「Xtrfy M1 RGB」レビュー。アップデートにより操作性が向上した、軽すぎない中型エルゴノミクスマウス
本稿では、Xtrfy(エクストリファイ)のゲーミングマウス「Xtrfy M1 RGB」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: Xtrfy Japan
製品仕様と外観
今回はXtrfy M1のアップグレード版である「Xtrfy M1 RGB」を詳しくチェックしていきます。前機種から約9gの軽量化に加え、パラコードケーブルの採用、センサーの刷新、さらにはRGBライティングに対応するなど、現在主流のスペックに寄せたものとなっています。
ここ1年で高く評価されるゲーミングマウスの基準が大きく変化し、発売から時間が経った製品にはそこまで目が向けられない状況となっています。そんな中で、優れたエルゴノミクス形状のM1が選択肢の一つとして帰ってきたといった感じでしょうか。早速見ていきます。
箱を開封した瞬間にマウス本体が見える、M4と同じパッケージング。内容物は M1 RGB本体、Xtrfyステッカー、取扱説明書となっています。
M1 RGBは、5つのボタンを搭載する左右非対称ゲーミングマウス。
最近はProject 4と称して豊富なカラーバリエーションを展開していたXtrfyですが、このM1 RGBは前機種のアップグレード版という位置付けなのでシリーズ外。本体カラーはブラックのみです。
従来のM1と同様、ラバーコーティングが施されたマウス表面。グリップ感に長けていますが、手の跡がつきやすいのが難点。
マウス前面とホイール中央、マウス後部にライティングゾーンが設けられており、イエロー単色からRGBにアップグレード。本体の操作によって発光パターンと輝度の調整が行えます。
形状を4方向からチェック。かぶせ持ちでグリップ感を得られる、独自のエルゴノミクス形状。詳しくは後述しますが、過去のレビューでも言及している通り、個人的に非常に優れた形状だと感じます。
寸法は69 x 127 x 40mmで中型サイズに分類されます。日本人の手に馴染みやすいサイズ感と言っていいでしょう。
本体重量は公称値86g(ケーブルを除く)、実測値85.7g。編組ケーブルからパラコードケーブルに変更されたこともあり、ほぼ公称値通りの数値が出ています。
前機種から形状はそのままに約9gの軽量化が果たされています。
PixArt PMW3330センサーが搭載されています。初期DPIは400/800/1200/1600/3200/7200の6段階で、本体底面のスイッチから切り替えられ、LEDインジケーターの色で設定値を識別できます。
また、Xtrfy製ゲーミングデバイスはプラグアンドプレイ設計を特徴としています。ソフトウェア不要で、DPIやポーリングレートの切り替え、RGBライティングのパターンと輝度の調整が行えます。
名称 | センサー | 本体重量 | ケーブル | ライティング |
---|---|---|---|---|
XtrfyM1 RGB (新) | PixArt PMW3330 | 86g | Xtrfy EZコード | RGB |
Xtrfy M1 (旧) | PixArt PMW3310 | 95g | 編組ケーブル | イエロー単色 |
前機種からの変更点まとめ。ここまで触れていない部分だと、硬くて取り回しづらい編組ケーブルから、M4にも採用されていたパラコードケーブル「Xtrfy EZコード」にアップグレードされているのも見所。古き良き部分は残しつつ、現在主流のスペックに寄せてきたといった印象。
パフォーマンス
持ち方の相性
M1 RGBはかぶせ持ちに適した独自のエルゴノミクス形状を特徴とするゲーミングマウスです。また人間光学系のマウスとしては大きすぎず、平均的な手の大きさの日本人にとって馴染みやすいかと思います。
本体後部の左右が最も膨らんだ部分は、ちょうど親指・薬指・小指の付け根あたりがくることを想定して設計されているので、自然なフォームで手を被せたときにこれらがガイドとなり、最適なポジションを見つけられます。
また、それぞれの指先を配置するポイントは本体幅がかなり絞られており、マウス本体をしっかりとグリップできます。先端とお尻の本体幅にここまでギャップがあるマウスは少ないです。
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
かぶせ持ち
かぶせ持ちは非常に相性が良いです。親指の第一関節や薬指・小指の第二関節など、各部位がフィットするよう上手に作り込まれており、手に吸い付く感覚が得られます。
かぶせ持ちに適したエルゴノミクスマウスは有名なものがいくつか存在しますが、それらと比べて背が少し低い(40mm)ので、人差し指と中指に急な角度がつかず、クリックする際に指先へ力が伝わりやすいです。
また、左右非対称マウスではメインボタン左の方が背が高く設計されていることが多いですが、M1 RGBは左右ともにほぼ同じ背の高さとなっていることも影響しているかと思います。
つかみ持ち
つかみ持ちも相性が良いです。本体後部の膨らみが親指・小指の第一関節あたりにくるので、手を添えるだけでマウス本体がホールドされます。また先端にかけて本体幅が狭まっていくので、指先に力を伝えるような繊細な操作も行いやすいです。
本体後部はそこまで背が高くないので、マウスを握り込む角度はあまり制限されませんが、色んな角度を試行しても本体幅が広い影響で同じような場所に触れてしまい、そこまで印象が変わりません。
つまみ持ち
つまみ持ちは相性自体は悪くないですが、指の関節を曲げたときに本体後部の膨らみが手のひらと干渉するので、垂直方向への可動域が狭いのが難点です。
この手の左右非対称マウスにありがちなのは、親指側のシェイプが干渉して、本体に対して深めにつまむことを強いられること。M1 RGBは手前側の膨らみを除いてほぼ水平で、表面のグリップ感も強いため、浅めにつまむことも可能ではあります。
