「SteelSeries Aerox 3」レビュー。つかみ持ちとつまみ持ちに適した57gの超軽量ゲーミングマウス
本稿では、SteelSeries(スティールシリーズ)のゲーミングマウス「SteelSeries Aerox 3」のレビューをお届けします。
レビューサンプル提供: SteelSeries Japan
製品仕様と外観
大手メーカーSteelSeriesより登場した、ハニカムシェル採用の軽量ゲーミングマウス「Aerox 3」シリーズ。以前のワイヤレスモデル「SteelSeries Aerox 3 Wireless」のレビューに引き続き、本稿では有線モデルの「Aerox 3」を詳しくチェックしていきます。
ワイヤードマウスとしてはハイエンドモデルと並ぶ約9,000円という価格帯ながら、ワイヤレスモデルと比べるとスペックがやや低いため、使用感について精査しながら進めていければと思います。
Aerox 3は、6ボタンを搭載する左右対称ゲーミングマウス。
本体カラーはブラック1色。表面はマット仕上げのプラスチックで、触っても跡がつきづらい、ザラつきのある乾いた材質です。ベタつきづらい反面、手汗をかくと防滑性が失われます。
トップシェル、両メインボタンは派手に肉抜きされていますが、「AquaBarrier保護」によりIP54等級が認められています。「水の飛沫による影響を受けず、粉塵が内部に侵入することを防止し、若干の侵入があっても正常に動作する」とのことで、直接水で洗うなどは不可能です。
形状を4方向からチェック。同社の「Rival 3」と全く同じ、つかみ持ちやつまみ持ちに適した形状かつ、ハニカムシェルを採用することで大幅な軽量化を実現したモデルとなります。
寸法は67.03 x 120.55 x 37.98mmで中型~小型に分類されます。やや小さめのサイズ感です。
本体重量は公称値57g(ケーブルを除く)、実測値g。同形状の「Rival 3」よりも約20g軽いです。
PixArtと共同開発のSteelSeries TrueMove Coreセンサーを搭載しています。これはRival 3にも搭載されているエントリー向けのマウスセンサーで、主なスペックは200~8,500DPI (100刻み)、最大加速35G、最大速度300IPS (SteelSeries QcK表面で測定)。
初期DPIは400/800/1200/2400/3200の5段階で、ホイール下部のスイッチから切り替えられます。
着脱可能なパラコードケーブルを標準で備えています。マウス側には汎用性の高いUSB Type-Cポートが採用されているので、カスタマイズケーブルも使用可能です。
SteelSeries製デバイスの統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」に対応しており、DPIやポーリングレート調整、ボタン割り当て、加速/減速、アングルスナップ、ライティングなどの設定が可能です。
パフォーマンス
持ち方の相性
Aerox 3はやや小さめのサイズ感で、つかみ持ちやつまみ持ちに適した形状です。一見するとシンプルな左右対称ゲーミングマウスですが、理にかなったシェイプとなっています。
本体後部はお尻から3~4センチほど急な勾配がつけられていますが、幅が狭まるあたりから緩やかになっています。この急な勾配となった部分はつかみ持ちでグリップするときに手のひらが触れるポジションで、ここにしっかりと角度をつけることで安定感が生まれます。
またサイドのシェイプに着目すると、本体後部は幅が広がっており、中央から先端はほぼ水平となっています。深めにグリップするつかみ持ちでは指先が水平なポジションに、浅めにグリップするつまみ持ちでは角度のついた部分に小指を引っ掛けられるなど、左右対称ながら無駄がありません。
―「SteelSeries Aerox 3 Wireless」レビューより引用
これらを踏まえたうえで、一般的な持ち方3種類との相性をチェック。筆者の手の大きさは幅9.5cm 長さ18.5cmで、日本人男性の平均サイズとなります。指の太さや長さ、それぞれの持ち方での細かな癖など、さまざまな要因によって感じ方が異なる可能性があることを前置きしておきます。
※持ち方の相性についても「Aerox 3 Wireless」レビューからの引用となります
