「Xtrfy MZ1 Wireless」レビュー。Rocket Jump Ninjaが設計したオリジナル形状の軽量ワイヤレスマウス
本稿では、Xtrfyのゲーミングマウス「Xtrfy MZ1 Wireless」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: Xtrfy Japan
この製品について
「Xtrfy MZ1 Wireless」は、Rocket Jump Ninjaの名で知られるマウスレビュアーZyとのコラボレーションで誕生したゲーミングマウス「Xtrfy MZ1」の無線モデルです。最も注目すべきはその唯一無二の形状で、かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ちという言葉から連想されるような定番の持ち方ではなく、Zy独自の持ち方に合うように設計されています。つまり普段の持ち方とは異なる、自分にとって全く新しい持ち方を試す必要があるので、人を選ぶマウスであると言えます。
シェルを交換にすることで本体後部の形状を調整したり、バッテリーの位置を動かすことによって重量配分の調整にも対応するなど、Xtrfyらしい独自の仕様も取り入れています。2.4GHzワイヤレス対応で本体重量62gと、軽量なゲーミングマウスを好む方にも適しています。
製品仕様とスペック
入手方法と販売価格
Xtrfyはテクテク株式会社が国内正規代理店を務めており、Amazon.co.jpや楽天市場などで購入可能です。
販売価格は税込17,386円。海外公式サイトでは119.00ドルで販売されており、現在のレートで換算すると妥当な価格設定となっています。※2022/12/15執筆時のレートは1ドル135.70円
バリエーション
ブラック・ホワイトの2色展開。いずれも半透明のシェルが採用されています。
パッケージと内容物
MZ1 Wirelessのパッケージの内容物は以下の通り。
- MZ1 Wireless マウス本体
- USB Type-C to USB Type-A ケーブル
- 延長アダプタ
- USBレシーバー
- 交換用PTFEソール
- 交換用トップシェル
- ドライバー
- ステッカー
- 取扱説明書
パフォーマンス
接続とバッテリー
接続方式
MZ1 Wirelessは2.4GHzワイヤレスに対応しています。付属のUSBレシーバーをPCに接続し、マウス本体のスイッチを切り替えると動作します。延長アダプタとケーブルが付属しているため、マウスとレシーバーの距離を近づけて使用することができます。
検証中、ワイヤレス接続で正常に動作し、長時間連続で使用していても不具合は発生しませんでした。
バッテリーと充電
MZ1 Wirelessに搭載される500mAのバッテリーは最大75時間の連続動作に対応しています。バッテリー残量をこまめに気にする必要はなく、十分な長さであるように感じます。ただし、ライティングを点灯していると公称値よりもグッと短くなる印象です。
マウスを動かさないまま一定時間経つとスリープモードに移行し、余計なバッテリー消費を防げます。
バッテリー充電中には有線マウスとして使用することもできますが、ケーブルを繋いだ状態ではあまり快適と感じません。ケーブルがやや硬いことと、USB Type-C端子が水平に飛び出すような格好になるため、マウスバンジーでケーブルを適切に管理していても煩わしさを感じます。
ビルドクオリティ
MZ1 Wirelessは十分なビルドクオリティを備えた超軽量ゲーミングマウスです。
過度な軽量化よりも強度の確保が優先されている印象で、グリップ時に強い力を加えてもシェルが沈むことはありません。本体を激しく振っても音は鳴らず、軋んだりカタつくような箇所もなく、工作精度は申し分無いと言えるでしょう。
グリップ性能
多くの超軽量ゲーミングマウスと同様、MZ1 Wirelessシェル表面のグリップ性能は低いです。マット仕上げでサラッとした質感の樹脂で、指先や手のひらに張り付くような感触は得られません。手が乾燥していたり手汗の量が多いと滑りやすく、程よく湿った状態では多少のグリップ感が得られます。
指先の滑りを防止したい場合、グリップテープなどによる対策が必要になります。XtrfyとLizard Skinsが共同で制作した「Xtrfy MZ1 Lizard Skins DSP マウスグリップ」は、あらかじめMZ1 Wirelessの形に合わせてカットされているので、細かなこだわりが無い場合は試してみるといいでしょう。
本体重量
メーカー公称値62g、実測値は公称値通りの62gでした。
