「EPOS GTW 270 Hybrid」レビュー。aptX LL対応、ゲームプレイにも適した低遅延な完全ワイヤレスイヤホン
本稿では、EPOS|SENNHEISER(イーポス・ゼンハイザー)の完全ワイヤレスイヤホン「EPOS GTW 270 Hybrid」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: EPOS
ファーストインプレッション
今回は、ゲーミング用に設計された完全ワイヤレスイヤホン「EPOS GTW 270 Hybrid」をチェック。完全ワイヤレスイヤホンといえば持ち運びに便利なアイテムですが、ゲーマーの生活にも馴染みやすい設計となっているため、より幅広い用途で使用できます。
Bluetoothに対応している機器はもちろん、付属のUSB-CドングルとUSB-A変換アダプター(1.5m)によってPCやPS4/PS5、Nintendo Switchなどあらゆる機器に接続可能です。また、USB-Cドングル接続時には”遅延が40ms(0.04秒)未満”という「aptX LL(低遅延モード)」に対応。
最大連続5時間再生というバッテリー持続時間こそネックですが、ライフスタイルによっては外出時の音楽鑑賞から帰宅後のゲームプレイまでフル活用できる製品となっています。
製品仕様とスペック
タイプ | カナル型 | 構造 | ダイナミック、密閉型 |
---|---|---|---|
接続 | 低遅延 / Bluetooth | 接続端子 | USB-C |
ケーブル長 | 1.5m | 互換性 | ドングル:Nintendo Switch, Android, PC, PS4 イヤホン:Bluetoothデバイス |
周波数特性 | 20~20,000Hz | 音圧レベル | 100dB |
マイク周波数特性 | 100~7,500Hz | 指向性 | 無指向性 |
感度 | -20dBV/Pa | 防水 | IPX5防水 |
バッテリー | イヤホン最大5時間再生 充電ケースで最大20時間まで延長 |
充電時間 | フル充電:イヤホン1.5時間 ケース1.75時間 高速充電:ケース内で15分間の充電後、イヤホン60分連続使用可能 |
パッケージと内容物
パッケージはマグネット式で開閉できます。
内容物は GTW 270 Hybridイヤホン本体、充電ケース、USB-Cドングル、ドングル用キーホルダー、イヤーチップ(合計4種類)、USB-A変換アダプター(1.5m)、Type-C充電ケーブル。
パフォーマンス
ビルド
全体的に価格相応の造りです。安っぽさは感じません。
充電ケースは頑丈なアルミ製で、とても高級感があります。ただし、鍵など金属同士で擦れ合うと傷がついてしまう可能性があるので、取り扱いには注意したいところ。
イヤホンはプラスチックとアルミで構成されており、わずか6gの軽量設計です。
接続
GTW 270 Hybridは2つの接続方法があり、あらゆるデバイスに対応しています。
- USB-Cドングル:PC、Nintendo Switch、Android、PlayStation 4 (PS5)
- Bluetooth:スマートフォンをはじめとする、すべてのBluetooth対応機器(最大8台)
USB-A変換ケーブル(1.5m)が付属しているので、USB-Cポートを搭載していないデバイスでも問題なく使用できます。
Bluetooth接続の場合、充電ケースの前面にあるボタンを5秒間長押しするとペアリングモードに移行します。一度接続すると、イヤホンをケースから取り出したときに自動で接続してくれますが、筆者の環境では約5秒ほど要します。
USB-Cドングルでの接続は瞬時に認識します。
ちなみに、Bluetoothを認識するのは右のイヤホンのみです。また右のイヤホンを耳から外すと、両方の音が一時停止されます。周囲の音やアナウンスを聞き逃したくないときに便利です。
遅延は体感できるのか
USB-Cの低遅延モードは、遅延が40ms(0.04秒)未満の「aptX LL」コーデックです。LLとはLow Latency(低遅延)の略で、高音質かつ低遅延を実現した規格となります。
