「BenQ ZOWIE S1 / S2」レビュー。縦方向への操作が容易な、グリップ感に長けた左右対称型ゲーミングマウス
本稿では、BenQ ZOWIEのゲーミングマウス「BenQ ZOWIE S1 / S2」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: ベンキュージャパン株式会社
製品仕様と外観
「BenQ ZOWIE Sシリーズ」の最大の特徴は、垂直方向へのマウス操作が多いタイトルに焦点を当てている点だと言えるでしょう。ZOWIEはこれまで『Conter-Strike: Global Offensive』向けのマウスを開発し続けていましたが、S Seriesは近年流行している『フォートナイト』のようなゲームに適した設計となっています。
表面がツルツルとしたグロス加工のDIVINA Edition(水色とピンクの2色展開)が先に発売されていましたが、今回のレビュー機は新たに国内発売されたマットブラックとなります。過去のZOWIE製マウスに採用されていたマット表面よりもグリップ感のある、滑り止めの効いた表面素材です。
計5ボタンを備える左右対称型ゲーミングマウス。サイズはそれぞれ、S1が幅66 全長126 高さ39mmで、S2が幅64 全長122 高さ38mmです。
ZOWIE製ゲーミングマウスはユーザーの手に合ったものを選択できるよう複数のサイズが用意されていますが、Sシリーズは他のシリーズよりも一回り小さめのラインナップ(中、小サイズ)です。前述の『フォートナイト』などのマウス移動が激しいゲームでは小型マウスが好まれる傾向にあります。
FKシリーズよりも全体的に背が高く、ZA Seriesのように後部が広がっているがコブは少し小さめという、ざっくりと言えば2シリーズの間を取ったような形状です。両サイドは前述の2シリーズよりもくびれており、より握り込みやすい形状になっていると言えます。
本体重量はそれぞれ、S1が公称値87g(ケーブルを除く)、S2が公称値82gで、ケーブルを浮かせた状態での実測値が88.3g、83.7gでした。サイズ間での重量差は5gです。
垂直方向へのマウス移動を考えて設計されているので、軽すぎず重すぎない重量設定となっていますね。
Sシリーズは従来のZOWIE製左右対称マウスとは異なり、サイドボタンが左側のみに搭載された右手専用マウスです。
右側のサイドボタンが排除されたのは、握り込んだときに薬指と小指が干渉するのを防ぐためだと思われます。
センサーにはPixArt PMW3360を搭載しており、底面のDPI変更スイッチから400/800/1600/3200の3段階に切り替えられます。
ポーリングレートは125/500/1000Hzの3段階に対応しています。マウスの設定にソフトウェアは不要で、本体のみで完結します。
スペック
BenQ ZOWIE S Series 製品仕様 | |
形状 | 左右対称 |
表面素材 | マット |
サイズ | S1 幅66 全長126 高さ39mm / S2 幅64 全長122 高さ38mm |
重量 | S1 87g / S2 82g (ケーブル除く) |
ボタン数 | 5つ |
センサー | PixArt PMW3360 |
DPI | 400/800/1600/3200 |
ポーリングレート | 125/500/1000Hz |
LoD | 1.3mm~ (実測値) |
スイッチ | – |
ケーブル | ビニール製 (1.8m) |
ソフトウェア | インストール不要 |
パフォーマンス
持ち方の相性・操作感
Sシリーズは真ん中よりやや後ろが最も背が高く、お尻の傾斜はかなり急。真ん中からメインスイッチ部先端にかけて緩やかに降りていきます。
サイドに注目すると、つかみ持ちやつまみ持ちで親指・薬指・小指の配置ポイントとなる真ん中あたりがくびれています。さらに、本体後部の幅が広がっており、かぶせ持ち時に親指の付け根あたりがフィットします。左右対称型ながら、あらゆる持ち方を想定された形状となっています。
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
全体的にそこまで背が高くはないものの傾斜の作り方が上手く、かぶせ持ちでの違和感は無し。右側のサイドスイッチを取っ払ったことで、薬指と小指の細かな位置を気にせず、自然なフォームのまま握り込めます。
本体後部のコブが手のひらに密着し、隙間が一切生まれません。両サイドと手のひらの3点グリップが機能し、縦方向へのマウスの動きが安定すると感じます。
ただし、筆者の手の大きさだと、小サイズのS2ではメインスイッチから人差し指と中指の先端が少しだけはみ出します。これはこれで操作しづらくはないものの、若干の窮屈さを感じます。手の大きさが18.5cm以上でかぶせ持ちの場合、中サイズのS1を選択した方が上記の恩恵を受けやすいと感じます。
つかみ持ちも同様に、両サイド+後部の3点グリップが成立し、安定した操作が行えます。サイドのくびれている位置に3本指を配置すると、手のひらが本体後部の形状に自然とフィットします。とても相性問題が発生するとは考えづらいです。
つかみ持ちに関しては、手のサイズが相当大きい方でない限り、S2がマッチするのではないかと思います。筆者の手の大きさでもまだまだ余裕がありますし、寸法や重量から考えてもS2の方が小回りが利きやすいと感じます。
つまみ持ちも難なくこなせます。両サイドのくびれに3本指を配置すれば、他の指がちょうどいい位置関係となります。本体幅が広すぎないので指に力が伝わりやすく、しっかりとマウスを固定できます。こちらも手の大きさを問わず、小サイズのS2が適していると感じました。
ちなみに、両サイドの2点でマウスを支えるつまみ持ちは、縦方向への操作が安定しづらいという特性があります。つまみ持ちでのFPSのリコイルコントロール時には指の関節を使う方が多いと思いますが、そういったシーンではSシリーズのコンセプトである”垂直方向への操作のしやすさ”は感じづらかったです。ただしこれはSシリーズに限らず、どのマウスを使用していても同じことが言えます。
