「Endgame Gear XM1r」レビュー。現状最も優れたゲーミングマウスの一つ
本稿では、Endgame Gearのゲーミングマウス「Endgame Gear XM1r」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: 株式会社アーキサイト
ファーストインプレッション
旧モデルであるXM1、XM1 Frex Cord cable Ver.が終売となり、今回新たに発売となったXM1r。センサーやマイクロスイッチなどの刷新に加え、細かな懸念点にまで目が向けられた、現状最も優れた有線ゲーミングマウスの一つです。ページ下部には旧モデルとの比較表も用意したので参考に。
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製品仕様とスペック
カラー | Black / White / Dark Reflex / Dark Frost | 表面処理 | マット / グロス |
---|---|---|---|
形状 | 左右対称 | サイズ | 約 122.14 × 65.81 × 38.26mm |
本体重量 | 70g | ボタン数 | 5つ |
センサー | PixArt PAW3370 | 解像度 | 19,000DPI |
最大加速度 | 50G | 最大速度 | 400IPS |
レポートレート | 1000Hz | LoD | 実測値1.0mm |
接続方式 | USB2.0有線 | ケーブル | パラコードケーブル |
スイッチ | Kailh GM 8.0スイッチ | サイドボタン | TTCマイクロスイッチ |
エンコーダー | ALPS(日本製) | プロセッサ | STM32 Arm® Cortex® MCU |
ライティング | 非対応 | ソフトウェア | 対応 |
メーカー保証 | 購入日より1年間 |
パッケージと内容物
内容物は XM1rマウス本体、予備マウスソール(大型)、取扱説明書。
パフォーマンス
ビルドクオリティ
XM1rのビルドクオリティは良好です。シェルの剛性は申し分なく、強く握っても軋むことはありません。また、ホイールの軋みやカタつきは見られません。通常使用における不安要素は皆無です。
ホイールに縦方向の僅かな遊びがあり、本体を振ると小さな音が鳴りますが、マウスを操作するうえでホイールを上に引っ張り上げるような動作は必要ありませんし、操作感には一切影響を及ぼさないため、問題無いと言っていいでしょう。
形状と大きさ
やや小ぶりな中サイズの左右対称ゲーミングマウス。寸法は122.14 × 65.81 × 38.26mm。
言わずもがな旧モデル「XM1」と全く同じシェイプ。SteelSeriesの「Sensei」「Kinzu」の開発に携わったCSプロJohnny R.が協力したマウスだけあって、それらに近しい要素が含まれています。
全体的に平べったくはありつつも、本体後部が膨らんだデザイン。表側から見ると本体幅が広いように見えて、裏を向けると意外にもスリム。両サイドの窪みが深く、強烈な逆ハの字となっているため、指を立ててグリップしたときに持ち上げ動作が容易で、つかみ持ちやつまみ持ちに適した形状となっています。
全長に関しては、つかみ持ちやつまみ持ちには長すぎず短すぎないように感じますが、かぶせ持ちでグリップするには短いといったところ。こういった中型マウスを好むユーザーは多く、万人向けであると言っていいでしょう。
本体重量
本体重量は公称値70g(ケーブルを除く)で、実測値は71gほど。
このサイズ感でソリッドシェルのまま70gまで軽量化し、一定水準以上のビルドクオリティを保っているのはかなり好印象です。
グリップ性能
XM1rは4色展開で、今回の検証機であるBlackはマットモデル。表面にはマットコーティングが施されており、かなり強めのグリップ性能が得られます。その代わり、触った部分に跡がつきやすく、ベタつきやテカりに弱いという特性があります。
前モデルからの変更点はありません。個人的にはグリップテープを貼り付けなくても十分です。
持ち方の相性
代表的な3種類の持ち方 かぶせ持ち・つかみ持ち・つまみ持ち との相性をチェックします。
筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があります。
かぶせ持ち
かぶせ持ちとはそこまで相性がよくありません。親指側は意外にも馴染みやすいですが、薬指と小指を配置するスペースがやや狭く、全長も少し足りない印象です。筆者の手の大きさでは窮屈ですが、手が小さめの方なら持てなくはなさそうです。
つかみ持ち
つかみ持ちは非常に相性が良いです。本体後部のシェイプが秀逸で、手のひらのどの部分を接地しても違和感が出ず、持ち方や角度を強制されづらいのが利点です。
