「ROCCAT Kain 200/202 AIMO」レビュー。優秀なコーティングとスイッチは健在、無線化で完成度が増した良ゲーミングマウス
本稿では、ROCCAT(ロキャット)のゲーミングマウス「ROCCAT Kain 200/202 AIMO」のレビューをお届けします。(2色展開で、Kain 200 AIMOがブラック、Kain 202 AIMOがホワイトモデル)
レビューサンプル提供: ROCCAT Japan
製品仕様と外観
「ROCCAT Kain 200/202 AIMO」は、発売済みの左右非対称ゲーミングマウス「Kainシリーズ」の上位モデル。最大の特徴は2.4GHzワイヤレス接続に対応している点でしょう。
既にレビューを済ませている有線版のKain 120/122 AIMO (レビュー記事) については、ROCCAT独自のスイッチ機構「Titan Click」による素晴らしいクリック感、秀逸な表面コーティングの2点が特に印象に残っている一方で、編組ケーブルの硬さがネックだと感じました。
そんな唯一の懸念点を排除し、無線ゲーミングマウスとして登場したKain 200/202 AIMO、筆者個人としても期待が持てる製品です。基本的にはワイヤレス接続時のセンサー挙動や、内部設計による細かな変化を重点的にチェックしていく形になるかと思います。詳しく見ていきます。
Kain 200/202 AIMOは、計6ボタンを備える左右非対称ゲーミングマウスで、本体カラーはブラック(Kain 200)とホワイト(Kain 202)の2種類。
表面材質はマットで、ROCCAT独自の耐摩耗コーティングが施されています。滑り止めがしっかりと効いていて手汗にも強い、非常に優れたコーティングです。
形状を4方向からチェック。寸法は幅65.0 全長124.0 高さ43.0mmで、中型サイズに属します。
左右非対称ながら両サイドがほとんど水平という変わった形状ですが、底面は絞られているので持ち上げ動作は楽に行えます。全体的に背は高いですが後部はすぼんでいます。
本体重量は公称値105g、実測値が105.1gでした。ちなみに有線版のKain 120と比較すると+16gです。
有線版Kainは公称値よりも重たく感じる一方、Kain 200/202は実際の重量よりも軽いように感じました。その理由の一つとして、バッテリーが本体後部に格納されており、重心がやや後ろに寄っていることがおそらく関係しています。もちろんワイヤレスであることも大きいでしょう。
センサーには、PixArtと新たに共同開発したPixArt PMW3335のカスタム品(メーカー公表名はROCCAT Owl-Eye)を搭載しています。PixArt PMW3389の低電力版でワイヤレスに適したセンサーと言えば分かりやすいでしょう。ソフトウェアから100~16,000DPIを100刻みで調整可能。
パッケージには マウス本体、USBレシーバー、ケーブルが付属しています。レシーバーを接続するスタンドは裏面が滑り止めラバーとなっており、デスク上に固定して設置できます。
スペックとギャラリー
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ROCCAT Kain 200/202 AIMO 製品仕様 形状 左右非対称型 表面素材 マット (独自コーティング) サイズ 幅65.0 全長124.0 高さ43.0mm 重量 105g ボタン数 6 センサー PixArt PMW3335 DPI 最大16,000DPI (100刻み) ポーリングレート 125/250/500/1000Hz LoD 1.0mm~ (実測値) スイッチ オムロン製 (5,000万回耐久, Titan Click) ケーブル ワイヤレス ソフトウェア 対応 (ROCCAT Swarm) 価格 14,278円 (Amazon.co.jp、本稿執筆時点) - 製品イメージをチェックする (開閉できます)
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パフォーマンス
持ち方の相性・操作感
Kain 200/202 AIMOは、中型サイズに分類されるゲーミングマウス。左側から右側にかけて沈んでいく形状で、細かな窪みはほとんどなく、傾斜によってフィット感を再現しているのが特徴。両サイドはほとんど水平ながら、底面が絞られており持ち上げやすいです。
