ASUS ROG Harpe Ace レビュー
本稿では、ASUSのゲーミングマウス「ASUS ROG Harpe Ace Aim Lab Edition」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: ASUS JAPAN
レビューを動画で見る
この製品について
ASUS ROG Harpe Aceは、ASUS初のE-Sports向けゲーミングマウス いわゆるフラッグシップ機です。Aim LabのeSportsプロと共同開発されたオリジナル形状、ミディアムサイズながら54グラムの軽量設計などを特徴としています。
製品仕様とスペック
カラー | ブラック | 表面 | マット |
---|---|---|---|
形状 | 左右対称 | サイズ | 63.7 x 127.5x 39.6mm |
本体重量 | 54g | ボタン数 | 5つ |
センサー | ROG AimPoint | 解像度 | 最大36,000dpi |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 650IPS |
ポーリングレート | 最大1000Hz | エンコーダー | – |
デバウンス | – | スイッチ | ROG 70M Mechanical Switch |
接続方式 | 2.4GHzワイヤレス | ケーブル | パラコード |
ソール | 100%PTFE | ライティング | 搭載 |
ソフトウェア | 対応 | メーカー保証 | 1年間 |
パッケージと内容物
ASUS ROG Harpe Aceのパッケージの内容物は以下の通りです。
- マウス本体
- USB Type-C to USB Type-A ケーブル
- 延長アダプタ
- USBレシーバー
- グリップテープ
- マウスソール
- 取扱説明書 / ステッカー
パフォーマンス
接続とバッテリー
接続方式
ASUS ROG Harpe Aceは2.4GHzワイヤレス・Bluetoothに対応しています。
付属のUSBレシーバーをPCに接続し、マウス底面のスイッチを下側に切り替えると2.4GHzワイヤレス接続で動作します。延長アダプタとケーブルが付属しており、マウスとレシーバーの距離を近づけて使用できます。
延長アダプタはクリップになっていてマウスパッドに固定できます。検証中、ワイヤレス接続で正常に動作し、長時間連続で使用していても不具合は発生しませんでした。
マウス底面のスイッチを上側に切り替えるとBluetoothモードになり、左にある「PAIR」と書かれたペアリングボタンを押すと「ROG HARPE A」という名前で検出可能になります。多少の遅延は感じるものの作業用途では問題なく使用できます。
バッテリーと充電
ASUS ROG Harpe Aceのバッテリー持続時間はLED消灯時で最大90時間、デフォルトのLED点灯時で最大79時間です。これは他社製のフラッグシップ機とほぼ同じ長さで、こまめに充電する必要がなく快適に使用することができます。付属のUSB Type-Cケーブルによって短時間でのバッテリー充電が可能です。
マウスを動かさないまま一定時間経つとスリープモードに移行し、余計なバッテリー消費を防ぐことができます。バッテリー充電中に有線マウスとして使用する場合は、マウス本体底面のスイッチを真ん中に合わせる必要があります。
ビルドクオリティ
ASUS ROG Harpe Aceは高いシェルの組み立て精度・強度を備えています。トップシェルとサイドシェルの継ぎ目はあまり見えず、マウスを強めに握ってもカタついたり軋んだりしません。ソリッドシェル採用・わずか54gのミディアムサイズのマウスとしては非常にうまく設計されていると思います。
本体を激しく振ると音が鳴ります。これはホイールの機構に隙間があることが原因で、ホイールリングを指で動かすと横にカタついて異音を発します。普通に使用していても水平方向に少し力が加わったときに再現されるので大半の方は気になるかと思います。新ロットで改善されることを願います。
グリップ性能
ASUS ROG Harpe Aceのグリップ性能は低いです。表面は少しザラザラとしていてチープな質感です。触った部分には跡が残りづらく、汗や皮脂による汚れは目立ちづらいですが、グリップ性は得られません。手が乾燥していても手汗をかいていても滑りやすいです。グリップテープ等での対策は必須になります。
マウスの形状に合わせてカットされたグリップテープが付属しており、メインボタンと両サイドに貼り付けられます。厚さは実測値0.48mmです。十分に滑り止めの機能を果たしてくれますが、この手のグリップテープは多量の手汗によってグリップ性が弱まるので注意が必要です。