かぶせ持ち
かぶせ持ちは相性が悪いです。本体が小さすぎるのも理由の一つですが、薬指と小指を不自然な角度で折り込む必要があり、自然にフィットするポジションを見つけられない可能性が高いです。
つかみ持ち
つかみ持ちは非常に相性が良いです。手のひらと指先でグリップしたとき、本体後部の幅や角度、サイドのシェイプが自然と馴染みます。がっちりとしたフィット感に加え、全長が短くて本体重量も軽いため、手とマウスが一体となった感覚が強く得られます。
Aerox 3の背の高さに着目すると、前述の通りお尻から3~4センチほどは急な勾配となっており、そこから緩やかに盛り上がり、また中央あたりからなだらかに降りていきます。
つかみ持ちでグリップする場合、その急な勾配となった本体後部に”小指の付け根のみ”をあてるか、”手のひらを満遍なく”あてるかといった選択肢が生まれます。これがガイドのような役割を果たし、ベストポジションを探りやすいです。
つまみ持ち
つまみ持ちとも相性が良いです。指先を配置する部分にこれといった癖がありません。また全長が短いので、指の関節を曲げたときに本体後部が干渉しづらく、可動域が広く確保されます。
筆者の場合、サイドの中央あたりに親指を配置し、本体後部から中央にかけて急な角度がついた部分に小指を引っ掛けるように配置すると、指先での細かな制御がききやすいように感じます。
ボタン配置・クリック感
メインスイッチ
8,000万回のクリック耐久性と防塵性を備えたIP54準拠のマイクロスイッチ。固めの押し心地ではあるものの、短いストロークと歯切れの良さから明瞭なフィードバックが得られます。クリック連打が続くようなタイトルは指が疲れますが、単発撃ちやタップ撃ちには適しています。
手前から奥まで押し心地がほぼ一定なセパレートタイプです。穴が空いていない部分であれば同じクリック感のまま扱えます。
サイドボタン
細長くて面積の小さなサイドボタン。ちょうど2つのボタンの切れ目となる中央あたりが本体から最も飛び出しており、そこがちょうど親指を配置するポイントなので、押しやすいです。
ただしストロークはやや長く、しっかりと奥まで押し込む必要があります。誤クリックは発生しませんが、若干の押しづらさを感じる場面もあります。
ホイール
ホイールは軽すぎず重すぎない、ちょうど良い回し心地です。強めのノッチ感もあり、しっかりとした触覚フィードバックが得られます。とても優れた操作感です。
ただし、メインボタンに中央からハの字に角度がついていることが影響して、ホイールが本体からあまり飛び出していません。筆者はそこまで気にならないものの、人によってはアクセスしづらいと感じる可能性があります。
ホイールクリックは固すぎず柔らかすぎず、ちょうど良い押し心地です。ただし、無線版の「Aerox 3 Wireless」では一切感じなかったのですが、跳ね返りが弱いのが気になります。短いスパンで押し込む必要がある場合、ややモタつきます。
センサー
Aerox 3のセンサーはSteelSeries TrueMove Core。主なスペックは最大8,500DPI、最大加速35G、最大速度300IPS (SteelSeries QcK表面で測定)。位置付けとしてはエントリー向け。
初期DPIは400/800/1200/2400/3200の5段階で、ホイール下部のスイッチから切り替えられます。またソフトウェア「SteelSeries Engine 3」から200~8,500DPIを100刻みで調整可能です。
例のごとく、Mouse Tester (xCount, xSumの2種)でセンサーの正確性を検証。DPIは400/800/1600/3200で、ポーリングレートは1000Hz、マウスパッド「PureTrak Talent」上でテストを実施しました。ツールの性質上、環境によって結果が変動する可能性があることを前置きしておきます。
MouseTester: xCounts
MouseTester: xSum
廉価センサーではあるもののxCountsの波形に大きな乱れはなく、実際のゲームプレイでも違和感はありません。センサー挙動は良好です。
リフトオフディスタンス (LoD)