大手メーカー製ワイヤレスマウスの主力ラインナップはLogicool G PRO X SUPERLIGHTが63g、Razer Viper V2 Proが58gで、MZ1 Wirelessはこれらに並ぶ軽さ。ワイヤレスかつ軽量であることを条件とする方の選択肢にもなり得るでしょう。ただし形状が奇抜で、人を選ぶものになっていることには注意が必要です。
ちなみに本機の有線モデル「Xtrfy MZ1 – Zy’s Rail」は本体重量56gとなっています。ワイヤレス化に伴い、充電式バッテリーを搭載した分だけ重たくなったという認識で良いでしょう。
重量バランス
大半のゲーミングマウスはこれと同じように重心が中央辺りに調整されているので、他のマウスからMZ1 Wirelessに乗り換えても違和感は出づらいと言えるでしょう。
形状と大きさ
MZ1 Wirelessは、XtrfyとマウスレビュアーRocket Jump Ninjaが共同で開発したオリジナル形状の左右対称ゲーミングマウスです。寸法は58.5 × 111.0 × 36.5mmで、スモールサイズに分類されます。
海外のマウスレビュアー Zy (Rocket Jump Ninja) が設計した完全オリジナル形状です。「Zaunkoenig M1K」や「G-Wolves HSK」のように本体後部が縦にカットされていながら、全長はそれら2つよりも長め。グリップする深さ次第では、本体後部の出っ張りが手のひらと不自然に触れ合ってしまいます。
メインボタン先端からトップシェルにかけて深い窪みがあり、Rocket Jump Ninjaはこの窪みに沿って人差し指・中指を寝かせるように配置する持ち方を推奨しています。両サイドには穴が開いていない部分があり、それぞれの指をどの辺りに配置するかのガイドの役割を果たしています。
Rocket Jump Ninjaが推奨する持ち方以外では違和感が出やすく、使用感がこれに近いものもこれといって見当たらない、かなり奇抜なゲーミングマウスとなっています。
このMZ1 Wirelessを含む最近のXtrfy製ゲーミングマウスは、トップシェル交換による形状の調整に対応しています。あらかじめ取り付けられているシェルと交換用シェルとでは本体後部の高さが異なり、人差し指・中指を寝かせて配置したときの当たり方を調整できます。個人的には深めにグリップするなら①を、浅めにグリップするなら②を取り付けるとうまく機能するように感じます。
Xtrfy MZ1 (有線モデル) との比較
形状・センサー位置など変更無し。ワイヤレスモデルはモジュラーシェルによるトップシェル交換に対応しているため、トップシェル~メインボタンが分離している。
持ち方の相性
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
MZ1 Wirelessの形状は、Rocket Jump Ninja独自の持ち方に合わせて設計されたものです。具体的には、人差し指と中指の付け根から先端までをマウスの窪みに沿うように寝かせて配置し、サイドの3本指は自然なポジションに置くといったもの。”手のひらが浮いた状態のかぶせ持ち”、あるいは”人差し指と中指を寝かせた状態のつまみ持ち”のような持ち方です。
MZ1はトップシェルからメインボタン先端まで深い窪みがあり、これを人差し指・中指に沿わせることでフィット感が得られます。一方でサイドの形状は簡素。くびれはほとんどなく水平で、それなりに角度のつけられた逆ハの字となっています。一見すると奇抜な形状ではあるものの、人差し指と中指を寝かせなければフィット感も得られずパッとしない印象です。
それぞれの指を立ててつまみ持ちしたり、マウス本体後部を手のひらの一部で支えるつかみ持ちなんかも可能には可能ですが、劇的にフィットしたり操作性の良さに感動を得られることはありません。そういった持ち方を想定して設計された他のゲーミングマウスを選択する方が理にかなっているように感じます。そもそもホイールが奥寄りに実装されているので、浅めにグリップすると指が届きづらかったりもします。
実際にRocket Jump Ninjaの持ち方を試してみると、つまみ持ちでマウスを動かすときの感覚に近いことが分かりました。人差し指と中指を寝かせて配置しているので、指の関節の細かな動きによるブレが発生せず、水平方向に動かす際に高い安定性をもたらします。手ブレが少なくなり、手に力を入れたり押さえつけなくても、ピンポイントでマウスをスッと止められます。
ただし指の関節が使いづらいので、つまみ持ちのように指先のみでマウスを上下に大きく動かすことは困難です。垂直方向に動かすときは腕や手首も動かしてアシストする必要があります。”指先のみで上下左右にマウスをコントロールできる”という面はつまみ持ちの大きなメリットとも言えますが、この持ち方だと完全には恩恵を受けられません。
