「SteelSeries Apex Pro」レビュー。アクチュエーションポイントを0.4~3.6mmの間で調整可能なゲーミングキーボード
本稿では、SteelSeries(スティールシリーズ)のゲーミングキーボード「SteelSeries Apex Pro」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: SteelSeries Japan
製品仕様と外観
「SteelSeries Apex Pro」の最大の特徴は、磁気ホール効果センサーを使用した「OmniPoint」キースイッチが採用されている点。本製品の一番のセールスポイントとなっており、他社製キースイッチよりも反応速度が優れていると謳っています。
各キーごとのアクチュエーションポイントを0.4~3.6mmの間で調整(0.3mm刻み)できるほか、あらかじめ決めておいた設定をゲームの起動時や作業時などの場面に応じて自動的に変更できます。
キー反応の速さで人気を博している「銀軸」のアクチュエーションポイントは1.2~1.0mm、「赤軸」ならば1.8~2.0mmです。数値のみで判断するならば、Apex Proが圧倒的に優れているように思えます。詳しく見ていきましょう。
装いは前作のApex 7そのままに、前述の独自開発キースイッチ「Omni Point」を盛り込んだゲーミングキーボードがApex Proです。フルキー仕様で、日本語配列と英語配列の両モデルが展開されています。
サイズは幅436.7 奥行139.2 高さ40.3mmで、本体重量は約970gです。
フレームには航空機グレードのアルミニウム合金が採用されています。本体はかなり頑丈で、真ん中を強く押しても殆ど沈みません。
ゲームプレイ中の激しいキー操作を伴っても本体が歪まないので、正確なキー入力ができるだけでなくキースイッチ本来の打鍵感を得られます。
本体右上には有機ELスマートディスプレイが搭載されています。デフォルト状態ではSteelSeriesのロゴが映し出されていますが、ここから設定やプロファイルの変更、ゲームやDiscord、Spotifyの通知などを受け取れるとのこと。
その右には音量調整バー、再生/停止ボタンが備わっています。いわゆるメディアキーです。
本体背面にはUSBポートが1つ備わっています。ホワイトのLEDが常時発光しており、本体を覗き込まなくても位置が分かりやすいよう配慮されています。
ゲーミングマウスやヘッドセットなどの接続、スマートフォンの充電用など、さまざまな用途に活用できます。
USBケーブルは画像のように二又になっており、片方はUSBポートへの電力供給用です。
ケーブル自体はかなり太めで取り回しづらいですが、ケーブルを出す位置が3か所から選べるので許容範囲。
本体裏面にはケーブルを這わせられる窪みがあり、ケーブルを3か所から出せます。角度調整スタンドは1段階のみ。
マグネット式で着脱可能なリストレストが付属しています。表面の仕上げはマットで滑りづらく、肌触りが良いです。
スペック
SteelSeries Apex Pro 製品仕様 | |
キー配列 | 日本語配列, 英語配列 / フルキー |
キースイッチ | OmniPoint |
キーストローク | 3.6mm |
作動点 | 0.4~3.6mm |
押下荷重 | 45g |
キー耐久性 | 1億回 |
ポーリングレート | 1000Hz |
LEDライティング | RGB対応 |
ソフトウェア | 対応 (SteelSeries Engine 3) |
価格 | 28,758円 (本稿執筆時点) |
パフォーマンス
キータッチ・打鍵音
Apex Proに搭載されたキースイッチは、各キーのアクチュエーションポイントを調整可能という特性を持つ「OmniPoint」スイッチで、応答速度は0.7ms、耐久性は1億回とのこと。
ざっくりと言うならば赤軸や銀軸風のキースイッチです。青軸や茶軸のような押下時のクリック感が無いリニアスイッチで、押下荷重は45gと軽く。キーがスッと降りていきます。
しかしCherry MX製やKailh製スイッチと比べるとキーの跳ね返りが強いのが特徴的で、押したあと力を抜かずともキーが戻ってきます。これはキー連打のしやすさ、ホールド誤爆を防止できるという観点から、ゲームプレイにおいて良い方向に作用すると感じます。
メカニカルキースイッチらしからぬ光学スイッチ寄りの打鍵音で、キー押下の深さを問わず「スコスコ」と鳴ります。パーツ同士がぶつかるような不快な音は発生せず、心地良いタイピング音です。
