ASRock Z790 LiveMixer レビュー。高ポーリングレートのマウス・キーボードを安定動作させるLightning Gaming Portsを検証
この記事ではASRockのマザーボード ASRock Z790 LiveMixer をマウスレビュアーの視点でレビューします。高ポーリングレートのマウス・キーボードを動作させるのに重要となるUSBコントローラの安定性についてテストしています。
レビュー用サンプル提供:ASRock
ASRock Z790 LiveMixerの特長
メインマシンとして新しく自作PCを組み立てました。今回の目的は2つあります。
- TwitchやYouTubeで配信しているときも普段と変わらないFPSでゲームするため。
- 最近増えてきた4000Hzや8000Hzなど高いポーリングレートのマウスやキーボードを安定動作させ、PC本体が起因して発生するジッターや遅延を最小限に抑えるため。
この ASRock Z790 LiveMixer というマザーボードは、リアに14ポート、内部ヘッダに9ポートの合計23もの大量のUSBポートを備えているのを大きな特長としています。
どうしてもこの仕様に目が行きがちで、大量のUSBポートを必要とする配信やクリエイター用途に振り切ったマザーボードかと思っていましたが、どうやらASRockの中の人曰く「うちのASRock Z790 LiveMixerはマウスやキーボードの検証用にも適している」とのことでした。
このASRock Z790 LiveMixerのリアに2ポート搭載されたLightning Gaming PortsというUSBポートは、高ポーリングレートのデバイスを同時に2台接続しても安定した動作が行える設計となっており、熱心なゲーマーやゲーミングデバイス愛好家もターゲットにしているよう。
Lightning Gaming Portsについて
一体どういった仕組みなのか簡単に解説すると:
最近流行りの高ポーリングレートのマウスやキーボードはPCに掛かる負荷が大きく、要求スペックを満たした環境でなければ意図せぬ遅延やジッターが発生します。よくCPUへの過負荷が取り沙汰されていますが、実際にはUSBコントローラが処理しきれないことも原因の一つとなっています。
多くの場合、USBポートに接続したデバイスから送られる信号は同一のUSBコントローラで処理されます。ここに高ポーリングレートのデバイス2台分の信号を送ると、混雑してしまい、USBコントローラが処理の限界を迎えます。その結果、ジッターが大きくなったり遅延が発生したりします。
一方で、Lightning Gaming Portsの2ポートは別々のインターフェースから供給されており、それぞれ異なるUSBコントローラが割り振られています。これにより、4000Hzや8000Hzのような高いポーリングレートのデバイスを2台同時に接続しても信号が混雑することなく、ジッターや遅延が発生せず、安定して動作するという仕組みだそうです。
Lightning Gaming Portsを検証
仕組みについて解説したところで、実際に検証してみます。ASRock Z790 LiveMixerに2ポート搭載されているLightning Gaming Portsは、4000Hzや8000Hzの高速デバイスを接続したときジッターが発生せず安定して動作するのか、またどれほどの違いが出るのかをチェックします。
テスト構成:
- CPU:Core i9-13900K
- マザーボード:ASRock Z790 LiveMixer
- GPU:NVIDIA GeForce RTX 3080
- RAM:Crucial DDR5 32GB *2
- OS:Windows 10 Pro
- ソフトウェア:MouseTester v1.5.3
テスト手順:
- MouseTesterでLog Start(F2)を押して測定を開始
- マウスを振り回しながらキーボードをガチャガチャ押した後、Log Stop(F2)を押して測定を終了
- 「Interval vs Time」のグラフから、接続デバイスが設定ポーリングレートの理論値で動作しているか読み取り、USBコントローラの安定性を評価する
どのように判断するか:
- USBコントローラが正常に信号を処理できている場合、グラフの全ての点がマウスのポーリングレートに非常に近くなる(1000Hzの場合は1ms、4000Hzなら0.25ms、8000Hzなら0.125ms)
- USBコントローラに負荷が掛かって信号を処理しきれない場合、グラフの点が上下する = ジッター(間隔のバラつき)が大きくなっている状態
- 単純にグラフの線から点が離れている状態は好ましくないという判断でOK。ただしマウスを無線接続している場合、多少のジッターは避けられないので考慮すべき。
Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) + Corsair K65 Pro Mini RGB 65% (有線8,000Hz) + Lightning Gaming Ports
まずはLightning Gaming Portsに Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) と Corsair K65 Pro Mini RGB 65% (有線8,000Hz) の2台を接続した状態で検証しました。
遅延やジッターは発生しておらず、ポーリングレート4,000Hz設定の理論値である0.25msに限りなく近い間隔で安定動作しています。
Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) + Corsair K65 Pro Mini RGB 65% (有線8,000Hz) + 通常のUSBポート
次に通常のUSBポート。Lightning Gaming Ports接続時と比較するため、普段接続しているオーディオインターフェースをはじめとするUSBデバイスは全て抜いた状態で検証しています。
やはり高速デバイスを複数繋ぐと、若干のジッターが発生するようです。マウスとキーボードの操作がより激しくなると、さらにジッターが大きくなることが予想されます。
Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) + Corsair K65 Pro Mini RGB 65% (有線8,000Hz) + 通常のUSBポート (HDMIキャプチャーボードなどを接続したまま)
通常のUSBポートに高速デバイスを2台接続したうえで、普段使用しているHDMIキャプチャーボード(カメラ)やオーディオインターフェースなどのUSBデバイスを全て接続したまま検証しました。大半の方の環境はこれに近いと思います。