全長が短いマウスをつまみ持ちしてゲームプレイしていた経験がある場合、MZ1 Wirelessも違和感なく操作できる可能性が高く、使い始めのパフォーマンスもこれといって悪くありません。ただし、つまみ持ちとは違って指の関節を使えないので、縦に大きく動かすときには手首や腕も使ってアシストする感覚を養う必要があります。約1ヵ月使用した段階では、他のゲーミングマウスをつまみ持ちで使用していたときと比べ、X軸のフリックは伸びずとも安定していましたが、XY軸が混じったときの精度は低下したままでした。
かなり人を選ぶマウスであることは間違いありませんが、つまみ持ちに慣れている方ならば意外にもすんなりと導入できます。奇抜な形状に合わせて指を配置することになるので、他のマウスに移行したときに感覚が大きく異なる・慣れるまでの期間が長くなるなどの懸念もありますが、つまみ持ちでマウスを操作していて水平方向へのエイムの安定性を高めたい場合には一度試してみていいかもしれません。
スイッチ
メインボタン
メインボタンのマイクロスイッチにはKailh GM 8.0が採用されています。やや硬めの押し心地、ハッキリとしたクリック感のあるタイプ。適度なポストトラベルにより素早く連打でき、ホールドも苦ではありません。FPSにおけるスプレー・タップ撃ちのどちらもうまく制御できます。
スイッチ反応時には高すぎないクリック音、程よいフィードバックが指先に返ってきて心地よいです。クリック感の良し悪しはマイクロスイッチの種類だけでなくシェルのクオリティにも大きく左右され、超軽量ゲーミングマウスは軽量化を重視するあまりにフィーリングが悪くなる傾向にありますが、MZ1 Wirelessはうまく設計されているようです。
メインボタンが分離したセパレートタイプになっており、押し込む場所によるクリック感の変化が抑えられています。手前側にいくにつれて押下圧と跳ね返り感が若干増しますが、ホイールより1cmほど手前側を押し込んでも大きな変化はなく、あらゆる箇所で押し込むことができます。
デバウンスタイムの調整に対応しており、2 / 4 / 8 / 12msの4段階に調整できます。ただし8ms以上が推奨値であり保証対象とのことで、デバウンスタイムを短くすることは推奨されていません。
サイドボタン
サイドボタンは小さめで、本体からしっかりと飛び出しています。それぞれのボタンの両端は丸められており、親指をスライドさせてもボタンに引っ掛かることはありません。
ボタン配置はやや手前側で、よほど浅めにグリップしない限りは両方のボタンに指が届きます。ホイールとの位置関係を考えると、マウス本体に対してやや深めにグリップすることを想定した造りであることが分かります。
押し心地は柔らかめで、親指で軽く押し込むだけで反応します。親指のポジションよりも上側に配置されているので、誤爆する可能性は少なく、FPSでキャラクター操作にかかわる重要なキーを割り当ててもうまく機能します。
ホイール
ホイールは本体から少しだけ飛び出ています。ホイールリングは真ん中がLEDライティングゾーン、両端がゴム製となったXtrfyお馴染みのもの。指に引っ掛かりやすく回しやすいです。
回し心地はやや重ためで、鈍めのノッチ感とともにゴロゴロと回るタイプ。ハッキリとした分離感こそ感じられないものの、誤って操作することはなく、連続したスクロールも細かな操作も行いやすいです。軽いものが好みな方には不向きです。
ホイールクリックは固くもなく柔らかくもなく。最低限の力で押し込むことができ、感触もハッキリとしているので、咄嗟の判断で素早く押し込んだり、頻繁に使用するようなキーをバインドしても不便には感じません。
センサー
MZ1 Wirelessは、最近ワイヤレスマウスへの採用例が増えてきたPixArt製の光学センサー「PixArt PAW 3370」を搭載しています。最大19,000DPI、最大速度400IPSに対応、初期DPIは400 / 800 / 1200 / 1600 / 3200 / 4000 / 7200 / 19000の8段階で、本体底面のスイッチをCPIに切り替えた状態でホイール下のボタンを押すと切り替わります。また、DPI設定状況はLEDの色で判別できます。
センサーの挙動を可視化するツール「Mouse Tester」での検証に加え、『VALORANT』と『Apex Legends』でもプレイテストを行った結果、センサーが正常に動作していることを確認できました。
