「ROCCAT Elo 7.1 Air」レビュー。約1万円と安価ながら全体的に優れたワイヤレスヘッドセット
本稿では、ROCCAT(ロキャット)のゲーミングヘッドセット「ROCCAT Elo 7.1 Air」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: ROCCAT Japan
製品仕様と外観
EloシリーズはROCCATが新たに発売したゲーミングヘッドセット。これといって目新しい要素は無いものの、ステレオ対応の有線モデル「Elo X Stereo」が税込5,380円、サラウンド対応の有線モデル「Elo 7.1 USB」が税込7,480円、本稿でレビューするサラウンド対応の無線モデル「Elo 7.1 Air」が税込10,573円と、シリーズを通して安価な価格設定となっています。
”ちょうど1万円で購入できる無線ゲーミングヘッドセット”と考えると予算が少ない方にとって魅力的ですが、安価な製品ではどの部分でコストダウンが図られているのかを見極めることが重要となります。価格以上の音質を備えていても、装着感が悪すぎると優れた選択肢とは言えません。
1万円前後のワイヤレスヘッドセットはいくつかありますが、ソフトウェアによる詳細設定に対応したもののほとんどは1万円後半~2万円台といった価格設定となっているため、価格面では優れていることが分かります。となると気になるのはパフォーマンス。早速見ていきましょう。
内容物は Elo 7.1 Airヘッドセット本体、着脱式ブームマイク、USBレシーバー、充電ケーブル(USB Type-A to USB Type-C)、取扱説明書。
ヘッドセット本体はブラックで統一されており、艶消しのプラスチックを主体に、ヘッドバンド部はスチールとPUレザー、クッション部分はメッシュとPUレザーといった構成。そこまで高級感はありませんが、チープさが目立つわけでもありません。
本体重量は公称値345g。数字だけで判断すれば、軽量とは言い難いものの重たすぎるわけでもありません。
ネオジウム磁石50mm径ドライバー。主なスペックは 周波数応答20~20,000Hz、その他は未公開。
ヘッドバンドは二重構造となっています。外側はスチール製で、十分な強度が確保されています。内側はPUレザーにメッシュ製クッションが縫い付けられており、型崩れする心配はありません。
装着時にスライダーによって自動で長さが調整され、頭部にフィットする仕組みです。
イヤークッションはPUレザー張り、ヘッドレストのクッションはメッシュ張り。
取り外し可能なブームマイク。あらかじめ角度がつけられており、口元に向けやすいよう調整されています。スペックは未公開。
ソフトウェアからノイズキャンセリング機能と簡易的なボイスチェンジャーを利用可能。
左イヤーカップには各種コントロールが並んでいます。上から 音量調整ホイール、マイクモニタリング音量調整ホイール、マイクミュートボタン、電源ボタン となっています。
付属のUSBレシーバーによる2.4GHzワイヤレス接続にのみ対応しており、バッテリー持続時間は最大24時間。PCでは正常に動作しますが、PlayStation 4では不完全です。
ROCCAT製デバイスの統合ソフトウェア「ROCCAT Swarm」からイコライジングやバーチャルサラウンド、マイク設定などの詳細な設定が行えます。
パフォーマンス
サウンド
ステレオ
Elo 7.1 Airは比較的フラットな音質傾向にあります。特定の音域が過度に誇張されることがなく、低音のブーストも効いていません。強いて言うならば重低音が少し物足りない印象を受けますが、この価格帯ではごく一般的なことで、ゲームで使用するうえで問題にはなりません。
このような低音が強調されていないサウンドでも、FPSで同時に鳴った銃声と足音を捉えることは容易です。むしろブーストの掛かった低音が響く環境では、定位を正確に掴むことを妨げてしまう可能性があるので、デフォルトで低音が強調されたものは好ましくないとも言えます
その点、Elo 7.1 Airは元がフラットに近いので、適切な調整を加えることで、より聴こえが良くなる可能性が高いです。ソフトウェア「ROCCAT Swarm」からイコライジングが利用でき、あらかじめ多くのプリセットが用意されています。
個人的には、60~250を少し持ち上げることでメリハリのあるサウンドになると感じます。いくつか数値を弄るだけで印象がそれなりに変わるので、プレイしているタイトルのサウンドデザインに合わせて調整してみてください。
また、50mmドライバーは十分なパワーがあります。ゲームとリスニングの両方で使用する中で、これといって目立つ歪みは発生しませんでした。やや粒が大きな音だとは感じるものの、約1万円の安価なワイヤレスヘッドセットとしては期待以上の音質です。
バーチャルサラウンド
バーチャル7.1chサラウンドは十分機能しますが、ステレオと比べて左右がハッキリと分断する印象で、音量の違いによって角度を判断する必要があります。ステレオとバーチャルサラウンドのどちらが優れていると感じるかは好みの問題なので、多くは語らないでおきます。
ただ、あらゆる方向へ激しい視点移動を行う『Apex Legends』や『オーバーウォッチ』などのタイトルではうまく機能するように感じます。(ゲームの特性上、常に視点を動かし続けるため、前方と後方のどちらから音が鳴っているか判断しやすいという見方もあります)
