「Fnatic Dash」レビュー。静摩擦と動摩擦のバランスに優れ、湿気にも強いゲーミングマウスパッド
本稿では、Fnatic Gearのゲーミングマウスパッド「Fnatic Dash」のレビューをお届けします。
ファーストインプレッション
日本ではあまり注目されていない「Fnatic Dash」ですが、海外では「Artisan 飛燕」などのようなソフトとハードの中間に位置する”ハイブリッドパッド”として軒並み高評価を得ています。
これまで独自の滑走面を開発するのは日本のArtisanをはじめとしたマウスパッドを専門とする一部のメーカーであることが多く、大手メーカーが取り揃えるのはOEM製品が多かったのですが、今回のDashの発表があったこともあり、今後各社に新しい動きが見られるのではないかと期待できます。
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製品仕様とスペック
材質 | 布製 | 表面 | – |
---|---|---|---|
サイズ |
L: 487 x 372 x 3mm
XL: 950 x 500 x 3mm
|
エッジ | ステッチ加工 |
ベース | 滑り止めラバー | カラー | ブラック |
パッケージと内容物
太い筒状のパッケージに緩く巻かれた状態で入っています。
バリエーション
カラー展開はブラックのみ。以下2種類のサイズをラインナップしており、厚さは3mm共通。
- L: 487 x 372 x 3mm
- XL: 950 x 500 x 3mm
Lサイズは487×372と奥行きが若干狭いキリの悪い大きさで、XLは950×500とこの手の大きさにしてはやや幅と奥行きが広め。いずれも他社製のマウスパッドとは異なる特殊な寸法となっているため注意。
パフォーマンス
巻き癖
写真のように開封直後は両端の巻き癖が目立ちます。使用しているうちに気にならない程度までは収まりますが、短期間で真っすぐにするには重たいものを載せておくなど何かしらの対策が必要です。
滑走面
湿気や摩耗に強いポリエステルがブレンドされた滑走面で、「Artisan 飛燕」や「BenQ ZOWIE GTF-X」などが属するハイブリッドパッドの一種に分類されます。
本来、この手のマウスパッドは表面の凹凸が激しく、手首や腕などが擦れると痛むという難点を抱えていますが、DASHはとても滑らかな手触りで、快適に使用することができます。筆者が優れていると感じた点の一つです。
操作感
DASHはスピードバランスタイプに属するゲーミングマウスパッドです。「ハイブリッドパッド」と呼ばれるこの手のマウスパッドの特徴として、静摩擦が小さい割には動摩擦が大きいことが挙げられます。つまり、マウスの滑り出し(初動)の軽さの割には、止めも容易に行えるということです。
『VALORANT』や『Counter-Strike: Global Offensive』のようなフリックエイムが主体となるFPSでは、動摩擦の強いコントロールタイプのゲーミングマウスパッドがよく用いられます。DASHは滑りやすい部類ではあるものの、同じタイプのマウスパッドの中では素早いフリックからピンポイントで止めるのが容易なので、適性があるように感じます。
また「Artisan 飛燕」などとは異なり、縦横の滑りの差をほとんど感じられません。上下左右への高精度なトラッキングが求められる『Apex Legends』でも高いパフォーマンスを発揮します。
スポンジ硬度はやや固めで、滑走面にも硬めの素材が使用されているので、マウスに圧を掛けてもソールの沈み込みは発生しません。どのようなプレイスタイルでもほぼ一定の滑りを保ってくれるため、スポンジが柔らかいものと比べて操作が安定しやすいと言えます。
これといって不得意とするシーンがなく、万能かつ優れた操作感のスピード系マウスパッドという印象を受けます。また、筆者の環境では湿気の影響は受けず、日による滑りの変化は感じられませんでした。
エッジ
エッジのステッチ加工はとても頑丈で、ゴワつかない柔らかい糸で縫われています。縫い終わりの処理も非常に丁寧で、ほつれや破れ等は見られません。