本体重量
ASUS ROG Harpe Aceの本体重量はメーカー公称値54g、実測値が54.4gでした。ほぼ公称値通りです。
ソリッドシェルを採用したミディアムサイズのワイヤレスマウスとしてはかなり軽量です。大手メーカーのフラッグシップ機は60g前後のものが多く、それらと並べても一回り軽めに設計されており、ASUSの技術力の高さが感じられます。
重量バランス
重心はセンサー付近、ほぼ中心にくるよう調整されています。大半のゲーミングマウスはこれと同じように重心が中央辺りに調整されているので、他のマウスから乗り換えても違和感は出づらいと言えるでしょう。また重量バランスに優れており、サイズが大きいものの偏りはありません。
形状と大きさ
ASUS ROG Harpe Aceの寸法は63.7 x 127.5x 39.6mmでミディアムサイズに分類できます。
本体を横から見ると全体的に平べったくZOWIE S seriesのような傾斜の作り方に見えますが、さまざまな角度から見ると細かく造形されていることが分かります。最も背が高いのは真ん中よりやや後ろ辺りではあるものの本体後部ギリギリまで高さが残されていることに加え、コブの真ん中が若干盛り上がっているので、手のひらへのホールド感が強く感じられます。
両サイドのカーブはかなり緩やかで、わずかな逆ハの字になっているもののほぼ垂直に近く、指先で支えるよりも親指の腹で支えたり薬指を縦に置くのに適した形状です。また、左右非対称マウスは本体後部の幅が大きく広がっているものが大半ですが、ROGG Harpe ACEは最も幅の広い本体後部と最も狭い真ん中やや奥との差がかなり少なく、かなり細長い印象を受けます。
ホイールが実装されている位置がやや浅いことから分かるように、かなり深めにグリップする方でない限り先端部分に指を配置することはありません。ほとんどの方にとって先端に近い部分はデッドスペースになりそうです。
Fnatic Bolt 比較
ASUS ROG Harpe Aceをつかみ持ちでグリップするとFnatic Boltをやや大きくしたものという印象が強いです。これは本体後部のコブの形状がそれなりに似ていることが理由かと思われます。また、両サイドの指先がくる位置がほぼ水平なことも共通しています。
Logicool G PRO X SUPERLIGHT 比較
「Logicool G PRO X SUPERLIGHT」も本体後部ギリギリまで高さが残されている左右対称マウスの一つですが、横から見たときの傾斜の作り方が全く違います。また、G PRO X SUPERLIGHTは本体後部のコブが丸みを帯びていますが、ROG Harpe Aceは真ん中が尖っていて手のひらへ当たったときの感触が異なります。
BenQ ZOWIE ZA13-C 比較
本体後部が盛り上がった左右対称マウスと言えば「BenQ ZOWIE ZA13-C」が挙げられますが、そこまでROG Harpe Aceの本体後部の膨らみは大きくありません。
持ち方の相性
前置き:筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちとは相性が良くありません。
つかみ持ち
つかみ持ちとは非常に相性が良いです。つかみ持ちは推奨サイズがぐっと広まり、かなり手が大きめの方でも扱えるサイズ感です。筆者のような平均的な手の大きさだと大きく感じます。
本体後部のコブは真ん中が盛り上がっていて、手のひらでしっかりと支える深めのグリップに適しています。逆に手のひらに当たる面積が少ないと不安定になってしまうので、浅めにグリップする場合はしっくりとくるポジションが見つかりづらいです。両サイドはほぼ水平でカーブが緩やかなので、指先よりも指の腹で支えるなど接地面積を広めに確保したほうが安定します。思ったよりも持ち方が限定されてしまう印象です。
つかみ持ちで考えられる範囲ではメインボタンの押し心地にはほぼ変化なく、どの深さでグリップしても快適です。サイドボタンやホイールの配置も適切で、どちらにも指が届きやすいです。深めにグリップする場合、他のマウスよりもホイールが気持ち手前側に搭載されているように感じますが、そこまで違和感はありません。
つまみ持ち
つまみ持ちとは形状自体の相性は悪くないものの、深めにグリップしないと快適に操作できません。
サイドボタンやホイールには問題なく指が届きますが、このマウスの設計上、全長に対してメインボタンが占める割合が少なく、かなり浅めにグリップするとメインボタンに指が届かなくなります。そのうえ、ホイールより手前側で押し込むと押下圧と跳ね返り感が増して詰まったような感触になるので、ある程度深めにグリップすることを強いられます。