両サイドは逆ハの字になっており、持ち上げ動作が容易です。
つまみ持ち
つまみ持ちも相性が良いです。両サイドが大きくくり抜かれた形状となっているため、親指や薬指、小指を引っ掛けるように配置できます。サイドが水平なマウスと比べ、指先との接地面積が広めに確保されるので、指の関節を使った細かな動きもマウスに伝わりやすいです。
本体重量は70gと軽量なので、手首支点での動作も軽々と行えます。
スイッチ
メインボタン
海外で高評価を得ているKailh GM 8.0スイッチを採用しています。固すぎず柔らかすぎない、ちょうど良い押し心地。既存のスイッチよりも、押し下げ圧と跳ね返り感、粒の大きさのバランスに優れている印象で、クリック感は極めて良好です。連打もタップ撃ちも容易にこなせます。
スイッチ変わって感触良くなったのはもちろんやけど、これだけ手前寄りでも押し心地変わらんのはすごく良い改善点だと思う pic.twitter.com/2oMAudh0X1
— ミオニ (@MIONIGG) April 16, 2021
また旧モデルからの改善点として、クリック位置による押し心地の変化が極めて少なく、均一化が図られていることが挙げられます。ホイールよりも手前側でも押し心地が変わらないので、かなり浅めにグリップしても違和感なく、快適に使用できます。
サイドボタン
サイドボタンにはTTCマイクロスイッチを採用。押し心地に関しては初期XM1が最も軽く、次期XM1 (Flex Code cable Ver)とXM1rはそれと比べると若干固くはなりつつも、全然軽いといったところ。
ボタン配置は適切で、つかみ持ちでは両方に指が届きやすいです。ただし手前側のボタンが独特な形状をしており、親指の配置によっては誤爆しやすいです。本体を斜めに向けてグリップするチルトグリップでは注意する必要有り。
ホイール
ホイールに関して、エンコーダーはALPS製、ホイールクリックボタンはKailhタクタイルスイッチが採用されています。他社製マウスとは異なり、詳細なスペックまで明かされているのは好印象です。
到着直後からホイールの軋みやカタつきは見られず、約50時間ほど使用した段階では、ホイールを激しく回しても異音が鳴ることもありません。
一定間隔で切り込みが入ったゴムリングは、十分なグリップ感が得られます。粒が大きくて強めのノッチ感があるので、スクロールするごとにしっかりとした感触が指に伝わり、分離感も得られます。操作感は良好です。
ホイールクリックは旧XM1よりも柔らかくなり、非常に押しやすくなっています。
センサー
XM1rのセンサーは「PixArt PAW3370」。有線無線問わず使用例が増えてきた、新しいPixArtのハイエンドセンサーです。主なスペックは 最大19,000DPI、最大加速度50G、最大速度400IPS。初期DPIは 400, 800, 1600, 3200の4段階で、底面のスイッチを短く押すと切り替えられます。
センサーの配置はごく一般的で、マウス本体のほぼ中央あたり。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサー性能を検証。DPIは400 / 800 / 1600 / 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts (1000Hz)
MouseTester: xSum (1000Hz)
xCounts, xSumともに綺麗な波形を示しています。インゲームでのセンサー挙動も良好です。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
XM1rはソフトウェアからLoDを1mm/2mmに調整可能です。「PureTrak Talent」上で計測した結果、XM1rのリフトオフディスタンスは1mm設定時に実測値1.0mmでした。公称値通りの数値が出ています。
マウスソール
PTFE素材のマウスソールが四隅に4枚貼り付けられています。十分に滑りやすいものですが、角が尖っているので表面が粗かったりスポンジが柔らかいマウスパッドと組み合わせると引っ掛かりが発生します。気になる方は貼り換えることを推奨します。
上下2枚の大型ソールが予備として1セット付属しています。ソール面積が狭いほど滑りが速く、ソールの沈み込みによる止め性能も得られやすい反面、摩擦が変動しやすく滑りが一定でなくなるのが難点です。逆に面積が広いと摩擦が変動しづらく滑りが安定します。好みに合わせて選択しましょう。
旧XM1からの改善点として、新たにセンサー周りにソールが追加されています。センサーと読み取り表面との距離を一定に保つ役割を果たし、トラッキング精度やカーソルの移動量が安定します。
ケーブル