ボタン配置・クリック感
メインスイッチ
メインボタンに搭載されているのはオムロン製スイッチ。押し心地はやや固めですが、短いストロークと適切な跳ね返りの強さによって明瞭なフィードバックが得られます。
前項でも触れた通り、左右非対称マウスとしては珍しくメインボタンの高さが水平に設計されています。手の大きさや持ち方の癖に左右されづらく、クリック感が安定します。
サイドボタン
サイドボタンは本体からしっかりと飛び出しており、親指の配置に沿うようにガイド線があります。ただし、手前側ボタンの幅が広く、奥側が狭いので、浅く持ったときに奥側のボタンに指が届きません。筆者がかぶせ持ちした場合だと、ガイドの線通りに親指を配置できるので問題ありません。
軽いクリック感で、ストロークは少し長めに確保されています。非常に押しやすいです。
ホイール
ホイールは動作音の少ないタイプ。やや重ための回し心地で、ノッチ感はやや弱くゴロゴロと回るタイプ。やや抵抗感があるので、1ノッチ正確に回すのは容易ですが、M1やM4と同様に酷使したあとに緩まる可能性は高いです。
ホイールクリックは短いストローク、重すぎず軽すぎずちょうど良い押し心地で、瞬時に押すことも容易です。
センサー
M1 RGBのセンサーはPixArt PMW3330です。位置付けとしてはコストが削減された3360のダウングレードモデルで、主なスペックは 最大7,200DPI、最大速度150IPS、最大加速度30G。最大DPI値こそ劣るものの、内部仕様的には前機種が搭載していた3310からアップグレードされたという見方ができます。
本体底面のスイッチから400/800/1200/1600/3200/7200DPIの6段階に切り替えられます。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサーの正確性を検証。DPIは400/800/1600で、ポーリングレートは500/1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
ポーリングレート500Hzだと綺麗な波形が見られる一方で、1000Hzでは大きく乱れます。
MouseTester: xSum
xSumの方は1000Hzに設定しても正常な波形となっているので、センサー自体は動きを正確に検知できているものの、その他の何らかの要因でxCountsの波形が乱れているというところでしょうか。
実際のカーソル動作に違和感は無く、操作に影響はありません。PixArt PMW3389を搭載するマウスによく見られたような、波形は乱れるけど正常なトラッキングはできているものとして扱って構わないと思います。今後のファームウェアアップデートで改善される可能性有り。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
「PureTrak Talent」上で計測した結果、M1 RGBのリフトオフディスタンスは1.0mmでした。前機種から0.数mmだけ短くなっています。ちょうどいい数値です。
センサーの位置
前機種と変わらず、マウス本体のほぼ中央に配置されています。
マウスソール
黒染めのテフロンソール。前機種から形状の変更は無し。緩やかに角が丸められていますが、高低差が少ないので、摩耗するうちにマウスパッドとの引っ掛かりが気になる可能性があります。
同社のM4も含め、最近はこれよりもテフロンが多くの割合を占める純白系のソールが貼り付けられているものが多く、それらと比べるとやや滑りは劣ります。M4と同じ材質の交換用ソールを発売してほしいところ。
ケーブル
パラコードケーブル。耐久性が重視されたもので、芯が残っていてやや固めではありますが、梱包時の癖を取り除くのは容易ですし、銅線を包むパラコードに余りが無く、綺麗に使用できます。
仕様表には記載がなかったのですが、ケーブルの根本が上を向いており、マウスパッドと擦れて干渉しないのは好印象です。マウスバンジーで浮かしてあげると、より快適に使用できます。
ビルドクオリティ
前機種から約9g軽量化されたM1 RGBですが、とても堅固な造りで、シェルの軋みやカタつきはありません。
ライティング
前機種ではイエロー単色のライティングが搭載されていましたが、新型はRGBに対応しており、M4と同じようにマウス本体からライティングに関する設定を行えます。設定方法は以下の通り。
- 発光パターン変更:ホイールクリック長押し + DPI切り替えボタン
- 発光カラー変更:DPI切り替えボタン長押し + 右クリック
- 輝度変更:DPI切り替えボタン長押し + サイドボタン(奥側+、手前側-)
- 発光パターンの速度変更:DPI切り替えボタン長押し + 左クリック
結論とターゲット
「Xtrfy M1 RGB」について詳しく見てきました。性能面よりも操作性の向上にフォーカスされています。サイズを考えると十分に軽量で、全体で見ると軽すぎない86g。以前の感覚を残したまま操作性の向上を感じられます。また、根本が上向きの柔らかいケーブルに変更されたことも大きいです。
センサーに関して、MouseTesterでのxCountsの波形が乱れているものの、使用するうえで一切問題は見られず、PixArt PMW 3389搭載ゲーミングマウスでよく出ていた症状と同じだと見ていいでしょう。同様の症状がファームウェアアップデートで改善された例もありますし、心配は要らないかと。
優れたエルゴノミクス形状はそのままに、操作性も改善され、現在の基準で見てバランスの取れたゲーミングマウスとなっています。まだまだ軽量化の流れは続きそうですが、それでも変わらずに”軽すぎない中型エルゴノミクスマウス”が好みだという方は試す価値有り。
以上、Xtrfy(エクストリファイ)のゲーミングマウス「Xtrfy M1 RGB」のレビューでした。