また、表面のグリップ性が著しく低いのでグリップテープ等による対策が必須になります。
スイッチ
メインボタン
メインボタンのマイクロスイッチにはROG 70M Micro Switchが採用されています。これはROGが独自に手掛けるスイッチで、7000万回耐久、個体差が出ないよう偏差が±5g以内に抑えられています。
押し心地は固くもなく柔らかくもなく。プリトラベル・ポストトラベルともに程よく、最低限の力で押し込めます。ただ、バンプ以前の跳ね返りが強いものの押し込んだ後に弱まるので、意識して指の力を抜かないと連打しづらい印象です。
メインボタンが分離したセパレート設計になっていますが、ホイールの真横辺りから押下圧と跳ね返り感が増し、手前側にいくにつれて詰まったような感触が強くなります。実際にグリップする場所に対してメインボタンをやや上側に寄せている構造のせいか、本来のフィーリングで押し込める範囲が狭いです。浅めのつかみ持ちやつまみ持ちで支障が出てしまい、持ち方の幅を狭めてしまっているので、あまり良い設計とは言えません。
サイドボタン
サイドボタンは小さめのAim Labsカラーで、本体から程よく飛び出しています。エッジは面が取られていて、親指が当たっても痛くなく引っ掛かりません。ボタンの配置は適切で、かなり浅めのつまみ持ちを除けば両方のボタンに指が届きます。
押し心地は固くもなく柔らかくもなく。奥側はカチッと歯切れがよく、手前側は若干ポストトラベルが長いです。押し心地は悪くなく、FPSでキャラクター操作にかかわる重要なキーを割り当ててもうまく機能します。
ホイール
ホイールは本体からわずかに飛び出しています。ゴムリングに入った斜めの切り込みは適度に指に引っ掛かり回しやすいです。
回し心地はやや軽めでハッキリとしたノッチ感があり、しっかりと分離感が得られます。連続したスクロール・1ノッチ単位の細かな操作が求められるシーンどちらにも適しており、ジャンプなどキャラクターコントロール関連のキーをバインドしても快適です。
ビルドクオリティの際に触れたように、筆者の個体では若干でも水平方向に力が加わるとホイールリングが左右にカタつきます。新ロットで改善されることを願います。
ホイールクリックはやや軽め。筆者の場合は問題ありませんでしたが、ゲーム操作中にホイールを多用したり指に力が入ってしまいがちな方だと、ホイールに指を伸ばしたときに勢い余って誤クリックといったことも考えられそうなので注意が必要です。クリック時のフィーリングはあっさりめで、指先に程よくフィードバックが返ってきます。頻繁に使用するキーをバインドしても快適です。
センサー
ASUS ROG Harpe Aceは、DPI偏差1%未満を謳う超高精度なセンサー「ROG AimPoint」を搭載しています。最大36,000DPI、最大速度650IPS、最大速度50Gに対応。初期DPIは400 – 800 – 1600 – 3200の4段階で、本体底面のDPIボタンを押すと切り替わります。
センサーの挙動を可視化するツール「Mouse Tester」での検証に加え、『VALORANT』と『Apex Legends』でもプレイテストを行った結果、センサーが正常に動作していることを確認できました。
* 付属の延長アダプタ・ケーブルを使用し、マウス本体とUSBドングルを近付けた状態で検証。DPIは400, 800, 1600, 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッドは「BenQ ZOWIE G-SR-SE Rouge」。環境によって結果が変動する可能性があるので、あくまで参考程度にお願いします。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
Motion Syncは常時有効化されており、ユーザー側で無効化するオプションはありません。
センサー遅延
このxCountグラフはASUS ROG Harpe Ace(青)にRazer Viper V2 Pro(青)をぶつける瞬間を記録して、片方のマウスの移動速度が急激に低下するタイミングともう片方のマウスが動き出すタイミングからセンサーの遅延を割り出したものです。どちらもMotion Syncがデフォルトで有効化されている機種で、ポーリングレートは1000Hzです。
複数回計測した結果、あからさまなセンサーの遅延は確認できませんでした。ROG AimPointセンサーを制御するファームウェアに問題は無いようです。
センサー位置
ASUS ROG Harpe Aceのセンサーはマウス本体の真ん中よりもやや後ろ側に搭載されています。