ケーブルは操作性を大きく損なうことなく耐久性が向上しています。以前よりも僅かに固くなったものの、その他大勢のパラコードケーブルのように芯が残っておらず、取り回しづらさは感じません。 (旧XM1 > CM > 新XM1 > HyperX)
ブッシングは底面から数ミリ浮いた部分に取り付けられており、ケーブルとマウスパッドが干渉しづらいです。マウスバンジーで適切に浮かせることで、かなり快適に使用することができます。
ソフトウェア
XM1rは専用ソフトウェアを提供予定とのことですが、現時点では公開されていません。
本体から行えるのはDPI変更(400, 800, 1600, 3200dpi)、ポーリングレート切り替え。それ以外の設定に関してはソフトウェア提供後に可能となります。
旧モデルとの比較
初期XM1、XM1(Flex Cord cable Ver.)との違いを以下にまとめたので、既に旧モデルを所持している場合は参考にしてみてください。メーカーが明記している点だけでなく、筆者の肌感覚による違いも含みます。
※旧モデルはいずれも販売終了
名称 | XM1r | XM1 (Flex Cord cable Ver.) | XM1 (初期) |
---|---|---|---|
形状・大きさ | 同じ | ||
本体重量 | 70g | ||
コーティング | 同じ | ||
センサー | PixArt PAW3370 | PixArt PAW3389 | |
センサースペック | 19,000DPI / 50G / 400IPS | 16,000DPI / 40G / 400IPS | |
LoD | 2段階 (1mm/2mm) | – | |
マウスソール | PTFE / 厚さ0.8mm 大小2種類で選択可能 |
PTFE / 厚さ0.8mm | PTFE / 厚さ0.6mm |
スイッチ | Kailh GM 8.0 (80M) より優れたクリック感に |
OMRON D2FC-F-K (50M) | |
ホイールクリック | Kailhタクタイルスイッチ より柔らかい押し心地に |
やや固くて跳ね返り感が弱い | |
ケーブル | パラコードケーブル ある程度柔軟で耐久性も考慮 |
パラコードケーブル 標準ケーブルとしては最も柔軟 |
ビニール製ケーブル |
その他 | センサー周りにO型ソールを追加 クリック箇所によるムラが無くなった |
– |
初期XM1からXM1 (Flex Cord cable Ver)では、ケーブルやソールなど大枠の部分を中心とした改善が行われましたが、XM1rはセンサーやスイッチなどの内部仕様が刷新されたうえで、より細かな懸念点にまでフォーカスされているといった印象を受けます。
個人的にはクリック感の改善が大きいです。Kailh GM 8.0スイッチの押し心地が優れているのはもちろんですが、クリック箇所による押し心地のムラが取り除かれているのは良い変更点で、既に旧XM1を使用しているユーザーもXM1rへアップグレードする価値は大いにあると感じます。
結論とターゲット
「Endgame Gear XM1r」について詳しく見てきました。旧モデルの時点でかなり完成度が高かった印象ですが、さらにスペックが向上したうえで細かな懸念点まで修正されており、現在の基準ではこれといった難が見られないゲーミングマウスに仕上がっています。
浅めにグリップしても左右クリックを軽く押し込めるように調整されているので、操作性が大きく向上しています。さらにケーブルは操作性を大きく損なうことなく耐久性が向上していたり、センサー周りにO型ソールを追加することでセンサー挙動の安定性を高めたりと、細かな配慮もされています。
唯一の懸念点はマウスソール。大小の2種類が付属していますが、どちらも角が尖っており、マウスパッドとの組み合わせ次第では引っ掛かりが生じます。ただ既にEsports Tiger等からXM1専用の優れたサードパーティー製ソールが出回っているので、このマウスを使用するうえで大きな問題にはなりません。
現状コアゲーマーが求めているものをほぼ全て揃えた、最高水準のゲーミングマウスの一つです。有線接続であることを許容でき、Senseiに近しい要素を含んだ形状が好みであれば、これを選んでおけば間違いないでしょう。
総合評価5.0 out of 5.0 stars
Sensei系統の優れた形状
優れたビルドクオリティ
ソリッドシェルで軽量設計
グリップ性能の高いコーティング
優れたトラッキング性能
1mm/2mmで調整可能なLoD
非常に優れたクリック感
取り回しやすいパラコードケーブル
マウスソールの角が尖っている (貼り換えで容易に改善可能)
以上、Endgame Gearのゲーミングマウス「Endgame Gear XM1r」のレビューでした。