大抵の左右非対称マウスでは、指までフィットするようサイドを窪ませるなどの工夫が見られますが、それらに比べるとKain 200/202 AIMOは手のひらのフィーリング重視で、両サイドに指のガイドが無いぶん配置の自由度が高いです。
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
かぶせ持ち
かぶせ持ちは相性良し。右サイドの僅かな傾斜が薬指・小指の第一関節から第二関節に沿うようにフィットし、自然に握り込むことができます。
左サイドはほぼ水平なので、親指の配置は自由。持つ深さや角度など、好みに応じて持てるのがメリットだと思います。Kain 120レビューの際にも書きましたが、手のひらの中心から底までピッタリと張り付くあたり、ECシリーズよりもG403(G703)寄りの握り心地。
つかみ持ち
つかみ持ちも相性が良いです。それぞれの指の配置を自由に行えるので、握りやすいポイントが見つかりやすく、相性問題に悩まされることは少ないと思います。
ただ一つ、形状だけを見ればやや持ち上げづらい部類とも感じます。滑りづらい表面コーティングのおかげで瞬時に持ち上げられるので、実際の操作に影響は出ません。
つまみ持ち
つまみ持ちは持ちやすいですが、それなりの本体重量を許容できるかが鍵。ケーブルレスとはいえ100gオーバーなので、あまり適していないようにも思います。
結論として、かぶせ持ちとの相性が最もよく、つかみ持ちも問題なくこなせます。なかなか面白い形状なので、既存のIE3.0クローンに物足りなさを感じる方にはぜひ手に取ってもらいたいです。
Kain 200/202 AIMOはバッテリーが後部に内蔵されている関係で、重心がやや後ろに寄っており、手首支点で操作した際に実際の重量よりも軽く感じます。ゲーム操作するにあたって違和感は特に発生しませんでした。
ボタン配置・クリック感
メインスイッチは耐久性5,000万回のオムロン製スイッチを備えるほか、ROCCATの独自スイッチ機構「Titan Click」によってクリック感が高められています。
ほんの少し固めのクリック感で、ストロークが非常に短く、強い跳ね返りが得られます。指切り、連打ともにこなしやすい調整です。
サイドボタンは柔らかくてストロークが短いので、親指の端でも容易に押し込めます。
本体から飛び出していてボタン自体の面積も広いですが、上の方に配置されているので誤爆の心配は薄いです。また、ボタンはやや手前に寄っているので、浅めのつまみ持ちでない限りは奥側にも指が届きます。
ROCCAT独自設計の「2D Titan Wheel」はノッチ感が強くて重ためで、細かな制御が効きやすいホイールです。ゲームプレイに適しています。ホイールクリックも若干固いですが、マウス各部が一切歪まず、安定した押し心地。
Kain 200/202 AIMOは有線版Kain 120と同等のスイッチ調整となっており、無線化されたことによるクリック感の劣化等は見られません。やはりKainシリーズのスイッチ周りは本当に出来が良いです。
センサー挙動・リフトオフディスタンス
Kain 200/202 AIMOの搭載センサーはPixArt PMW3335カスタム(ROCCAT Owl-Eye)です。ソフトウェアから100~16,000DPI(50刻み)の調整が可能なほか、センサーとマウスパッドとの最適化を図るキャリブレーションにも対応しています。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサーの正確性を検証。DPIは400/800で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
- MouseTesterの見方について
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基本的には、波形に点が綺麗に沿っていれば、マウスのセンサーが正確なトラッキングを行えている、という認識で構いません。マウスを動かす速度が速いほど、波形が縦方向に長く生成されます。つまり、波形の折り返し地点は、マウスが最高速度に達したことを表します。
- 横軸 Time(ms):経過時間を表す、1000分の1秒