ジッターは目に見えて大きくなっており、線を大きく逸脱した点も目立ってきました。
もっと引きにするとこんな感じ。一定間隔で荒ぶっています。USBコントローラの処理がパンクしているのでしょうか。
Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) + Wooting 60 HE (有線1,000Hz) + Lightning Gaming Ports (HDMIキャプチャーボードなどを接続したまま)
マウスのみポーリングレート4,000Hzで、キーボードは一般的な1,000Hzのパターン。ポーリングレート4,000Hzの理論値である0.25msに限りなく近い間隔で安定動作しています。
(2023/11/20 19:24追記) 普段使用しているHDMIキャプチャーボード(カメラ)やオーディオインターフェースなどのUSBデバイスを全て接続したままPlotしています。
Razer Viper V2 Pro (無線4,000Hz) + Wooting 60 HE (有線1,000Hz) + 通常のUSBポート
続けて、マウスのみポーリングレート4,000Hzで、キーボードは一般的な1,000Hzのパターン。
こちらは普段接続しているオーディオインターフェースをはじめとするUSBデバイスは全て抜いた状態で検証していますが、高速デバイス1台でも通常のUSBポートでは若干のジッターが発生しました。これは意外な結果でした。
検証結果
結論、Lightning Gaming Portsに接続した高速デバイスは、ポーリングレートの理論値に限りなく近い間隔で安定して動作し、遅延やジッターがほぼ発生しないことが分かりました。
検証ではいずれもポーリングレート4,000Hz設定の理論値である0.25msで安定動作しています。これは検証機であるRazer Viper V2 Proの性能を最大限に引き出せている状態だと言えます。
通常のUSBポートでは、普段使用しているデバイスを全て抜いた状態でも0.2ms前後のジッターが発生しました。さらに驚かされたのは、通常のUSBポートにオーディオインターフェースやHDMIキャプチャーボードと同時に高速デバイスを接続したときのジッターの大きさです。本来は0.25ms毎に更新されるはずのポーリングレート4000Hz設定の強みが完全に失われてしまっています。
動作テスト
高ポーリングレートのマウスやキーボードの使用者からは、その機種を問わず、一瞬カクついたりプチフリーズする現象がたびたび報告されています。筆者自身も以前のPC環境ではごく稀に同様の現象が起こっていました。
新環境では、ポーリングレートを4,000Hzに設定してVALORANTを約12時間ほどプレイした限りではカクつきやプチフリーズは一度も起こっていません。改善された理由として、CPUの性能が大幅に向上したことと、上記で示したUSBコントローラの処理に余裕を持たせていることの2つが考えられます。
約12時間にわたる公開テストの様子はTwitchアーカイブで視聴できます。
所感
冒頭でもお伝えしたように、ASRock Z790 LiveMixerは背面に14ポート、内部ヘッダに9ポートの合計23ものUSBポートを搭載しています。この点だけでクリエイターの方に強くお勧めできます。
PCを新調して間もないですが、動画制作や配信活動をやっていく上でこの大量のUSBポートにかなり助けられています。ポート残数を気にすることなく、カメラやオーディオインターフェース、Stream DeckのようなUSBデバイスをガンガン接続できます。USBハブにこういった機材を繋ぐと、給電不足や認識不良が起こったり、何かとトラブルが尽きないんですよね。
マザーボード自体は特長的なデザインをしていて、パーツ同士の統一感を出すような構成は難しいです。強化ガラスのサイドパネルで中身が見えるようなケースより、がっしりとしたケースに収めてあげるのが良いのかなと思い、Fractal Design Define 7 Solidを選択しました。ホワイトやブラックもあれば、パーツ構成の幅が広がって人気に火が付きそうだと感じました。
- TwitchやYouTubeで配信しているときも普段と変わらないFPSでゲームするため。
- 最近増えてきた4000Hzや8000Hzなど高いポーリングレートのマウスやキーボードを安定動作させ、PC本体が起因して発生するジッターや遅延を最小限に抑えるため。
という当初の目的を達成できたうえ、大量のUSBポートによって生産性も向上して大満足です。
まとめ
今回はマウスレビュアーの視点でASRock Z790 LiveMixerをレビューしてみました。Lightning Gaming Portsは謳い文句通り、意図しない遅延やジッターを発生させることなく高ポーリングレートのマウスやキーボードを安定して動作させることができました。
今回の検証で扱った遅延やジッターはms(ミリセカンド)単位で、人間が体感できないような僅かな差ではあるものの、高ポーリングレートのマウスやキーボードの入力が適切なタイミングで反映されることには体感ベースで語れないほどの価値があるように感じます。
本気でFPSゲームを上達したいと考えていて、ハードウェア側の性能を妥協したくない方、4,000Hzや8,000Hzの高ポーリングレートマウスやキーボードの性能を最大限に引き出したい方にお勧めできるマザーボードです。
また、高ポーリングレートのマウスの動作が不安定になるという問題はたびたび報告されており、その機種を問わず「高ポーリングレートに設定するとカクついたりプチフリーズが起こる」という症状に悩まされている人は少なくありません。
その原因についてはCPUの性能が深く関係していると取り沙汰されることが多いですが、今回の検証によって、そういった症状はUSBコントローラの安定性が原因になっているケースもあり、その場合はASRock Z790 LiveMixerのようなマザーボードへの換装が解決の手段の一つになるのではないかと思いました。
他のLightning Gaming Ports搭載マザーボードも
今回紹介したLiveMixerはASRockのクリエイター向けシリーズとなっていますが、ゲーミングブランド「Phantom Gaming」のラインナップでコスパに優れたモデルもあるので、マザーボード選びの際には「Lightning Gaming Ports」搭載の有無についてもチェックしてみると良いかもしれません。
Lightning Gaming Ports搭載マザーボードの一例:
以上、ASRockのマザーボード ASRock Z790 LiveMixer のレビューでした。