滑走面と高さがほぼ変わらず、手首や腕に引っ掛かることはありません。通常では、エッジが滑走面からハッキリと浮き出ているものが多く、手首や腕が擦れやすくなり、マウスパッドが机上でズレてしまう原因にも繋がります。
ちなみにエッジの処理が最も優れているのはArtisan製のマウスパッドで、滑走面よりもエッジのステッチ部分の方が背が低くなっているので、マウス操作中に手首や腕に一切干渉しません。このDASHも完全ではありませんが、そのような工夫は見られます。
底面
織り合わせられた裏面の滑り止めラバー。グリップ性能はそこそこで、木製天板(ラバーウッド)との組み合わせではマウスを大きく動かしても一切ズレることはありません。ただし手では容易にずらすことができる程度。
キーボードまで載せられるXLサイズも展開されているため、グリップ性能が気になるという方はそちらを選択するのも一つの手。
センサー相性
各種マウスセンサーとの相性をチェック。それぞれの組み合わせでカーソルが正確に追従するかを確かめるほか、センサー挙動を可視化するソフトウェア「Mouse Tester」での測定も行います。
なお、使用環境やファームウェアのバージョンの違いなど、様々な要因によって結果が変動する可能性があり、この検証結果が100%正しいものではないことをお伝えしておきます。また同じセンサーを搭載していても種類が異なるゲーミングマウスでは結果は変動するので、ご参考までに。
〇 正常に動作する
△ 動作に問題は無いが、MouseTesterの波形に乱れが見られる
✖ 通常使用が不可能
主要マウスセンサーを搭載したゲーミングマウス9種で検証したところ、すべて正常に動作しました。このほか『Apex Legends』でのプレイテストも行っています。
ソール相性
スポンジは硬いのでソールの沈み込みはほとんどなく、滑走面のザラつき感もないため、マウスソールの端の処理が多少甘くても引っ掛かりは感じづらいです。
耐久性
ポリエステルがブレンドされた滑走面は、ソフトな布製マウスパッドと比べて耐摩耗性に優れています。それでいて「Artisan 飛燕」等のような表面のザラつき感がなく、滑らかな手触りを維持しているのも好印象。
エッジのステッチ加工は頑丈で、約2週間ほど使用した時点では手首が擦れる部分にもダメージは見られません。布製マウスパッドとしてはやや値が張りますが、価格相応のしっかりとしたビルドクオリティを備えています。
耐久性とは少し離れますが、メーカーが謳っている「撥水性」(防水ではない)は期待しすぎないほうがいいです。水を垂らすとわずかに吸い込む程度ですが、表面が湿った状態から乾くまでに時間が掛かります。
結論とターゲット
「Fnatic Dash」について詳しく見てきました。アムンゼン生地を採用する「Artisan 飛燕」や「BenQ ZOWIE GTF-X」などが類似製品として挙げられますが、摩耗や湿気に強いという特性はそのままに、表面のザラつき感は一切なく非常に滑らかな肌触りなので、マウス操作中に手首や腕に干渉することはありません。
滑りの速い部類であるスピードバランスタイプに属するゲーミングマウスパッドではあるものの、マウスの初動の軽さの割に止めやすく、静摩擦と動摩擦のバランスに優れています。これといって不得意とするゲームタイトルはなく、フリックエイム主体の『VALORANT』をはじめとするタイトル、トラッキングエイム主体の『Apex Legends』の両方に適性があります。
布製マウスパッドとしては値が張りますが、独自開発の優れた滑走面や、エッジや底面ラバーなどのクオリティを考えると、ごく妥当な価格設定であると感じます。巻き癖を完全にもとに戻すのに苦労するので、フラットな状態で梱包されていればほぼパーフェクトだったように思います。
総合評価4.5 out of 5.0 stars
摩耗と湿気に強い滑走面
静摩擦と動摩擦のバランスに優れる
エッジのステッチ加工は頑丈
底面ラバーのグリップ性能は十分
完全に真っすぐになるのに時間が掛かる
撥水性は期待できるようなものではない (※メーカー側が製品仕様として記載しているため念のため言及。個人的には評価を下げるようなポイントではない。)
以上、Fnatic Gearのゲーミングマウスパッド「Fnatic Dash」のレビューでした。