率直な感想として、打鍵音が比較的静かなDucky製の銀軸メカニカルキーボードを普段から使用している筆者にとって、OmniPointは素直に受け入れられるスイッチでした。一方で「カチャカチャ」と音が鳴るものが好きな方にとっては物足りないと感じるかもしれません。
アクチュエーションポイント調整
Apex Proは、アクチュエーションポイントを0.4~3.6mmの間で0.3mm刻みで調整可能です。銀軸が1.0~1.2mmなのに対し、Apex Proは0.4mmです。キー反応の速さだけで言えばApex Proが圧倒的に優れているように思えます。
また、各キーごとに異なるアクチュエーションポイントを設定することもできます。キャラクター操作の主となるW,A,S,Dキーのみ0.4mm、頻繁に押し間違えるキーのみ長めの3.6mmに設定するなど、好みに合わせて調整可能です。
これは間違いなく優れた機能で、FPSにおける細かなキャラクター操作の精度、ストッピング速度の向上が実感できます。銀軸からの乗り換えも検討してしまっていいのではないでしょうか。
しかしこの機能、「0.4mmで反応させたい!」と考え無しに設定するのはやや危険です。というのもApex Proの仕様上、アクチュエーションポイントとリセットポイントは同じ設定値となります。
例えば、アクチュエーションポイントを0.4mmに設定すれば、リセットポイントも自動的に0.4mmに合わせられます。要するに、キーを押し込んだあと、0.4mmの地点までキーを戻さなければ再び反応しない状態です。
キーを深めに押し込む癖がある方の場合、キー連打の速度が劣ってしまう可能性があります。
有機ELスマートディスプレイ
本体右上に備わった小型ディスプレイでは、Apex Proの各種設定や、ゲーム・ボイスチャットのステータス表示などが可能とのこと。
しかし、取扱説明書には操作に関する詳しい記述がなく、筆者の環境でDiscordやSpotifyのステータス表示を試みたものの、表示することができませんでした。分かり次第追記します。
デフォルト状態ではSteelSeriesのロゴが映し出されていますが、写真のように好きなデザインに差し替えることができます。
差し替える場合、マウス操作で画面に手書きするか、画像をアップロードして適用します。カラーは白黒のみとなり、アニメーションにも対応しています。
全ての機能を試せなかったので残念ですが、ディスプレイ自体はコンパクトで本体サイズも据え置きですし、拡張機能としてはかなり面白いものだと思います。
キーキャップ
Apex Proのキーキャップは表面がやや滑りづらいタイプで、指の配置ズレが発生しづらいです。また写真の通り、跡がつきやすいです。
キーキャップ裏面は+の形状で、Cherry MXと互換性有り。市販キーキャップとの交換が可能です。
ソフトウェア
Apex Proは、SteelSeries製デバイスの統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」に対応しています。以下のURLよりダウンロード可能です。
SteelSeries Engine 3:https://jp.steelseries.com/engine
設定項目は、各キーへのキー・マクロ割り当て、アクチュエーションポイント調整、LEDライティング設定、有機ELスマートディスプレイに関する設定となります。
アクチュエーションポイントとディスプレイの設定方法に関しては前述の通り。画面右に映し出されたキーボード本体から設定を変更したいキーを選択しながら、左側で決定していくという方式。
結論とターゲット
独自開発キースイッチ「Omni Point」を備えるApex Pro。目玉である”アクチュエーションポイント調整”は、FPSプレイヤーにとって恩恵が大きく、個人的に評価が高いです。ユーザーによって例外はあるものの、操作の精度やストッピング速度向上が期待でき、赤軸や銀軸からの乗り換えに最適。
キーボード自体の剛性は申し分なく、キースイッチのハウジングが甘いメカニカルキーボードにありがちな安物感は皆無。打鍵感は赤軸や銀軸に似ながら、強い跳ね返り感によってキー連打を助長してくれます。
ここまでは言うこと無しですが、ネックとなるのは価格の高さ(実売価格は3万円前後)。よほどハイエンド志向なユーザーでない限り選択肢には入りづらいでしょう。
Apex Proが良いゲーミングキーボードであることは間違いありませんが、今後続々と類似キースイッチを備えた競合製品が登場することが想定されるので、それらの見極めは必要かもしれません。
以上、SteelSeries(スティールシリーズ)のゲーミングキーボード「SteelSeries Apex Pro」のレビューでした。