- 縦軸 xCounts:マウスの左右への移動量。右に動かすと波形が上方向に、左に動かすと波形が下方向に生成される。マウスを動かす速度が速くなるほど、縦方向に大きな波形が生成される。
例えば、「中間地点の波形に点が綺麗に沿っているが、折り返し地点でブレが生じている」という場合、基本的には正確にトラッキングできているが、マウスを動かす速度が速いと反応がブレる、といった見方となります。
しかし、折り返し地点のブレが毎回同じような傾向だった場合、「マウスを早く動かすとカーソルが毎回その動きをする」ということですので、カーソルの動きは安定しているということになります。そのような場合、マウスを早く動かすとカーソルの動きに癖が出るものの正常、といった認識で構いません。
掲載しているのはいずれも無線接続時の波形ですが、xCounts, xSumともに綺麗な波形です。実際のトラッキングも安定しており、センサーに関しては全く問題無さそうです。競技ゲーム用途に耐えうる無線ゲーミングマウスの選択肢が一つ増えました。
注意点として、本体とレシーバーを離した状態でマウスを高速で振ると波形がやや乱れました。Kain 200/202 AIMOはワイヤレス接続時、ソフトウェアから電波強度を確認可能なので、良好な接続状態を保てる場所にレシーバーを設置して使用するのが吉。
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
ソフトウェアでキャリブレーションを済ませ、マウスパッド「PureTrak Tallent」上で計測した結果、Kain 200/202 AIMOのリフトオフディスタンスは1.0mmでした。有線モデルよりも実測値で0.3mmの差があるとはいえ、十分に短いです。
マウスソール
Kain 200/202 AIMOは、角の丸められたテフロン製ソールを上下に2枚、センサー周りにO型を1枚備えています。
「よく滑る」とされている交換用ソールと比べると滑りは劣りますが、それなりに滑って止めも効く、標準ソールとしては十分に良いものです。
有線版のKain 120は上下に2枚の配置でした。有線と無線に両対応化するにあたってケーブル接続部を実装する関係上、上部ソールが2枚に分かれています。使い心地に影響はないです。
ソフトウェア
Kain 200/202 AIMOは、ROCCAT製デバイスの統合ソフトウェア「ROCCAT Swarm」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
ROCCAT Swarm:https://ja.roccat.org/Support
設定項目は、50~16,000のDPI調整(50刻み)、各ボタンへのキー・マクロ割り当て、LEDライティング設定、ポーリングレート切り替え、リフトオフディスタンス調整・キャリブレーションなど。
センサー周りの機能が充実しているので安心です。実際に【センサー挙動・リフトオフディスタンス】の検証時、キャリブレーションの前後でリフトオフディスタンスの数値が変化したので、マウスパッドを変えるたびにやっておくことを推奨します。
機能が多いのでごちゃついているように見えますが、必要な項目だけピン留めしてホーム画面へ一纏めにすることもできますよ。あと、これは小話ですが、ROCCAT製品は”AIMO”をリリースしてからLEDの輝度が滅茶苦茶に上がったような気がします。
結論とターゲット
「ROCCAT Kain 200/202 AIMO」について詳しく見てきました。筆者はまだ無線マウスの信頼性について懐疑的な見方をしてしまうのですが、結論、全く問題無し。まだ種類の少ない無線ゲーミングマウスのラインナップに強力な選択肢が加わりました。
有線版Kain 120の強みであった優れたスイッチ周り、表面コーティングをそのまま受け継ぎながら、懸念点であった編組ケーブルの硬さを無線化することで解決しています。気掛かりだったセンサー挙動も良好でした(USBレシーバーの配置にはくれぐれも注意すること!)
結論として、105gの本体重量を許容でき、Kainシリーズの面白みのあるエルゴノミクス形状が気になる方は試す価値アリ。Kone Pure Ultraに続き、かなり完成度の高いゲーミングマウスでした。
以上、ROCCAT(ロキャット)の無線ゲーミングマウス「ROCCAT Kain 200/202 AIMO」のレビューでした。