「明瞭」と「バランス」の2つのオプションが用意されていますが、音量バランスが僅かに異なる程度で、聴き取りやすさにそこまで差はありません。本質的にはほぼ同じものだと感じます。
Superhuman Hearing
Elo 7.1 Airでは、Turtle Beach社が特許取得済みの「Superhuman Hearing」機能を利用できます。オンとオフを切り替えるだけで、これ以外のオプションはありません。
これはFPSで重要となる足音や銃声などが強調されるものです。オンにすると、聴き取りたい音が強調されて拾いやすいのは確かですが、極端にイコライジングしたようなサウンドになります。少なくとも自然な音ではなくなるので、好みが分かれそうです。
マイク
Elo 7.1 Airのマイク音質は悪くありません。低音がそこまで豊かではなく、コンデンサーマイクのような質感とは程遠い、いわゆるヘッドセットらしい音質ではありますが、ボイスチャットなどでコミュニケーションを取るには十分です。
音量はやや小さめで、ソフトウェアからマイク感度を調整することで多少は改善されます。ただし録音した音声からも分かる通り、ポップノイズが入りやすいです。これはマイク先端に若干の角度がついていることが要因で、口元よりもやや下の方に持ってくることで改善できます。
「マイクノイズキャンセル」機能は、そこまで効果を感じられませんでした。周囲の雑音が激しい環境では機能する可能性があります。「マジックボイス」は簡易的なボイスチェンジャーのような機能です。
装着感
Elo 7.1 Airの装着感は可もなく不可もなく。ヘッドセット形状は適切で、側圧はちょうど良く、特定の部分へ負荷が集中することもありませんが、イヤークッションの柔らかさが物足りません。
また遮音性には欠けており、周囲がうるさい環境では満足できない可能性があります。自宅での使用ならばほとんど問題ありません。
段階式の長さ調整スライダーは搭載されておらず、ヘッドバンドに負荷が掛かると自動でスライドする仕組みです。ヘッドバンドのクッションは面積が広く、張力もちょうど良いため、頭頂部への負担がかなり少ないです。
イヤーカップは上下左右へ回転するので、頭の形に合わせてフィットします。ただし、イヤークッションはそこまで柔らかくなく、装着時には耳の周りが押さえつけられている感触があります。これはハイエンド帯のヘッドセット以外ではよく見られ、そこまで問題にはなりません。
コントロール
Elo 7.1 Airは左イヤーカップにコントローラーを備えています。上部から 音量調整ホイール(Windows側)、マイクモニタリングの音量調整ホイール、マイクミュートボタン、電源ボタンです。
システムの音量とマイクモニタリングの音量ホイールが並んでいるため、少し紛らわしいと感じます。音量調整ホイールは、装着時に耳の少し上側にくるので、音量を調整しようとしてマイクモニタリングの音量調整ホイールに誤って触れてしまうことが何度かありました。
接続・バッテリー
接続は付属のUSBレシーバーによる2.4GHzワイヤレスのみ、PCに対応しています。PlayStation 4では動作が不安定なうえ、サラウンドなどのさまざまな機能は利用できません。
ワイヤレス通信可能範囲は公表されていませんが、他社製のワイヤレスヘッドセットと比較したところ、同じくらいの範囲は確保されています。接続したPCを設置している部屋から出ても、通信は維持されます。
バッテリー持続時間は最大24時間で、長時間使用しても2日間、1日3時間の使用だと1週間以上は持ちます。これは十分な長さですが、市場には遥かにバッテリーの持ちが良い機種もあります。
USB Type-Cケーブルによる素早い充電が可能なので、手間は感じません。また、ソフトウェアからバッテリー残量を%で確認できます。定期的に確認しながら使用していましたが、数値の刻みが大きく、大幅に減少することもあったため、これが正確かどうかは定かではありません。
結論とターゲット
「ROCCAT Elo 7.1 Air」について詳しく見てきました。率直な感想として”1万円前後なら現状トップクラス”のゲーミングヘッドセットです。本来だと、低価格帯でワイヤレスとなると、どこかを諦める必要がありますが、全てにおいて比較的まともなパフォーマンスを発揮します。
音質に関して、1万円のヘッドセットに期待されるような水準は超えていますが、やや音の粒が大きく、高解像度な音は望めません。その他、マイクにポップノイズが乗りやすいこと、音量調整ホイールの位置が高くて慣れが必要なことは注意しましょう。
上記のような懸念点は、このヘッドセットを選ぶこと自体を躊躇うべき決定的な欠点ではありません。むしろ、総合力と価格を照らし合わせると、全体的に優れていると感じます。何より、Elo 7.1 Airの価格の安さは明らかに優れている点の一つです。
これより高価格帯になってくると、上記のような懸念点を払拭したもの、さらには優れた音質、あらゆるプラットフォームに接続できる、優れたバッテリー持続時間など、より凝ったヘッドセットも存在します。ただ、そういった過度なこだわりが無く、低価格でなるべく良いモノを入手したいと考えている場合、迷わず勧められる製品です。
以上、ROCCAT(ロキャット)のゲーミングヘッドセット「ROCCAT Elo 7.1 Air」のレビューでした。