PCで『Apex Legends』をプレイしていて、先入観から「遅れているかも?」と不安に感じることはあっても、明らかな遅延を体感したり、不利になるようなシーンはありませんでした。
しかし、FPS/TPSにプロレベルで取り組んでいる場合、わずかな遅延であっても避けるべきです。厳しい目で見るならば、40msという数値は決して小さくありません。
結論として、GTW 270 Hybridの低遅延モードは、体感できるような遅延が発生せず、筆者のようにFPSをカジュアルにプレイする層にとっては必要十分です。しかしプロレベルとなると、2.4GHzワイヤレスのほうが遅延が少ないうえ、さまざまな面で信頼性が高いと言えます。
言わずもがな、Nintendo Switchやモバイルでのゲームには十分すぎるほどです。
(定量化できずに申し訳なく思います)
バッテリー
イヤホンは最大5時間の連続再生が可能なバッテリーを搭載しています。ケース内での充電を合わせると、最大15時間持続します。
イヤホンとケースの両方をフル充電した状態ならば、外出時の空き時間、さらに帰宅後のゲームにフル活用、といった1日の流れを想定してもバッテリーは十分に持ちます。
- フル充電:イヤホンは1.5時間、ケースは1.75時間でフル充電
- 高速充電:イヤホンをケース内で15分の充電後、90分使用可能
たった15分の充電で90分使用できる高速充電にも対応しているため、ケースの充電さえ忘れなければ出先でバッテリー切れの事態に見舞われることはないと思います。
ただし、PCやPS5などで長時間ゲームをプレイするという場合は不向きと言えます。なぜなら必ず5時間おき(イヤホンの充電が切れるタイミング)に充電する必要があるからです。
サウンド
GTW 270 Hybridは、ダイナミックなサウンドとまともな定位を備えています。
リスニングでは、どのジャンルとも相性を気にせずに楽しむことができます。重低音のベースが多用される楽曲でも歪むことはありません。ただしボーカルが埋もれ気味になることがあります。
ゲームプレイでは効果音が強調されます。低音域も十分ですが、高音域が前面に出てくることが多いです。『Apex Legends』ではいくつかの武器で射撃音が少し耳に刺さりますが、とても鮮明で音の方向も捉えやすいです。
USB-CドングルでPCに接続すれば「EPOS Gaming Suite」ソフトウェアによる制御が行えます。ソフトウェアの機能自体はシンプルで、対応しているのはイコライジングとバーチャル7.1chサラウンドのみですが、これらを利用できることが驚きです。
イコライジングはしっかりと機能します。ただし一部の楽曲では、低音域を上げすぎると歪みが目立ちます。ヘッドフォンと比べてドライバーと筐体が小さいので無理はありません。
バーチャルサラウンドは音の方向を捉えることを手助けしてくれるものですが、イヤホンでのサラウンド体験はヘッドセットと比べるとやや難解です。直感的に音の方向を捉えることができず、そもそもの音の鳴り方に慣れる必要があります。反響音はほとんどありません。
4サイズのイヤーチップが付属しており、付け替えることで明確な違いが表れます。しっかりと密着した状態では低音域が力強く鳴りますし、緩やかだと低音が少し抜けて温かい音になります。
装着感
GTW 270 Hybridの装着感は非常に優れています。
まず装着時にピッタリと張り付くポイントがあり、長時間装着していても疲れません。また本体の重みを感じることもありませんし、装着中に運動していても外れません。
アクティブノイズキャンセリング機能は備えていませんが、遮音性も高い部類であると言えます。小さな音は完全に排除され、大きな話し声でやっと音の輪郭がぼやけて聞こえる程度です。
上記はイヤーチップの付け替えによって大きく改善される可能性があります。パッケージにはXS/S/M/Lの合計4サイズが付属しているので、フィットするものが見つかりやすいです。
マイク
音声通話に使用するには十分な品質のマイクを備えています。
