける必要がありそうです。
またGXT 144を作業やゲームプレイに3日間ほど使い込んだところ、確かに腕や手首への負担は和らいでいると感じました。自然な手の形を維持したままマウスを操作できるので、1日に10時間以上にもわたるパソコン操作を行っても、普段より疲れを感じません。
ソフトウェア
GXT 144はソフトウェアに対応済みで、マウス操作に関するさまざまな設定を行うことができます。ソフトウェアは、Trust Gaming公式サイトのGXT 144製品ページの下部よりダウンロードして入手することが可能です(入手はこちらから)。
設定項目をざっと羅列すると、DPI変更、LEDライティング、マクロ記録と割り当て、各ボタンへのキー割り当て、マウス加速やポーリングレート調整など。また設定プロファイルは5種類まで保存でき、プロファイルの切り替えをボタンに割り当てておくことも可能です。
マウス感度は100~10,000DPIを100刻みで調整できるので、ゲームプレイに使用しているであろう数値は全てカバー済み。また、搭載された6つのボタン全てにキー/マクロを割り当てることが可能で、一般的なゲーミングマウス(サイドボタンとホイールのみ)と比べてボタンが1つ多いのも嬉しいポイント。
センサー精度
GXT 144は、正確なトラッキングを実現する最大10,000DPIの光学センサーを搭載しているとのこと。しかし、センサーの型番は明らかにされていません。例のごとく、Mouse Testerを使用してセンサーの精度を検証しました。水平方向にマウスを動かした際に正確なトラッキングができるかをテストするソフトウェアで、点が綺麗にラインに沿っていれば精密であるということを示します。
テスト環境によって結果が前後してしまうので、あくまで参考程度と前置きさせていただきます。一般的にゲームプレイに用いられるであろう4種類の解像度400 / 800 / 1600 / 3200cpiで、ゲーミングマウスパッド「Xtrfy GP2」を使用してテストを実施した結果は以下の通り。
400cpiに設定時、マウス操作の方向転換時に若干のブレが見られました。何度か計測しても同様の結果だったため、低解像度での精度がやや甘いと言えるでしょう。その他、800 / 1600 / 3200cpiでは非常に安定した挙動で、センサーの精度は良好であると言えるでしょう。ポインタ飛びなどの異常な挙動も見られず、FPSやMOBAで求められる精密なマウス操作に耐えうるセンサー性能です。
スイッチ周りの調整
GXT 144のスイッチ周りの調整について。それぞれのスイッチの型番については明かされていません。
左右メインスイッチのクリック感はごく一般的な固さで、跳ね返りも強いことから連打しやすい良好なセッティング。クリック音はカチカチと鳴ります。サイドボタンの固さとクリック音もメインスイッチ同様です。ホイールは柔らかめで回した回数が分かりやすく、滑らかに操作することができます。
ホイールクリックは誤爆しづらい丁度良い固さとなっています。左メインスイッチ側に搭載されたDPI変更ボタンは、誤爆防止の観点からかやや固めの調整となっており、クリック音はパタパタと鳴ります。
実際にスイッチ周りの調整をゲームプレイにて検証したところ、それぞれのボタンは的確に操作することができ、クリックの連打も容易に行えます。誤爆してしまうといった心配もありません。しかし、現時点での最新ドライバーでの動作ではボタンの複数同時押しに対応していないという問題点が見つかりました。例えば左クリックを維持したままサイドボタンを操作しても反応せず、これではゲームタイトルによってはかなりの支障が出てしまう可能性が大。
ちなみに、GXT 144のマウスケーブルは斜め上に伸びているので、マウスパッドと接触してしまう心配はありません。コードはそこまで柔らかい素材ではありませんが、マウスバンジーを併用すれば気にならないレベルであると言えるでしょう。このような細かな配慮は嬉しいポイントです。
結論として、特段いずれかのスイッチが固いといった問題もなく、GXT 144のスイッチ周りの調整自体はゲームプレイに適したセッティングでした。しかし前述の通り、”ボタンの複数同時押しに対応していない”という点はゲーマー向けマウスとして致命的な問題であると言えるでしょう。今後、ドライバーのファームウェアアップデートにて対応されると良いのですが、現時点で生じているこの問題だけでも優れたゲーミングマウスであると言うことができないのが正直なところ。
一つの欠点を除けば魅力的な製品だけに、惜しい
Trust Gamingのゲーミングマウス「GXT 144」のレビューをお届けしました。総評として、エルゴノミクス形状の縦型ゲーミングマウスの最大のメリットである”腕や手首の負担軽減”という面では多大なる効果を得られる製品であることは間違いありません。各ボタンの配置も適切なもので、自然な手の形のままストレス無くマウス操作を行うことができます。
最大10,000DPI対応のセンサー精度は、400cpiなどの低解像度に設定した際にやや不安定になるものの許容範囲で、それ他の800~3200cpiでは非常に安定した挙動を見せてくれました。ソフトウェアでは6ボタンへのキー/マクロ割り当てをはじめとした、ゲーミングマウスに必要な各種設定が揃っています。また、スイッチ周りの調整もゲームプレイに適したものとなっています。
しかし致命的な欠点として、現時点の最新ドライバーではボタンの複数同時押しが不可能となっています。左右どちらかのクリックをホールドしたままの状態でサイドボタンを押しても反応せず、一部のゲームタイトルでは普段通りの操作が行えませんでした(例:フォートナイトでの建築)。左右クリックいずれかとサイドボタンを同時に押す機会が無いのであれば、ゲーム操作に関して問題は生じません。
結論として、GXT 144は確かに腕や手首の負担を軽減してくれ、ゲームプレイに耐えうる性能も兼ね備えています。ただ一つ、ボタン複数同時押しが不可能という欠点を除けば、とても魅力的なゲーミングマウス。しかし、現時点では不完全な製品であると言わざるを得ません。その他の仕様は満足いくものだっただけに残念ですが、こればかりは今後のファームウェアアップデートにて修正されることを願うしか無さそうです。
以上、ゲーミングマウス「Trust Gaming GXT 144」のレビューでした。