「Turtle Beach Atlas One」レビュー。低価格帯におけるパフォーマンス重視なゲーミングヘッドセット
本稿では、Turtle Beach(タートルビーチ)のゲーミングヘッドセット「Turtle Beach Atlas One」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: Turtle Beach
製品仕様と外観
以前Elite Atlasのレビューでは、1万円前半の同価格帯で比較したときに音質傾向・マイク・装着感において優れていると評しました。(ただし音に関しては、多くの音が交わったときにそれぞれが混ざり聞き取りづらくなり、ゲーム以外の用途には適さないチューニングとも言える。)
今回レビューする「Turtle Beach Atlas One」はAtlasシリーズのエントリーモデルで、執筆時点でのAmazon.co.jp販売価格は約5,500円。価格が安いに越したことはないですが、この価格帯をチェックするときに懸念されるのは、もう少しお金を出して上位機種に手を出す方が良い選択となる場合もある点。
ゲーミングヘッドセットにおいては、さまざまな要素が絡んで評価されるオーディオ機器とは少し異なり、ゲーム用途に限定すれば価格以上のパフォーマンスを発揮するケースも多く存在します。Atlas Oneはどうでしょうか。早速詳しく見ていきます。
Atlas Oneは表面こそ全面プラスチックですが、イヤーカップとヘッドバンドにカーボンファイバーのような模様をあしらっており、チープさはやや取り除かれている印象。
長さ調整スライダーは10段階調整が可能で、その可動域は十分です。スライダーを引き伸ばすと金属バンドが露わになるので、ヘッドバンド内部は金属で剛性が保たれていることが分かります。
イヤーパッドやヘッドレストにはPUレザーが採用されています。それぞれの厚みは必要最低限という印象で、内部にはElite Atlasと比べてやや潰れやすいクッションが使われています。
ドライバーは40mm径で、周波数応答は20Hz~20,000Hz、インピーダンスは未公開。
左イヤーカップの後部にはボリューム調整ノブが搭載されています。勝手に回らないよう適度な固さがあり、すぐに手が届く位置に備わっているのが好印象。
無指向性のブームマイクは取り外し不可能ですが、視線に入りづらく邪魔にならない小サイズ。一定まで跳ね上げるとミュート状態になります。
接続ケーブルは3.5mmシングル4極で、音声分離ケーブル(3.5mmデュアル3極)が付属。
スペック&ギャラリー
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Turtle Beach Atlas One 製品仕様 対応機種 PC, Mac, PlayStation 4, Xbox, Nintendo Switch ドライバー ネオジウム40mm径 周波数帯域 20~20,000Hz インピーダンス – 本体重量 245g マイク 搭載 マイク特性 無指向性 マイク周波数帯域 – 接続 3.5mm3極 / 3.5mm4極 ソフトウェア 非対応 価格 5,570円 (本稿執筆時点) - 製品イメージをチェックする (開閉できます)
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パフォーマンス
音質傾向
Atlas Oneの音質傾向について。結論から言えば、ゲームで必要とされる音のみにフォーカスして設計されている印象です。まずリスニングでチェックした際はかなり評価を落としたものの、特定のゲームではしっかりと機能することが分かりました。
前提として、複数の楽器やボーカルが混在する楽曲では、すべての音が同じ距離から聞こえ、音像定位が再現されづらいです。音の塊がぶつかってくる感覚に近いです。ボーカル+αなどシンプルな構成の楽曲では聞こえが良いです。
全体で見ると最も強く出ているのが低音域ですが、鳴らせる幅が狭いようで、深めの低音(楽曲で言うところのベース音)ともなると埋もれがち。中音域(ボーカル)は鮮明に聞こえますが、さほど前に出てこず引っ込んでいる印象。高音域は十分に鳴らせているものの抜け感が足りず。
文章にすると半端なように感じますが、これがゲームで試すと意外と機能しています。例えば『Counter-Strike: Global Offensive』では、余計な音を排除しつつ重要な音だけを聞き入れることが可能です。シンプルに足音・銃声を拾うことに集中すべきFPSとは相性が良いです。
同条件が求められるタイトルでは、音質などを度外視して「必要最低限の情報が耳にスッと入ってくる」という面にフォーカスした場合、少し上の価格帯とも張り合えるであろうパフォーマンスを発揮します。ローコスト(5,000円台の販売価格)でこれは奮闘してるな、という感想を抱きます。
ただし音質傾向から、明らかに苦手なタイトルも存在します。例として、さまざまな効果音が混在する『Apex Legends』や『レインボーシックス シージ』などが挙げられます。音自体は鳴っているものの分離感に欠けており、聞き分けのしづらさが気になります。
装着感
まず側圧について、標準状態ではやや強めですが、ティッシュ箱に挟み込むなどして改善可能。Atlas Oneに備わったスライダーは10段階の長さ調節が可能で、筆者の場合は互いに6つ進めたところでフィットしました。
ヘッドレストは厚みが足りず、頭頂部へのストレスを軽減しきれていない印象。長時間装着していてまず気になるのがココ。Atlas One自体は245gと軽量なのでストレスは幾分か抑えられますが…。
イヤーパッドは耳全体に覆い被さってはくれるものの、クッションの厚みが不十分。筆者の場合は耳の先端がドライバーユニットに軽く触れます。触れるのみで決して痛むほどではないですが、神経質な方は注意。
長時間つけていられないほど装着感が悪い訳でもないですが、決して良いとも言えません。そもそもの価格が安いということで、ユーザー目線ではここが一つの妥協点になりそうです。
マイク
マイクは非常に短く、取り外しや位置調整は不可能です。この設計により本体がコンパクトになって取り回しやすいのは利点ですが、それが結果的にマイク品質の低下に影響しているとも感じます。
声を鮮明に届けるにはマイクの先端を口に近づける方法が考えられますが、Atlas Oneは口から少し離れた距離にマイク先端がくることになります。実際に録音してみると、声の輪郭が少しぼやけます。
またElite Atlasと同様に周囲の環境音を拾ってしまう特性があるため、Discordのボイスチャットツールなどで声だけを入れるための調整が難しいです。これは環境にもよりますが、筆者の場合は工夫してもゲーミングキーボード(赤軸)の打鍵音を拾ってしまいました。
結論とターゲット
「Turtle Beach Atlas One」について詳しく見てきました。ゲームに適したサウンド環境をローコストで実現することに重きを置いたゲーミングヘッドセットで、装着感やマイク品質などは上位品のElite Atlasと比べて大幅にグレードダウンしている印象を受けます。
一つの見方として、サウンド・装着感・マイク品質のどれを重視するかでAtlas Oneの評価は大きく変わります。Atlas Oneは、それなりにこの3つのバランスが取れたもの、あるいは装着感を重視したものを探している方には不向きな製品です。
Atlas Oneの長所は、同価格帯ゲーミングヘッドセットと比較して、FPSにおいてシンプルに足音・銃声を聞き取る能力に長けている点。サウンドカードなどの追加コスト無しでPCに直接繋いでも使えるので、ゲームでのパフォーマンスをできるだけ低価格で求める方に最適と言えるでしょう。
以上、Turtle Beach(タートルビーチ)のゲーミングヘッドセット「Turtle Beach Atlas One」のレビューでした。