二台のスマートフォンを使って音声通話でテストしましたが、声が途切れることもなく、問題なく聞き取れます。ただし、周囲の音や風切り音は遮らないので注意すること。
また、USB-Cドングル接続の「aptX LL低遅延モード」で使用している間はマイクは無効となります。これは不具合ではありません。aptX LLというコーデックの仕様上、音質と応答性を高めるため、再生チャネルのみがサポートされます。
要するにPCやPS4などに接続して低遅延モードでゲームをプレイする場合は、単なるイヤホンとしての役割しか果たさず、別途マイクを用意する必要があります。
コントロール
GTW 270 Hybridの操作は非常にシンプルです。左のイヤホンに搭載された一つのボタンのみで、メディアと音声通話の両方をコントロールできます。操作方法は以下の通りです。
メディア
1回押す:再生 / 一時停止
2回押す:次へ
3回押す:前へ
2秒間長押し:Siri / Alexa を起動
音声通話
1回押す:音声通話に出る / 切る
3秒間長押し:音声通話を拒否する
どれも瞬時に反応せず約1秒ほどのラグがありますが、そこまでストレスは感じません。
耐久性
充電ケースはすべて金属製の表面で、耐久性には優れるものの、傷がつきやすいという難点があります。バッグの中で鍵などの金属類と擦れないように注意しましょう。
イヤホンはIPX5防水で、汗をかいたり小雨が降りかかっても一切問題ありません。水で流したり、つけたりするのは厳禁です。
ソフトウェア
GTW 270 Hybridは「EPOS Gaming Suite」ソフトウェアに対応しており、USB-Cドングル接続時に利用できます。以下のURLよりダウンロード可能です。
EPOS Gaming Suite:https://www.eposaudio.com/ja/jp/gaming/audio/epos-gaming-suite
イコライジングとバーチャル7.1chサラウンドに関する設定が行えます。プルダウンとバーで構成された、非常にシンプルなUIで、直感的な操作が可能です。
おそらくファームウェアアップデートの際にはこのソフトウェアを開く必要があるので、接続できるPCとネットワーク環境があるに越したことはないです。
内容に関しては既に【サウンド】の項で触れているので、UIの評価のみに留めておきます。
結論とターゲット
「EPOS GTW 270 Hybrid」について詳しく見てきました。ゲーミング用途に開発された完全ワイヤレスイヤホンですが、さまざまなライフスタイルに馴染んでくれるという印象が強いです。
例えば「外出時にはスマートフォンで音楽鑑賞したりNintendo Switchで軽くゲームをプレイし、自宅ではPC(PS5)でゲームを数時間プレイする」など、1日の中で活用できそうなシーンが多く浮かびます。
ただし、PCの前で長時間を過ごすことが多い方や、FPSに競技的に取り組んでいる方には不向きです。その理由として、連続再生は5時間しか行えないことと、aptX LLコーデックは”公称値40ms未満”とほんの僅かながらも遅延の発生は明らかであることが挙げられます。
カジュアルゲーマーにとっては一切気にならず、PCの『Apex Legends』で明らかな遅延を感じたり不利になることも一切なく、快適にプレイすることが可能です。
音質は素晴らしいです。リスニングはジャンルを問わず楽しめますし、ゲームでも迫力のあるサウンドが楽しめます。ただしFPSでは自身の射撃音が少しだけ耳に刺さりました。
少し惜しいのが、USB-Cドングル接続時にはマイクが無効になる点。規格の仕様なので仕方ないですが、これが同時に使えればさらに便利なオールインワンとして活用することができました。
総合評価4.0 out of 5.0 stars
優れたサウンド
幅広い対応機器
快適な装着感
十分なバッテリー持続時間
ケースが傷つきやすい
USB-Cドングル接続時はマイクが機能しない
以上、EPOS|SENNHEISER(イーポス・ゼンハイザー)の完全ワイヤレスイヤホン「EPOS GTW 270 Hybrid」のレビューでした。