マウスを浮かせてセンサーの反応が途絶えるまでの距離 リフトオフディスタンス も検証。0.1mmのプレートを1枚づつ重ねてマウスを動かすという工程を繰り返し、センサーが反応しなくなる高さを測ります。使用するマウスパッドによって数値が変動する可能性があります。
リフトオフディスタンスが長すぎると、マウスを大きく振ったあと、元の位置に戻すために持ち上げたときにカーソルが余分に動いてしまい、ゲームプレイ中の精密な操作を妨げてしまいます。個人的には1.5mm以下なら〇、1mm前後であれば◎。
「PureTrak Talent」上で計測した結果、Aerox 3のリフトオフディスタンスは2.8mmでした。これは非常に長く、FPSやMOBAなどの精密な操作が求められるゲームジャンルでは操作に悪影響を及ぼす可能性が高いです。
最近では、廉価センサーが搭載されたエントリー向けの機種でもリフトオフディスタンスが短く調整された例がいくつかあります。また、発売後のファームウェアアップデートにより改善された例もあります。このAerox 3も改善を期待したいところですが…。
センサーの位置
Aerox 3のセンサーはやや後部寄りに配置されています。これはSteelSeries製マウスによく見られる傾向です。
一般的なゲーミングマウスは中央付近にセンサーが配置されているので、そういったものから乗り換えたときにマウス感度が低いと感じる可能性が高いです。 ※動きの伝わり方が異なるというだけで、どちらが優れているとは断言できず、好み次第で評価が分かれます。
マウスソール
黒いテフロンソール。やや大きめの円形で、四隅に配置されています。最近では真っ白のPTFEソールが採用される傾向がありますが、それらと比べると純度が低く、やや滑りが劣ります。
エッジが丁寧に処理されているため、マウスパッドとの引っ掛かりは一切ありません。
ケーブル
着脱可能なパラコードケーブル。耐久性が考慮されており、やや芯が残ってはいるものの、従来の編組ケーブルよりも取り回しやすいものです。ちなみに、標準で搭載されているパラコードケーブルの柔軟性に関しては、一部メーカーを除いてほとんど大差無いです。
ケーブルコネクタが本来のブッシュよりも長く、上向きではなく水平なので、ケーブルとマウスパッドが擦れないようマウスバンジーで浮かせてあげる必要があります。
マウス側には汎用性の高いUSB Type-Cポートが採用されているので、ケーブルの交換が容易です。流行りのカスタマイズケーブルを使用することも可能です。
ビルドクオリティ
シェルの軋みやカタつきは見られません。メインボタンのシェルは水平方向への僅かなアソビが確認できますが、クリック感に影響を及ぼすものではありません。
またAerox 3はハニカムシェル採用のゲーミングマウスですが、IP54準拠で防水性・防塵性を考慮した設計なので、通常使用による故障のリスクは限りなく低いと言って良いでしょう。
ライティング
本体底面の5箇所にライティングゾーンが配置されています。通常のライティングに加え、メインボタンとサイドボタンのクリック効果も搭載されています。
Aerox 3はハニカムシェルで内部が見えるので、一般的なゲーミングマウスよりも派手なライティングが楽しめます。底面を中心に光るので、光が直接目に入って眩しいとは感じません。
結論とターゲット
「SteelSeries Aerox 3」について詳しく見てきました。やや小さめのサイズ感を好むつかみ持ち・つまみ持ちユーザーにとって優れた形状、適切なスイッチ調整、極限まで軽量化しつつも耐久性も考慮されたデザイン。全体的に見て完成度が高いです。
ただし、リフトオフディスタンスが実測値2.8mmと非常に長いのが欠点で、9,000円台の有線ゲーミングマウスに求められる性能に到達しているとは言えません。約14,000円で入手できるワイヤレス版「SteelSeries Aerox 3 Wireless」の方が明らかに優れています。
これは廉価センサーを搭載した機種の課題でしたが、直近で他社製のエントリー向けマウスのLoDがファームウェアアップデートにより改善された例もあるので、このAerox 3も今後修正される可能性は0ではないです。ただ現時点では要検討です。
以上、SteelSeries(スティールシリーズ)のゲーミングマウス「SteelSeries Aerox 3」のレビューでした。