結論として、手の大きさや持ち方によるサイズの選択を誤らなければ、ユーザー側で持ち方を選べるマウスであると言えるでしょう。一見すると決して攻めた形状ではないものの、かなり作り込まれています。筆者の手の大きさであれば、かぶせ持ちであればS1、つかみ持ちとつまみ持ちならばS2が丁度良かったです。
ボタン配置・クリック感
まずはメインスイッチから。従来のZOWIE製マウスよりも軽めのクリック感で、ストロークも少し短くなっています。跳ね返りの強さも問題無いですが、指の力を十分に抜き切らないとスイッチが戻ってきません。FPSにおける数発ごとのタップ撃ちのようなシーンに長けているという印象を受けました。
セパレートタイプではないですが、浅めにスイッチを押下してもほぼ一定で、持ち方によるクリック感の変化は無さそうです。
サイドボタンは手前寄りに配置されており、どのような持ち方でも親指が奥側のボタンに届きます。
押し心地はタイトめ。ストロークが短く、誤爆しない程度の固さがあります。奥側の方が若干固いです。
ホイールは確かなノッチ感がありながら、かなり柔らかいです。誤爆しづらいよう1ストロークが長めに調整されています。
これについては賛否両論あるようですね。確かに、ホイールを回す距離が長くなってしまうのでブラウジング等の用途には不向きではあります。しかし、正確に意図した回数を素早く回せるので、ゲーム操作では非常に優れたホイールだと思います。
ホイールクリックはやや固めですが、少数の連打であれば容易におこなえる程度。
センサー挙動・リフトオフディスタンス
Sシリーズの搭載センサーはPixArt PMW3360です。ZOWIEはセンサーの安定性を重要視する傾向にあるので、一定の信頼感があります。
例のごとく、Mouse Testerでセンサーの正確性を検証。DPIはそれぞれ400, 800, 1600, 3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
- MouseTesterの見方について
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基本的には、波形に点が綺麗に沿っていれば、マウスのセンサーが正確なトラッキングを行えている、という認識で構いません。マウスを動かす速度が速いほど、波形が縦方向に長く生成されます。つまり、波形の折り返し地点は、マウスが最高速度に達したことを表します。
- 横軸 Time(ms):経過時間を表す、1000分の1秒
- 縦軸 xCounts:マウスの左右への移動量。右に動かすと波形が上方向に、左に動かすと波形が下方向に生成される。マウスを動かす速度が速くなるほど、縦方向に大きな波形が生成される。
例えば、「中間地点の波形に点が綺麗に沿っているが、折り返し地点でブレが生じている」という場合、基本的には正確にトラッキングできているが、マウスを動かす速度が速いと反応がブレる、といった見方となります。 しかし、折り返し地点のブレが毎回同じような傾向だった場合、「マウスを早く動かすとカーソルが毎回その動きをする」ということですので、カーソルの動きは安定しているということになります。そのような場合、マウスを早く動かすとカーソルの動きに癖が出るものの正常、といった認識で構いません。
どのDPI時にも目立ったカウント飛びはなく、センサー挙動は正確であると言えます。
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。こちらも使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
マウスパッド「PureTrak Tallent」上で計測した結果、リフトオフディスタンスは1.3mm前後でした。従来のZOWIE製マウスと殆ど変わらないことから、ZOWIEユーザーのために調整を合わせたとも思えます。ちなみに標準ソールは底面からほとんど突起していないので、ソール交換によって数値を縮めやすいと思います。
マウスソール
マウスソールは上下2枚に加え、センサー周りにO型が1枚。端は丸められており、引っ掛かりはありません。滑りやすく止めもそれなりに利く、バランスの取れたソールです。4点ソールと比較するとパッドとの接地面が広く、操作が安定しやすいです。
交換用ソールが1セット付属しています。
ケーブル
本体形状のほか、ケーブルの根本が上向きになっていることもSシリーズが縦方向へ動かしやすい要素の一つです。マウスバンジーを用いてケーブルを浮かせておくことは最低条件とはなりますが、水平方向と垂直方向での操作感の違いがほぼ発生せず、軽快なマウス操作が可能です。
ケーブルが真っすぐ備え付けられていると、マウスパッドとの接触やケーブルのたわみによる抵抗を感じやすいです。あらかじめケーブルを斜め上に向けておくことで、マウスを奥側に動かした際、それらの抵抗を最小限に抑えられます。
ケーブルはビニール製で、それなりに柔軟さがあります。太さは実測値3.5mmで、大抵のマウスバンジーに適合します。
結論とターゲット
Sシリーズは一見してシンプルながら、どの持ち方でも干渉しづらい左右対称型ゲーミングマウスでした。手の大きさと持ち方によるサイズの選択を誤らなければ、相性問題に悩むことはほとんど無いのではないでしょうか。
形状の特性上、両サイドと手のひらの3点でマウスを固定した場合、グリップ感が増して安定した操作が行えます。本製品のコンセプトである”縦方向への操作しやすさ”は、かぶせ持ち・つかみ持ちユーザーならば特に実感しやすいのではないかと思います。
上記のコンセプトを抜きにしても、FKシリーズにもう少し高さが欲しい方、あるいはZAシリーズよりもフラットな形状を求めている方にオススメです。また「S DIVINAを既に試してみたが、やはり従来のマットブラックが好み」という方も是非チェックを。
以上、BenQ ZOWIEのゲーミングマウス「BenQ ZOWIE S1 / S2」のレビューでした。