* 付属の延長アダプタ・ケーブルを使用し、マウス本体とUSBドングルを近付けた状態で検証。DPIは400, 800, 1600, 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッドは「BenQ ZOWIE G-SR-SE Deep Blue」。環境によって結果が変動する可能性があるので、あくまで参考程度にお願いします。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
センサー配置
MZ1 Wirelessのセンサーはマウス本体の真ん中付近に配置されています。
* センサーの位置が変わると、手首を支点にしてマウスを動かしたときのカーソルの移動量に差が出ます。一般的には、手首の動きを細かく捉えられることから、センサーが真ん中よりも前側に寄っているものは優れているとされており、後ろ側に寄ったものは好まれない傾向にあります。
マウスソール
PTFEソールが上に1枚(横長)、下に2枚(中型)貼り付けられています。厚さは実測値0.86mmです。
滑りと止めのバランスに優れたタイプで、それなりに滑りが速く、低速時には程よいストッピングアシストをもたらします。エッジは適切に処理されており、滑走面が粗かったり中間層が柔らかいマウスパッドと組み合わせても引っ掛かりません。
標準ソールとしてはクオリティが高く、非常に高速な滑りを求めない限りはサードパーティー製ソールに交換する必要は無さそうです。パッケージには予備として同じPTFEソールが1セット付属します。
設定・ソフトウェア
MZ1 Wirelessはソフトウェア不要のドライバレスで、本体のみで設定が完結します。
本体底面のスイッチ切り替えとサイドボタン・ホイール・ホイール下のボタンとの組み合わせで設定を行えます。DPIやポーリングレート調整、LEDライティングの色やエフェクトのほか、リフトオフディスタンス(1mm/2mm)やデバウンスタイム(2/4/8/12ms)の調整も可能です。
本体底面のスイッチを「PGDN」に切り替えると、ホイール下に搭載されたボタンがキーボードの「PgDn」として機能するようになり、ゲーム内設定でキーをバインドすることが可能になります。
ソフトウェアに対応するマウスと設定幅がほぼ変わらず、ドライバレスだからといって困ることは無いでしょう。強いて言うならキャリブレーションに対応していればより嬉しいといったところ。
結論とターゲット
「Xtrfy MZ1 Wireless」について詳しく見てきました。このマウスはRocket Jump Ninja本人の手の大きさ・推奨する持ち方でうまく扱えるように設計されており、かぶせ持ちやつまみ持ちのようなポピュラーな持ち方を想定したものではありません。そもそも他のゲーミングマウスとはコンセプトが異なり、持ち方がかなり限定されます。
その他の面はというと、全体的に出来が良いです。過度な軽量化よりも強度の確保が優先されており、耐久面では安心です。また、2.4GHzワイヤレス対応・最大75時間の連続動作に対応する500mAバッテリーを搭載しながら本体重量は62gと軽いです。メインボタンのクリック感は良好で、標準ソールも高品質です。
勿論、一般的な持ち方でも操作自体は可能ではあるものの、それではMZ1の独特なシェイプを活かせずパッとしない印象になります。よって、Rocket Jump Ninjaが推奨する(大半の人が慣れない)持ち方で快適に扱えるかをある程度の期間試す必要があるうえ、高価で気軽に試せるものではないので、とにかく人を選ぶマウスと言えます。
筆者が1ヵ月間検証した限り、つまみ持ちに近い浅めのグリップながら横方向のエイム速度と安定性は高まり、縦方向のエイム精度は若干低下したまま。つまみ持ちでマウスを操作するのにある程度慣れているのが最低条件で、それ以降も練習を積む必要があります。パフォーマンスが安定するまで時間が掛かることを覚悟の上で手に取るべき、安易に勧めることはできないゲーミングマウスと言えます。
総合評価3.5 out of 5.0 stars
安定した2.4GHzワイヤレス
十分なビルドクオリティ
最大75時間持続するバッテリー
62gの軽量設計
適切な重量バランス
優れたクリック感
押しやすいサイドボタン
硬めで分離感のあるホイール
高精度なセンサー
品質の高いマウスソール
浅めにグリップするとホイールに指が届かない
表面のグリップ性能が低い
価格が高い
以上、Xtrfyのゲーミングマウス「Xtrfy MZ1 Wireless」のレビューでした。
正直このサイズ、この形状のワイヤレスなら今時もう少し軽くできたはずという印象。
取り合えずmz1をワイヤレスにしましたというだけ。
製品仕様とスペックの表が他の製品のもの?
になっているかもしれないです
mz1は持ち方矯正マウスだから、独特な形で良いと思う。
かぶせ、かぶせ言われるマウスだけど、クリック部分の指を曲げた方がよろしい製品ではあると思う。