筆者がつかみ持ちでグリップしたときのセンサー位置は、「Logicool G PRO X SUPERLIGHT」よりもやや後ろ側、「Razer Viper V2 Pro」よりもやや前側、「Vaxee XE Wireless」とほぼ同じといった具合でした。
* センサーの位置が変わると、手首を支点にしてマウスを動かしたときのカーソルの移動量に差が出ます。一般的には、手首の動きを細かく捉えられることから、センサーが真ん中よりも前側に寄っているものは優れているとされており、後ろ側に寄ったものは好まれない傾向にあります。
マウスソール
ASUS ROG Harpe Aceにはデフォルトで四隅に4枚のソールが貼り付けられています。材質は100%PTFEで、厚さは実測値0.75mmでした。
エッジはごっそりと面取り加工されていて、角が丸まっているタイプよりも滑らかで滑走面が粗かったり中間層や柔らかいマウスパッドと組み合わせても引っ掛かりづらいものです。操作感はスピード重視で、初動がスムーズで滑りも速いです。標準ソールとしてはとても優秀です。面積が小さいソールにしては沈み込んだときの抵抗感が得られづらいです。
交換用マウスソールが1セット付属しています。こちらは前側が面積の広いソールになっており、デフォルトの面積が小さいものよりも沈み込みづらく滑走の安定性が高まります。マウスパッドの種類や操作感の好みに合わせて選択しましょう。
設定・ソフトウェア
ASUS ROG Harpe Aceは、ASUS製デバイスの統合ソフトウェア「Armoury Crate」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
Armoury Crate:https://www.asus.com/jp/supportonly/armoury%20crate/helpdesk_download/
UIがあまり綺麗ではなく、初見ではどの設定はどこに配置されているか分かりづらいです。
基本的な設定項目に加え、リフトオフディスタンスに関する設定、表面のキャリブレーションが行えます。
Aim Labの専用タスクをクリアすると自動で分析してマウス設定を提案してくれる「Aim Lab Setting Optimizer」に対応するのも面白い試みではありますが、一度試してみたところ完全に初心者向けといった印象で、既に感度や設定を決めている方にとって効果的とは思えない内容でした。AIM練習ソフトとのコラボレーションは興味深いものとは思いますが、機能自体はおまけ程度のものです。
結論とターゲット
大手メーカーのフラッグシップマウスには万人向けの形状が採用されることが多い中、「ASUS ROG Harpe Ace」は本体後部に程よい高さのコブがあり、手のひらでしっかりと支える深めのつかみ持ちに適した形状となっています。ある程度ターゲットを絞っていることからも本気度が伝わるのですが、手のひらが触れる面積が狭かったり指の付け根で支える場合は違和感が出やすいなど、想像以上にグリップスタイルが限られます。意図した設計かは定かではありませんが、メインボタンが深めで押し込むのに最適化されていることからも徹底されているように感じます。
形状さえ合ってしまえばとても良い選択肢になることは間違いありませんが、手の大きさや指の長さの違いによって合わない場合に他のマウスのように持ち方を微調整して改善するのが難しいという点には注意が必要です。筆者の場合、指が若干長いのに対してマウスの本体幅が狭いために薬指と親指の関節を必要以上に曲げる必要があり、操作の安定性に欠ける印象でした。関節の柔軟さにもよりますが、指が長い方や手の幅が広い方にはあまり合わないのではないかと思われます。
ミディアムサイズ・ソリッドシェルでわずか54グラムながら高いシェルの組み立て精度・強度を実現しておりビルドクオリティは概ね良好ですが、水平方向に力が加わるとホイールリングが左右に数ミリほどカタつくのが気になります。ここ以外は非常に安心できる造りなので新ロットで改善されてほしいところ。
結論としてASUS ROG Harpe Aceは、手のひらでしっかりと支える深めのつかみ持ちに慣れていて、BenQ ZOWIE S2やFnatic Bolt、ROCCAT Burst Proなどの形状が好みな方にお勧めです。ミディアムサイズとしては軽量な54グラムなので、軽さを重視する方にとって良い選択肢となります。
総合評価4.0 out of 5.0 stars
安定した2.4GHzワイヤレス
シェルの成形精度・強度が高い
最大90時間持続するバッテリー
軽量設計/適切な重量バランス
高品質なソール
サイドボタンがややチープ
表面のグリップ性が低い
以上、ASUSのゲーミングマウス「ASUS ROG Harpe Ace Aim Lab Edition」のレビューでした。